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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
幼少期編
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死徒ある所に地獄あり

ギャグを書きたいと言いつつシリアスに走ってる筆者です←

王都近くのフォンブラウ公爵領から一晩かけて俺たちはセーリス男爵領へと向かった。セーリス男爵領ではもう既に騒ぎが起こっており、火の手があちこちで上がっている。


「くそっ」

「ま、こうなるのは分かってたからな」

「まだ火の手の周りが遅いくらいだ」


リオから降りたアストとデルちゃんはその武器を巨大化させた。

アストのは棒きれだと思っていたが、かなり巨大な光るピッケルだった。青白く輝いている。


デルちゃんの方の武器である鎌は赤く光る刃を持っていた。

俺だけはリオの上に残された。


「大丈夫か、これ……」

『大丈夫とは言い難いだろうね。でも、小を切って大を取ったと言えなくはないよ』


そう聞いて俺は思う。

日本人としての感覚がこの11年間で大分薄まってきていたとはいえ、こうして突き付けられた時。やはり、衝撃を受けることに変わりはないのだと。


清濁併せ呑むなんて俺たち日本人学生の感覚では出来っこなかった。

ソルは直接見ることが無いからできたということもできるだろうが、それで11年育ててくれた親をことをその辺にポイできるような姉ではない。


今日俺に応えた死徒列強は8人。まったく関係なかったところにまで話が飛び火したらしい。


なるべく人的被害を出さないうちに片付けてしまおうという話にはなっていたが、誰が噛まれているかわからないこの状況ではぬるい対応は国内中に混乱を招くことになる。

考えろ、ロキ・フォンブラウ。

何のために俺はこの世界のことを学んでいる。

何のために下町の皆の税金で暮らしている。


そして俺が考えている間に、町中が焼けていった。夜明け前に炎はすべて消えるだろうか。

死徒は炎に弱いのである、いわゆるゾンビ系なので。

死徒は人間と区別なんてつきやしない。だから死徒が入った村は、街は、国は、徹底的に滅ぼされてしまう。

時折見分けられる力を持つ者もいるという。


そして人々はそれを魔女と呼ぶのだ。


狂ってら、死徒なんていなけりゃいいのに。はぐれ死徒と呼ばれる今回のようなタイプは、ネクロマンサーがどこかに居たことを表している。イミドラでは主人公が結構序盤の方で辿り着いてそのまま中ボスくらいまで引っ張るやつだったんだが、どうなるだろうか。


『死徒って好きで死徒になってるわけじゃないから、それは言っちゃだめだぞ?』

「?」


俺の心を読んだらしいリオに言われ、なんだそりゃと問いかけると、死徒というのは元々死神の一種だったのだそうである。生身の肉体を持つ死神が、死徒。なので人間に死を運ぶという点において、死徒は死神たちの下部組織に当たるのだとか。


この死神の頂点が、冥王ハデスとかプルートとか呼ばれる神々らしい。


「……じゃ、俺たちはこのまま見てろってことかよ」

『死徒ってね、あの2人や死徒列強からすれば雑魚でも、人間なんて簡単に捻り潰せるもんだよ』


どんなに強い魔法が使えたって、人間の脆弱な肉体では死徒に敵わない。分かったら大人しく待っていることだ。


リオはそう言って、こちらを見上げて呻き声を上げている――死徒に向けてブレスを吐いた。そのブレスはどうやら酸だったらしく、肉も骨も関係なくシュワシュワいって溶けだす。


間違ったことを彼らは言ってないのでたちが悪い。

間違っているのは、いいや、正誤の問題ではないのかもしれない。


間違ってはいない。でも、正しくもない。

人生そんなのばっかりなんだろうな。





結局夜明け前には火が収まったものの、セーリス男爵領はほぼ壊滅だった。壊滅した原因はどちらかというと、列強の方だ。

彼らはいつだって自分たちの手駒が欲しい。

人間を死徒にすることほど早い死徒の作り方はないので、手っ取り早く他の死徒が死徒化させた者のコントロールを書き換えて乗っ取っていく。


真面目にやっていたのは種族的に死徒の家系を継いでいる奴ら2人とラーとセトナだけで、他は好き勝手やってしまったようだ。


「……で、外には出してないんだよな?」

「ええ。出てはいないわ。もし出ていたら私があんたの人生中奴隷になってあげるわ」

「そんなの求めてねえよ」


俺は寝不足だ。

リオの上で今もウトウトしてしまっている。


「眠った方がいいわ。転生者だと言ってもあなたの身体はまだ11歳くらいなのよ? 子供が無理するもんじゃないわ」


セトナがそう言って俺に毛布を掛けてくれた。

今はその優しさがちょっと苦しかった。


「……致し方ないと思うぞ。彼は公爵家の人間として育てられた11年の記憶もある。つまり、ただの転生者よりはこの状況に対して責任を持つべき存在であるということだ」

「それはそうだけど」

「私ならば、銃を突き付けられ、発砲されたので包丁で殺しましたと言って正当防衛と認められても、かなり苦痛に思うだろうよ」


そんな彼らの会話を聞きながら俺は、眠りについた。

帰宅後、王宮に召喚され、眠いのを我慢して王城へ登城し、状況の説明を行ってそのまま床で爆睡するという失態を演じてしまったのだった。


シリアスを、吹き飛ばしたい

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