ギルドに顔出し
お久しぶりです。
テストを放り出した人間はここだ←
やり過ぎたわー。
4人で、破壊しまくった土地をせっせと均していくゼオン叔父上を眺めていた。
「やりすぎたかなー」
「フレイ兄上、もう動いても平気なのですか」
「うん、もう大丈夫」
肋骨イってたからな。
俺以外に回復魔法が掛けられる人間がいないので、俺が治療することになったのだが、それは別にいい。
スカジ姉上が蹴り飛ばしたらこうなったのである。
スカジ姉上の脚力を疑う。
レインが俺をすごい形相で睨んでいる。
まあ、分からなくはない。
「レイン、言いたいことがあるならはっきりと言ってもらわねばわからない」
「……チッ」
舌打ちはあまり行儀のいいものではないが、まあ彼の苛立ちの原因が俺にあるのは確定なのでどうすることもできない。
「はァ。俺は万が一にもお前の兄弟になることは無いから安心しろ」
俺はそれだけ言ってその場を後にする。
「ロキちゃん、どこへ行くの?」
「ギルドへ行こうかと思いまして。ちょっと依頼を眺めてきます」
「俺も行く」
「ゼロも来るか」
「ああ」
アウルムとゼロが席を立った。
スカジ姉上はクッキーを持って来た執事さんに気を取られたので放置。
「待てスズ。僕も行く。場所も分からんだろう?」
「……そうですね。お願いしよう」
分からなくても飛んで行けるんですけどね。
♢
ギルドまでの道は一発で覚えた。
俺が黒鉄級であるのを見て、受付嬢が驚いていたことと、ガラの悪い男たちに絡まれたことだけ報告として。
ちなみにレインは赤銅級だった。
絡んできた男たちも赤銅級で、どうしようかと思って悩んだのだが唐突に腕を掴まれ、驚いて回し蹴りを男のこめかみにヒットさせてしまった。
で、現在目の前で男が伸びているわけだが。
「……なんか、すまない」
「いや、今のはこいつの自業自得だ」
王都のギルドしか行ったことなかったんじゃもん。
レインが俺の顔をまじまじと見る。
「……ロキは顔が整ってるからな、絶対1人では来るなよ?」
「お前には言われたくないな……」
お前も整っとろうが。
レインは俺の引っ張ってカウンターへ向かう。
受付嬢は3人いた。
俺たちはギルド印章を提示すると、身元確認をしてもらって、掲示板へ向かう。
その中に、俺は見つけた。
危険度はそこまで高くないが、実入りもない。
そんな、依頼。
「どうした、ロキ」
「……これを受けさせてもらいたい」
「……ドラゴンゾンビの死骸の調査?」
なんでまた、とレインが呟くが、ゼロは意味が分かったのか、その依頼を取ってカウンターへ向かった。
「これを受けられるのですか?」
「ああ」
「えっと、契約金は……小銀貨5枚です」
俺はすぐにゼロの傍へ向かった。
ゼロに金は持たせていない。
「本当にこれでいいんですか?」
「はい。知り合いのドラゴンだった可能性があるので」
「……それは、ないと思うけど……」
ちょっとぶつぶつ言いながら受付嬢は受理してくれたので俺とゼロ、アウルムはすぐに出発準備を始める。
「おい、なんでまたこんな実入りのないものを?」
「あのドラゴンゾンビは昨日唐突に現れたものだ。その正体も、倒したやつも俺が知ってると言ったら?」
「「「はっ!?」」」
周りにいた男たちも受付嬢も声を上げた。
レインも目を見開いている。まあ、そうだよな。
「さっさと行くぞ。この場にお前を置いていったら襲われそうだからな」
「だ、黙れ、僕でも自衛くらいできる!」
オイオイどうやって向かう気ですかと周りの男たちが言うが、そちらを一瞥してやる。黙ればいいのだ。その下種な視線をレインに向けるな。
「何気にロキってレインのこと気に入ってるよな?」
「ん。家族意識」
俺はすぐにギルドを出る。さっさと行かなくては。
「あ、ちょっと、ゼロ君!」
「?」
名前書いたのがゼロだから仕方ない。
「その、このドラゴンゾンビの調査って、報告書纏めなくちゃいけないんだけど、大人の人連れて行った方が」
「ドラゴンについてはその辺の学者よりも知っていると自負している」
ゼロは受付嬢の言葉を一蹴して先に行ってしまった。アウルムを先に行かせる。
「口が悪くて申し訳ありません」
「でも、3人とも黒鉄級なんですよ? それに、まだ子供じゃないですか……大人は連れて行くの?」
「いいえ。それにゼロもアウルムもその辺の大人より百倍は強いので問題ないですよ。レイン、急ぐぞ。もうゼロは城壁付近だ」
「そんなに早いのかよ」
「あれはイミットだぞ。人間と同じ速度で測る方がおこがましい」
ギルド内が騒然となり、俺たちはさっさとギルドを出て、店で先に回復魔術のスクロールを買ってくれていたアウルムを回収し、ゼロのリンクストーン目指して転移した。無論アウルムからの許可付きだ。
「お前、転移使えたのか……」
「対象にマーカーを持たせなくてはならないがな」
ゼロはいつでも出れる状態にしてくれていた。小さな木製の扉を、ギルドの印章を見せて、依頼を受けていることを示せばあっさり通してもらえた。
まあ、昨日も会った顔が2つあったからそのまま通したって感じではないだろうか。
「外に出たはいいが、これからどう行くんだ」
「無論、歩く」
「どれくらいの距離だ?」
「知らん。1時間は歩くだろうな」
「そんなにアバウトなのか!? というか、遠い!」
俺とゼロは飛べるがアウルムは無理だしなあ。レインも無理だろう。
「俺とゼロは飛べるんだがな」
「あー、なら俺は一旦工房に行くか?」
「そうだな」
「レイン、飛んでみないか?」
もうこいつ飛ぶ気だ、と言わんばかりの引き攣った表情をしているレイン。その通りですから、そう後退るなよ。
「平気だぞ。俺が基本コントロールはできる」
「もうこれ以上お前の才能を見たくない!」
「なら俺にない才能を探し出して伸ばすことだな」
レインはきっとできる。
何とも言えないが、たぶん俺にはない才能があると思う。
何だろうな、剣じゃないと思う。槍だろうか。槍だとスカジ姉上を越えられなさそうで怖い。
「剣術も魔術もできるって、一体なんなんだ!」
「……今限定的な話にしたいところだが、俺は魔術が使えないぞ?」
「へっ?」
「俺が今使えるのは、魔法だけだ」
「~~ッ、期待させて落としやがったなコノヤロウ!!」
「勝手に落ちたのはお前だ」
ギャイギャイ話しながら進んでいくことになった。アウルムとゼロが俺とレオンを見守っている態勢なのが非常に気になった。
俺たちがドラゴンゾンビに辿り着いたのは、マジで1時間ほど経ってからのことだった。