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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
幼少期編
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将来従者がやって来た

1話目の表記をちょっと変更しました。


では、どうぞ。

今の俺は基本的に男装をして外を出歩き、髪の色も紫に染めている。

紫といっても、青紫なのだけれど、理由はちゃんとある。


ロキの元の髪の色に近いこともあるが、もう一つは、この世界観において髪の色と目の色はとても重要なものだからだ。


オッドアイが呪われているのなんのというのこそないが、髪の色が2色だったり3色だったり、目の色と髪の色が違っても組み合わせ次第では差別の対象になってしまう。


ファンタジーなだけあって魔術が存在し、属性が存在している。

赤は火、青は水、緑は風、茶は土、黄は光、黒は闇を表し、白は神子。

イミドラの中には出てくる話なのだが赤いのに深みがあるとか、周りを畏怖させるような赤い瞳の持ち主は御子と呼ばれこっちはマジモンの神様の子供系統の奴らだった。


ともかく、紫というのはこの属性の中でも火と水を操るということを指すのだが、火と水を扱えたとしても、それが最高級の所まで使えなかったら意味がないのだ。

特に、フォンブラウ家は公爵という、王族に連なる血統なので余計に。


俺たち兄弟の中で唯一紫の髪で生まれてしまったトールは、兄弟の中で最も見下されて育つ。学校行ってさらに捻くれるという徹底ぶり。

ヒロインはその心の傷をゆっくりと癒していってラブラブになる、というルート。

ロキはその時悪役令嬢的ポジションで登場し、ヒロインに対して「あなたが弟にふさわしいかどうか見極めて差し上げます!!」とか宣うただのブラコンである。


逆に、ロキはきっとトールを気に掛けていたっていう設定がしっかりと垣間見えて、トールには婚約者もいなかったこともあって大人しくハッピーエンドにされろやという感じだったのが印象的だった。


プルトスは碧い髪と瞳、フレイは朱い髪と瞳、スカジは蒼い髪と紅い瞳、ロキは紫がかった銀髪、濃桃色の瞳。トールは紫色の髪、瑠璃色の瞳。コレーはなぜか綺麗な栗毛に深緑の瞳。

アーノルドが紅い髪と瞳。スクルドが蒼い髪と瑠璃色の瞳。メティスは青い髪に深緑の瞳。


一部遺伝かと思うような組み合わせもあるな。

俺の眼は濃桃色であるため、通常のアルビノみたいな神子たちとは違うんだぜ!


ロキの属性も火と水だが、神子としての有り余る魔力量によってごり押しで最高位の火魔術と水魔術を使うことができる。


しかも女の方がハイスペックなこの家系は、プルトスとフレイがスカジに、トールがロキにコンプレックスを抱くという面倒ぶりだ。

プルトスは魔術に、フレイは剣術に才があるけれど、スカジはそんな2人を合わせてさらに2倍したような女なのだ。


スカジは槍の方が得意だから俺とは正面から勝負はしないけれど、俺には剣術の才能があるらしい。最近楽しいのは認めるけどな?

スカジは俺やトールと同じく火と水を扱うけれども、本人はほとんど魔術は扱わない。実力でぶっ倒してやるぜ!という脳筋な姉上なのである。


ちなみに俺はほとんど兄弟のことを呼び捨てにはしない。様と言ったり上と言ったりするのだ。だから皆も俺の事をどう呼ぶかすごく悩んだ。なので、俺はそのままロキと名乗ることになった。


屋敷の中を走って庭に出ると、そこに一頭の黒竜に乗った男と少年がやってきたのが見えた。

俺はその男の顔を知っていた。

何度も見たことのある顔だ。

ゲームのスチルでも何度も見た。


長い黒髪、金色の瞳、左目に眼帯を着けていてそっちの眼の色は分からない。日焼けしたたくましい身体と、それを覆うドラゴン乗り用の服に、ゴーグル。少年の方もゴーグルをつけている。


