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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 夏季休暇編
151/154

竜人というやつは

お久し振りでございます。三度目の正直を書き始めたしょーもない作者でございます。もうちょっとこっち投稿するの残ってたので頑張ります。


ゼロ視点

「ふざけるな、どういうことだ、ドルバロム!! 放せ、アウルム!!」


俺はドルバロムに殴りかかろうとして、アウルムに止められていた。


「いや、ドルバロム物理効かないから殴っても同じだ」


アウルムは随分と冷静に言葉を返していたが、ドルバロムへの口調は棘があった。


「で? きっちり説明してくれるんだろォなァ? なんで転移も招集も使えなくなってんのかよォ」


アウルムは半精霊とはいえ精霊の仲間である。契約した主の声が届かないなんてことはありえない。しかしそれが届かなかったらしい。


それは俺も同じだ、主と定めたものの声を聞き逃すなどあり得ない、そんなことがあるならば死ね。


ルビーやダイヤモンドら5人も姿を現している。主側に行っていないということは、理由はアウルムと同じだろう。


慌てふためいているアーノルドさんとスクルドさん、理由は単純で、スクルドさんの予知が突然スズとレインをロストしたから。


「今までこんなことなかったのに……!」

「魔術、というより、魔法のせいかもしれん」


そう言って色々と話し合っている大人。

件のレインが帰って来たのは異変をスクルドさんが察知してから一刻ほどが過ぎた頃だった。


「父上――ッ!! 伯父上――ッ!!」


大声を上げて駆け込んできたレインはもはやギルドに寄らずに直行で帰って来たのだろう、薬草を入れた袋を手に持っていた。

それを見た瞬間にアウルムがドルバロムを咎めるように見た。

だが、ドルバロムも目を見開いた。


「まさか」

「あん?」


レインの報告では、フレイムドラグーンが森にいたと。

リーヴァ様のブローチがあるとはいえ危険ではないかと思った。

直感みたいなものだと思う。それに、ドルバロムの反応。


「レイン、それ」

「なんだよ!」

「フレイムドラグーン、角黒くなかったか」

「? ああ、確かに黒かったが」


レインが質問に答えたとたん、ドルバロムから気配が消えた。

いや、これが彼の普通なのだろうが。


「……ドルバロム?」

「……あの脳筋婆……チクショウ。そのドラグーンは上位竜だ、リーヴァのは効かない。俺は先に行くよ」


ドルバロムは姿を消した。

あの野郎、こっちだけ置いていきやがった。


「今のは、一体……?」

「……ドルバロムがあそこまで焦るってことは―――」

「バルフレトでしょうね」


エメラルドとルビーの出した答えに俺たちは固まった。

バルフレトといえば、火竜種の頂点に立つ上位竜である。

イミットくらいしか知らないはずだ、人間たちは火の頂点をレファランカと呼んでいる。


「バルフレトというのは?」

「上位火竜種の頂点です。僕らのところではとっくにレファランカに火の頂点を継がせていますが、浄化の力を持った炎はバルフレトの専売特許です。レファランカはどちらかというと災厄を引き起こしやすいタイプですから、バランサーとしてたまに降りてくることもあったみたいですが」


ルビーの言葉に、レインが口を開いた。


「それで、どうすればいい。僕はロキに言われて逃げることしかできなかったんだ。何かできないのか」

「人間じゃ無理ですよ。僕らでも勝てないのに」

「ドルバロムなら余裕じゃない?」

「術の発動が遅い闇竜じゃ負けこそないが勝てもしないだろ」

「バルフレトの目的が思い当たらないな~?」


皆勝手に言いやがって、呑気なもんだなと内心悪態を吐くが、実際問題そうなのだ、ダイヤモンドの言うとおり、目的が分からない。


「竜帝って上位竜種じゃないっけ……?」

「いや、バルフレトの方が上だ。イミットも絶対服従になるだろうね」

「まだ見えない……早く見せて、お願い、生きているなら見せてくれてもいいじゃない!」


スクルドさんが錯乱し始めた。

人の錯乱を見ていると自分が落ち着いてくるところが、何とも……。


何となく心が凪いで行くのを感じた時、足元が光った。

召喚陣だ、と悟ったときにはもう、俺たちは別の場所にいた。





「……ここ、は」

「ようこそ、上位世界へ」

「「「!?」」」


俺たちは声のした方を見た。

そこにいたのは。


「デルちゃん?」

「アストも?」


実際は上位世界の住人であり、破壊神としても、風の怪鳥としても名を知られた、デスカルと――技巧神アスティウェイギアがいた。


「ああ、籠の中で悪いね」

「なんだここは、どうなっている?」

「落ち着けアーノルド。スズの魔力回路がちょっと暴走したんで、調整のために連れ込んだだけだ」


俺は周囲を見渡す。鳥籠の中に俺たちは閉じ込められている。

籠の外には、魔物と呼ばれる類のモノの、上位種ばかりがひたすら並んでいた。


数百メートル級のドラゴンなんてザラ、フェンリルと思しき黒い種類の人狼やら逆に白虎の獣人、鳳凰だか朱雀だかの上位種らしき極彩色の鳥や――迷宮の守護者と雰囲気が全く同じにもかかわらずあり得ないほどの威圧感を放った人型のものもいる。


