物語ではない
エリス視点になります
セーリス男爵領が、壊滅した。
私の記憶が正しければ、これはセト・バルフォットの過去だったはずなのに。
そう思って、私ははっとなる。
ここはゲームの中じゃないと自分で言っておきながら、どうしてもゲームと違うと変だと思ってしまう。
それじゃあ最後に悪役令嬢ヒロインにざまあされるヒロイン悪役みたいじゃない!
私は私にできる範囲で情報をかき集めた。
御呼ばれした子爵家のお茶会とか、必死に通って情報集めに奔走した。
図書館にも行った。
歴史書を読み漁った。
いくつかわかったのは、死徒というやつらの存在が、ゲーム以上に密接であること。
イミラブしかしてなかったから、まさかここまで他国との関係がおてて繋いで状態だとは思ってなかった。
隣国と仲がいいわけじゃないのに繋がりが濃かったり、歴史的にはどっちが正当だとか争っていたり、死徒の支配下にあるところとないところとの激突であるとか。
案外この大陸は疲弊しているようです。
まったくその戦争に関わろうとしなかったのが、このリガルディア王国。
私は思う。
ラノベに出てくるキャラクターをキャラクターととらえるのであれば、私はその役になりきらねばならないと。そんなの無理!
政治のことはよくわからない。
ただ、セトに起きるはずだった不幸はヒロインの一角であるセーリス男爵令嬢たちが被った。
セトの暗い過去はなくなった。
代わりに、ヒロイン側に暗い過去が出来てしまった。
それは良い。同じ男爵なら接触もできるかもしれない。
悪役令嬢モノを読み漁った経験から、是非とも一緒に死んだであろう隣にいたあの年上集団に転生していてほしい。
そう思っていたら、突然、カイゼル伯爵から御呼ばれした。びっくりだ。
♢
精一杯着飾っていけと言われてしまったので着飾ったのだけれど、ふはははは、オレンジなぞ似合わぬわ!
ピンクがよかったよ~!
オレンジはルナの色じゃんかー!
薄いオレンジのひらひらフワフワのドレスと、全力で手作りしたアップリケ(こちらにはまだなかったので頑張って作ったよー。いざって時のためにって男爵家に上がる前に作った)を持って行く。話題作りは子爵令嬢の友達に頼んだ。
カイゼル伯爵家の屋敷について、挨拶も終えて、緊張しっぱなしだった私はそのメンツの中にとんでもないメンツがいることに気付いた。
いいや、おかしいときっちり言うにはちょっと、というような立場だけれども!
何でフォンブラウ家がいるの!?
「まさか公爵家がいらっしゃるとは……」
「弟がコレー様と仲良くさせていただいているので、お礼も兼ねて声掛けたらいらっしゃったんです」
クルミ様からそう説明があった。
てか、クルミって。
日本人じゃね?
そのままお茶会になり、私たちの後ろに控えているやたらイケメンのフォンブラウの従者3人には驚いてしまった。
1人は分かる。黒髪黄赤目、ゼロ。攻略対象だもの。
1人は仮面を着けている青紫の髪の男性。
1人は黒髪、金目。どこかで見覚えのある顔。この人だけはフードを被っていて顔がよく見えないけれど、でも何となく見覚えのある顔だ。たぶん、髪型の所為では。
というか、いやいやいや。
金目の人!
パーカー着てるじゃん!
黒だけど!
何でそれで許されてんの!
あ、もしかして臨時参加、それともそもそも、雇われてない人?
うん、考えるのやめよう。
子爵の友達が上手く趣味についての話をしてくれて、皆に話が回っていった。
「エリス様は一体何がお得意ですの?」
「はい、私は、裁縫です。ちょっと、作ってみたのですが」
頑張れ私。自己主張が強いと言われたって構わん。
さあ!
私はアップリケをテーブルに乗せた。
「これは?」
「アップリケというものです」
「……」
はっきりと。
目が合った。青紫の髪のフォンブラウの従者と目が合った。
クルミ様があら、と声を上げた。
「あなたも転生者?」
「!」
やっぱり、クルミ様も転生者なんだ!
はい、と私は答えたけれど、私自身のテンションは上がってるのに、声はかぼそかった。
「あらあらまあまあ」
周りの令嬢たちが顔を見合わせる。セーリス男爵令嬢たちが私のところへやってきた。
「あの、お茶会が終わったら、少しお話をいたしませんか?」
「私たちも転生者なんですの」
「転生者天国」
「アウちょっと黙っとれ」
お茶会ではそのまま従者3人は後ろに立っていたけれど途中でしびれを切らしたコレー様(フォンブラウの末のお嬢様)が青紫の髪の従者と金目の従者を私たちに近付けた。
ちなみに、金目君の方は堂々としているけれど、首に綺麗な首輪がはまっていて、奴隷であることを私たちは全員察した。
それでも踏み込んでこその上がりの男爵令嬢。
そんな高価そうな首輪つけてたら誰だってつつく!
「あれ……美しい首輪ですね」
金目の人と目が合った。すぐに彼は青紫の髪の従者の後ろに隠れた。あなたのほうが背が高いですがね。
「彼は半精霊なので、フォンブラウで保護していただいたのです。セーリス男爵領の住人でした」
セーリス男爵令嬢の赤い方――ソル様から説明があった。
半精霊という言葉は初めて聞いた。
でも、セーリス男爵領の人だったのか。
――ねえ、金属の首輪つけてる人って、奴隷なんだよね?
半精霊と何か関係あるのかな?
「……半精霊ってナンデスカ」
「道理で青いと思ったわ」
友達に背中バンバン叩かれた。
「そうね、あなたは貴族学校に来てないもの、知らなくて当然ですわ」
「教えて差し上げますわ!」
何やらいい顔したい他の令嬢たちによって私の辞書に半精霊という言葉が刻まれた。
戦争に使われるらしい。
その為に奴隷扱いなのだそうだ。
本来は、神子と同等、それ以上の大規模魔法を起こすことで知られているが、一般平民じゃ知らんわな、そりゃ。
エリス自身の記憶にもなかった。
「つまり、他のところに取られるのを防ぐためにそれを付けていると」
「はい。それに、彼の主はロキ様ですから」
「ロキ様が……」
男装令嬢ロキ様。
はい。巷でも有名ですよ。
そして彼女が作ったらしい、イミドラの着物。あれは女袴だった。でもちょっと、作りが甘かったの知ってるわよ。
私弓道部だったもんね。
「ああそう言えば、ロキ様が工房を持ったって本当ですか、コレー様」
「はい。ロキ兄様はお暇なときはいつも合成か錬金をやっておられますので」
近く、サファイアの日の午前にあっているフリーマーケットで品物を並べてみるそうだ。行ってみよう、フリーマーケットならそんなに高くないだろうし、知った道だ。
その日のお茶会の後、私はたくさんの同志を得ることになった。
コレーの兄様発言をサラッと流したのは、エリスは気付いてません( ´∀` )
他の皆は知ってて総スルーです




