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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
幼少期編
20/154

知と無知

続編って、卑怯だと思うのです。

ソルとクルミがやって来た時、伴われていたのはルナだった。

今までルナを連れてきたことはなかった。

と、いうことは、だ。


「ルナ、お前も転生者か」

「はい。鈴木美代です、涼先輩」

「……美代ちゃんだったのか」

「そちらの金目の方は……金崎先輩ですか?」

「おう。銀河も帝国にいるぜ」


伝えたかった事項というのは、ソル側はこれだけだったようだ。俺たちが伝えたいこと満載なので、結局お茶会となった。


「で、ロキがすり合わせしたいのって何?」

「いろいろと探った結果から言うが、おそらく帝国、というか、イミドラの主人公は、勲が成ってる気がする」

「勲先輩、ですか」


ルナに聞けば、俺、明、久留実、佳代(美代ちゃんの姉)、明羅、煌希(銀河のこと)、そして勲が、俺たちが死んだ当日に死んだようだ。

来ている可能性は低くはない。

が、佳代は?


エリスだろうかと思ったが、この事故での死者自体は俺たちだけではなく、もう2、3人死んだようだ。ということは、出てくる時代がずれてもおかしくない、とのこと。

理由は、おそらくルナに転生した彼女自身が俺たちよりも後から死んだことがあるからだろう。


「エリスについては何かわかったか?」

「転生者なのは間違いなさそうだ」


俺がラーに話を振るとそんな返事が返ってきた。


「マジか」

「ただ、どうにも、活発でな」

「佳代じゃないな」

「ズボンとシャツという姿で、男爵家でも過ごしている。お前の前例があったからだろう」


公爵家の令嬢が男装している、それに憧れたのですとでも言えば男爵くらいならスカート履かずにいられるかもしれないな。


「エリスは学校で会うまで待ちだな。あと、ルナ、今回のこの死徒騒動、止める手立てがあったんだってな?」

「……ハイ」


静かにルナは話してくれた。本当に俺たちは知らない情報が大量に入ってきて、悔しい思いをしたのは確かだった。


たとえば、死徒化を遅らせる薬をクフィ草から作れたのだとか。

とある傭兵団に頼めば死徒化した者だけを徹底的に排除できたのだとか。

帝国側には死徒化を浄化するようなとんでもない銀髪の神子がいるのであるとか。

そも、神子ならば死徒化を食い止められたのであるとか。


嗤った。

嗤ったよ。


「俺が知らなかっただけでこんなことになるんだな……」

「そんなもんはゲームの設定でしか知らねえことだ。後付け設定に俺たちがついて行けるわけねーだろ、今更気にしたって仕方ねえ」


アウルムのやつ、こんなこと平気で言いやがって。

いいや、平気じゃない。


こいつ、偶然外に出ていたことで助かっただけの、セーリス男爵領の住人だったのだ。

一番の被害者はこいつだと言えるのだけれども。


「お前もお前だよ……」

「お前らよか数千万倍以上生きてるからな。だから、気にすんなとは言わねーが、いつまでも後ろ見てちゃ、目の前にいるモンが守れなくなっちまう。前を見ろ、それが貴族ってもんだ。自分よりも民を。自領よりも国を思え、ってのが人間の流儀だろ」


な?


意外とこいつの言葉、胸にくるから困りものだ。

苦しいっての。

そんで頭撫でてくるんだぜ。ふざけんな、お前だって辛いって表情見せていいのにさ。


「ま、その知識があっても、伝えられない、周りが知らないんじゃ話にならんな。転生者であることを知らせて本を書く、図解する。教会の特権にならねえように神子には生贄になってもらうしかねー」

「神子についてもいろいろイミドラでかなり絡みがあるから気になってんだが」

「おらおら、忘れる奴はノート作れ!」


結局皆でまたノートを作って書き込む作業になった。


「ルナはひとまず放置だな。転生したって意識が戻ってすぐに貴族らしく振る舞えなんて言ったってできねえってのは、俺でもわかる。だから、今は泣け。そんでふっきれて前を向け。それができなくちゃならないわけじゃない。降りることができるメンバーってのはいるもんだ」