ムゲンとゼロ――クラッフォン親子だ。

2人はドラゴンから降りて、ゼロはすぐにムゲンの後ろに隠れ、ムゲンは父上の方へ向かった。ムゲンは父上とは腐れ縁だ。


クラッフォンがまとめている彼らの部族は基本的に全員が苗字を持つが、人間ではない。

クラッフォン以外にも似たような役目を負っている家があるが、その頂点にいるのがドラクル。そしてドラクルは全く国の上層部には媚びを売らない。彼らは基本的に竜帝とその愛し子にのみ従うのだ。


俺たち全員が揃ってからはムゲンの紹介とゼロの紹介をされ、ムゲンは父上と喋ると言って父上をどこかへ引っ張っていった。俺たちは取り残されたゼロに視線を向けた。

ゼロはおろおろして、ドラゴンに隠れたがって、ドラゴンにちゃんと隠された。


「あらあら」

「まあまあ」


母上とメティス様が息ぴったりにゼロと黒竜を見ている。

ゼロとムゲンが乗ってきたドラゴンは、実際は確か、ゼロのお母様だったはずなんですがね。


ゼロの外見はめっちゃいい。

黒い短めの髪は尻尾の様に襟足部分だけ伸ばしている。目は金色と赤で、ドラゴンを見たら赤い眼だった。


俺は今日はとりあえず女の格好をしているのでどうしようもないな。とりあえずドラゴンの方へ俺は歩いて近付いて行った。


「ロキ」

「大丈夫ですわ、フレイ兄上」

「しかし」

「彼女はゼロ様のお母様なのでしょう? よいではありませんか」


フレイとプルトスが顔を見合わせたが、母上とメティス様は小さくうなずいた。要するにそういうことなのだろう。

俺はドラゴンに近付いて、その視界の範囲内に立った。

ん?

覚えあるぞこの魔力?


「あ……もしかして、ドゥルガー様?」


とあるゲームの影響で英雄が好きで調べ始めてしまった神話の中にインド神話が入っていたりした俺である。

この世界観、なんか、ドラゴンの重要な位置にいるやつがインドの神々や英雄の名前を継いでいることがほとんどだ。

リーヴァも関係者だが、アイツの守護神がラーマで奥さんの守護霊がシータ。まんまだがそれだけ強力なキャラ設定だったということである。俺的にはむしろ生まれ変わり設定にされてもおかしくないって思うくらい強かった。


――イミドラのダークのリーヴァエンドは男にトラウマを植え付けるものだったと言っておこう。女がプレイするわけだよ畜生!!

新たな趣味の扉が開かれました、なんてログが頭の中に流れたのは懐かしい思い出だ。

そのせいでリーヴァとナグ夫婦が好きになり過ぎたんだ。ええそれこそラーマとシータの分まで幸せになってくれ頼むと祝ってしまうくらいには。


いかん、コレジャナイ。


ドラゴンの周りの魔素が揺らいだ。


『――よく気付いたな』

「お褒めいただだき、光栄です」

『私の前で演じるのはよせ。我々はそういうのに聡いのでな』


ドラゴンはどちらかというと相手の感情そのものを読み取るような感じだというから、演技大好き系の俺との相性はいいと思ったんだがなあ。ま、考え事しまくってたらそうなるか。


「んじゃ、普通に話させてもらうよ。ドラゴンはいかなる権力にも屈さない。最後の竜帝の愛し子、リーヴァ・イェスタ・ガルガーテの竜族宣言抜粋」

『よく知っているな』


ドラゴンは人の形をとることにしたようだ。魔力の練られ方が一気に綿密になりましたぞ。いや、8歳でここまで見れるとかすげえなロキって、とか思ってたけど実際は違う。

俺がやり過ぎたらしい。


銀髪、つまり神子は、それだけが操ることのできる特殊な魔法(・・)を扱うことができる。

これを俺が知ったのは、公爵家の持っている図書館で本を沢山読みこんだ際、別の大陸が存在していることを知って、そっちの本をあさっていて見つけた本に書いてあったからだ。