「なんつー……」


俺たちが周囲に驚愕している間にルビーがデスカルに声を掛ける。


「女将、僕らに何か手伝えることはありませんか?」

「今のお前らには何もないな。スズの傷の修復と一緒に他の奴らの加護も組むから、容量上げでもしとけ」

「分かりました」


ルビーの言葉が終わればダイヤモンドが問う。


「女将~、ロキ怪我しちゃったの~!?」

「魔力回路無理に動かして裂傷、火傷。ついでにバルフレトが一撃尻尾をぶち込んだせいでホントなら瀕死。ダヌアに拒否らせて無理に繋いだ」

「一度死んでない?」

「死んではない。身体と離れてないから」


さらっと嫌な言葉が聞こえたのだが。


「よくもロキを危険に晒したわね!!」

「俺じゃなくてバルフレトに言ってくださいよスクルドさん!!」


スクルドさんの魔術が発動しかけて崩れた。

小さく舌打ちするスクルドさん。


「ほら見ろ言わんこっちゃねえぞバルフレト!! だから来るなっつったのになんで降りてきやがった!!」

「あら、いいじゃないちょっとくらい。それに私が怪我をさせたから彼の魔力回路の異常だって見つかったのだし?」

「そういうのを結果論っていうんだよ!!」


この空間でもひときわ存在感のある竜人の女に向かってデスカルが叫んだ。

竜人の圧倒的な力を見せつけられている感じがする。


「てめー、一度首を落としてやろうか」

「あら、ヤダわ、“最強”と事を構える気はないのに」

「スピカにどう落とし前付けるんだ! それとも報告書書かせてやろうか! 燃やしたら反省文5枚で!!」

「あらやだわー、私鳥人種の文字書けないのよ?」


必死なのはデスカル、そんなに重く考えていないのがバルフレトってところだろうか。

まさにイミットというか、ドラゴンだなと思う。

人間の命の価値など、これっぽっちもない。


「バルフレト様」

「――あら」


俺が声を掛ければ、紅い髪の竜人の金色の瞳がこちらを見た。


「俺は彼を主と仰いだ。たとえあなたであっても落とし前は付けてもらう」

「……あらあら、熱い目しちゃって」


バルフレトは俺の前にやってきた。


「いいわよ、落とし前、あなたに免じて。うふふ、でもこれ以上やると、あの子本当に進化の時に竜人になっちゃうわよ?」

「知らんな。人間だろうが竜人だろうが獣人だろうが鳥人だろうが。ロキはロキだ、何も変わらん」

「――いいでしょう、半竜の子」


バルフレトが俺の右目に手をかざす。

次の瞬間、目が火に包まれた。


「がッ……!?」

「あなたに火竜神祖の加護をあげましょう。主に仇成す負を焼き払う渦となるがいいわ」


俺は左目を押さえる。

痛い!

熱い!!


「ロキは極端に“死”の属性が強かった。だからこれからそのバランスを戻すために“生”に大別される属性の加護を組み込む。今までのサボりのツケだ。きっちり払わせて万全の状態で息子さんはお返しする」


「ここにいるメンバーくらいじゃないと、今のロキには釣り合いが取れないんですよ。見放しても国と家族と王子殿下に尽くそうとして死地行きの車に喜んで乗り込むタイプなので、ちゃんと見ておいてあげてくださいね」


苦痛に耐えて少しばかり顔を上げれば、奥に白亜の祭壇があるのが見えた。

そこに寝かされているロキが、人形のようで。


「――これであの子を送り出すにあたって存在した不備はすべて解決したな」

「――残るは、奴自身がいつ姿を現すかだな」


さあ、そろそろお帰り下さい、この状況を見せたかっただけなのでと、黒い髪の少年がやってきて言葉を紡ぐ。


「最強でもチートでも受け入れて鍛えてやってください。最後まで皆を信じる奴だから」


足元に再び召喚陣が浮かぶ。

ドルバロムが走り出てきた。


「皆、俺はもう少し彼といる。晩御飯までには戻るから。あと、ロキにはこのこと内緒だよ? びっくりさせたいからね!」


マイペースな奴が多くて困るなと、アーノルドさんが言った。

命に別状はないんだと、もう一度ドルバロムが言ってくれて、俺は息を吐き出した。




その後、俺は夕食開始ギリギリにロキに起こされるまで、眠っていた。


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