この場合、おそらく、というか確実に、ヒロインたちのことを言っている。

俺たち悪役令嬢やら、その他やらは逃げられんからな。

それでもいいとは、思った。


「ソルはどうする?」

「降りるわけないでしょ。エリスに任せるのはなんか可哀そうだし、どうせなら転生者として上層と繋がってる私が残るのが妥当じゃない?」

「それはそうだがな」


アウルムは小さく笑った。


「ま、焦る必要はねえ。ロキもそうだがな、転生して、その世界をちょっとでも知っていると、何か起きることを止めようとするもんだ。そして、止めたらその余波が別の形で返ってくる。でもそれが返って来たなんて考えるのはゲームだと思っちまうからさ。最初から知らねえ世界だと思って行動しろ。そうすれば、貴族であるお前らなら皆分かるはずだ。自分がどう動いたらまず、何が出来上がる? 何が起きる? 魔術の効果は? それが他国に漏れたとき他国の反応は? 俺たちがやることなすことダイナマイトだと思ってりゃいい」


確かになあ、と思う節がある。

俺なんかは特に分かりやすいことに、錬金も合成もやっててアイテム作成を楽しんでいる状況。


ほら、例えばの話。

俺がさらっと今ソルたちに持たせているリンクストーンであるとか。


「たとえば、の話の例示があった方がいいか?」

「お願いします」


ルナがそう言った。アウルムは俺を見た。分かってやがったな。


「そうだな。じゃあまず、ソル、クルミ、リンクストーン出して」


2人がうなずいてリンクストーンをテーブルに置く。透明なクリスタルだ。

使用時は宙に浮く。

俺は隠れて俺たちの警護に回っているゼロに命じた。


「ゼロ、鼠を狩りなさい、多少派手になっても構いません」


無言で唐突に姿を現したゼロが、再び姿を消した。


「え? 今のは?」

「我々の話を聞いていた命知らずがいたようです。デルちゃんたち気付いてるなら言ってくれてよかったのに」

「今のは察知できんといくら命があっても足りんぞー」


ゼロが比較的盛大に魔術をぶっ放した音がした。


「それで?」

「たとえば、このリンクストーンは、相手の魔力に反応して色を変えることで防犯の意味を持たせてるが、リアルタイムで現場に指示が飛ぶのって、すごく戦争に有利だよな? 他国にその技術を盗まれた場合は? 量産されたら? 勝ち目はなくなるんだぜ、これが」


戦争を前提に考えなくてはならない世界観であることを、忘れてはいけない。

イミラブの方が人気あったせいでそっちの方がソフト多くなってるみたいだけどな!!





数日後、俺たちは、帝国の少年に会っていた。

俺は全員の前世の姿を再現してやり、そいつの前に立った。


「……あなたが、死徒に敵う戦士、ですか」

「……!!」


そいつは俺たちを見て魚みたいになって。

漸く呟いたのが、「涼」、だった。


「どちら様ですか?」

「お、俺だ、杉本勲だ!」


ほらやっぱり、と俺たちがアイコンタクトを交わした後、彼には該当年齢になったらリガルディア王立魔術学園に来ることが命じられた。


彼が喪服じみたものを着ているのを見て、こいつも両親死ぬんだったなと思い出したから、俺は、彼にソルたちの両親の話はしなかった。


「――よかったのですか、アレで」

「ああ、構わんさ」


後に苦しむことになろうが、知ったことではない。どうせ将来は敵国である。

帝国とリガルディア王国が手を組むのは、死徒が相手の時だけ。

だから、しばらくはイミラブに付き合ってもらうぞ、イミドラの主人公・ハンジ。


どうせ敵国なのだから、と考えているから、リョウたちはあまり勲君に同情的ではないです。

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