大陸が変われば帝国もあるということらしく、このリガルディア王国のすぐ横にあるガントルヴァ帝国の数倍の規模を持つ強大な国があり、そこの神子が書いた本があったのだ。

神子は突出した魔力量を持つ、と。


向こうでは迫害対象になっているようだったから行きたいとは思わねーけど。

俺がちょっと思考を飛ばしているうちにドラゴンはナイスバディな女性になった。その後ろにゼロが隠れている。


「ロキだ。髪を紫にして男の姿をしていたらリョウと呼んでほしい」

「あい分かった。私にも様付けは要らぬ」

「了解」


ゼロが無理矢理前に出される。ゼロは甘えん坊なのか、とふと俺は思った。

俺の記憶だとゼロってものすごく鉄仮面野郎だった気がするんだけどなあ?


「これがゼロだ。ゼロ、挨拶くらいはするのだ」

「……ゼロ・クラッフォン」

「ロキ・フォンブラウだ」


少しの間待ってくれというように俺は母上たちに視線を走らせてからゼロの方に向き直る。おそらくこれは人に慣れていないせいだろうと踏んだからだ。

俺の姿を見ておかしいとゼロは思ったらしく、顔を上げた。


「……変なやつ」

「中身が男なんでな。今日はこの後カイゼル伯爵家の御令嬢とお茶会なんだ。そのためのドレスに袖を通してるだけだ」

「……そんな簡素なカッコで行くのか」

「るせー、何時間もフリフリのドレスなんて着てられるか」


俺のメンタルがゴリゴリ削られるんじゃよ。

せいぜい保っても2時間半、舞台以上に長いのは無理だ!


「俺はもっとこう、このひらひらもいらねえって思ってんだぞ!」

「男の人っぽい」

「男だっつの」

「でも女の子のかっこしてる」


母親3人があらあらまあまあと俺とゼロを見て笑っている。なんでそんな温かい視線なんだ。


俺の中身が男であることに対して家中が震撼したのはロキが4歳の頃だった。母上が暴露したのだ。ちなみにその場に友達としていたのがこのドゥルガーである。

ドゥルガーはドラゴンとしては結構古い部類に入る。母上とは母上が幼い頃からの付き合いであったらしい。


ゼロたちの部族・イミットは、死徒の一族である。最も人間に近い死徒と言っても過言ではない。昔は武器に姿を変えるタイプの死徒や、相手の魂丸ごとかっ喰らうような死徒もいたと聞いているが、イミットはいわゆるモンスターテイマー系の最高峰と言っていい。


イミットの語源はimitateであり、『Imitation/Dragons』の話の主軸に彼らがいることを示している。彼らは通常はモンスターを従えるに過ぎないが、そのモンスターの姿に化けることもできるのだ。その中でも彼らが最も力を発揮することができるのが、ドラゴンの姿である。彼らが竜帝の愛し子の血脈であることも無関係じゃないだろう。


「お、仲良くなってるな」

「ふ、ふ、ふ。ゼロでもロキの魅力には敵わなかったようだな」

「うはははは!」


戻ってきた父上とムゲンを視界に入れて、俺はゼロを見た。


「ま、俺たちはこれからしばらく帝国の方で仕事がある。ゼロの事頼むな!」

「頼むぞ、人間」

「了解。せいぜい死んで来い、ムゲン」

「任されました」

「逝ってらっしゃーい」


今ちょっとメティス様の言語中枢に激しく疑問を感じたが、どうやらイミットを見送る際にはこうするのが普通であるらしい。フラグを建てないために死んで来いって言うんだってさ。


こうしてフォンブラウ家にゼロが加わった。


ゼロの母親が目の前で変化しちゃったので、ロキ以下兄妹勢がゼロにビビることはなくなりました。

ゼロは歪み無くすくすくと育ちます。


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