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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 夏季休暇編
142/154

正解回答

コーキ、エルカ、ファリカ、バルト、ヴォーグ殿の5人を迎え入れ、俺たちは無事に戻って来た。


彼らを客人として迎え入れてもらった。

宿に泊まろうとバルトは考えているようだったが、イミットを連れたパーティである。そうやすやすとその辺の宿に泊めるわけにはいかない。


それに、俺自身が感じた不安というのもある。行くなとは言ったが、竜帝の決定ではないし、リーヴァの言葉ほど重みも拘束力もない。

下手をすればドラゴンゾンビのところへコーキが行ってしまう可能性だってあった。


明日には従兄弟が来るが、まあ、放置である。

イミットに喧嘩を売ってみればいいと思う。

何でこんなこと言ってるかというと、要するに俺と従兄弟は仲が悪いのである。


応接間でもてなされた彼らは恐縮してしまった。まあ、仕方ないよな。


「……まさか、侯爵家の方々だったとは……」


バルトの言葉に、こちらが申し訳ない気持ちになってしまう。連れてきたあげく侯爵家の屋敷に泊まれとか、平民にとっては相当胃が痛くなるお話ではないか。


「その、バルト殿。心労を増やすようで申し訳ない」

「え、いえいえ、コーキを気に掛けてくださってのことでしょう? これくらい平気ですよ」


いい人や。


「ロキ」

「ん」


ゼロが俺のところへ寄ってきた。

どうやら、コーキから話を聞いたらしい。


「コーキが言ってるのは、兄のことらしい。いなくなった年が50くらいだと言っていた」

「……そりゃ、ドラゴンとしては小さいかもしれないが……」

「ああ。ディディガナはバハムート種だ」


ドラゴンの中でも成長が早く、なおかつ巨躯を誇るバハムート種は、10年程度で10メートル、100年たてば100メートル近い巨躯を誇る猛者である。

その分寿命は短いらしいが、それでも数百年単位で生きるような種類であり、人間の感覚など当て嵌めるだけ無意味だ。


単純に1年で1メートル延びるとして、50メートル?

無理無理、尻尾がしなやかなのでドラゴンは基本的にその尾と魔法で攻撃を仕掛けてくる。噛みつくのも手足を使うのもご法度、そんなことをすれば子供かピンチに陥った弱者扱いを受けるだけ。


つまり基本はその尾で敵を薙ぎ払うやり方だ。

そしてこれ厄介なことに、ドラゴンゾンビでもやれるのである。飛行能力こそないものの、50メートルもあるドラゴンが突っ込んできたらそれだけで人間など簡単にぷちっといってしまう。


イミットであろうともそこはあまり変わらない。

いや、もしかするとコーキは両親の内片割れが人間の可能性がある。イミットは人間とドラゴン、それ以外の種族とでも子はなせるものの、全てイミットに分類され、ドラゴンへ転身する。


ゼロは父親がイミット、母親がドラゴンという、血統的にはかなり強力な部類に入る。

コーキはそれよりも弱いようなので血統で出た差だと思われる。


「明日には従兄弟が来るが、無視しておいてほしい。所詮はまだ爵位も継がぬお子様なのですから」

「ロキ様は子供にしては貫禄ありすぎです」

「転生者ですからね」


バルト殿たちに向けて言えば、彼らは茫然と固まってしまった。特にエルカ、ファリカ、ヴォーグ。


「?」

「転生者……と、いうことは」

「いったいどれほどの敵と戦われてきたのですか、スズ様……!?」

「精霊たちが何度も加護を掛け直してやっとってレベルだぞ、これ」


え、重ね掛けされてんの?

マジで?


「……たぶん今後は、過剰戦力だ」

「いや、今までお前の今の状態とあんま変わらねーのに倒せなかったんだから過剰じゃねーわ」


アウルムが余計なことを言った。一発蹴りを入れておく。


「いってぇ! なんで蹴るんだよ!」

「エルフもドワーフもそういうことには敏感な種族だとお前の方が理解しているだろう! 自重しろ大馬鹿野郎!」

「今知らせて悪いことはねえだろ!? それとちょっと黙っとけお前の先生になってもらうんだからよ!」

「ファッ!?」


俺の先生になってもらうだと?

俺が首を傾げると、エルカが声を上げた。


「はい! やります! やらせてください、カナト様!」

「先に言われちまったじゃねーか! でもこいつのことよろしく頼む!」

「オレも手伝おう」

「ああ、頼むぜ?」


こうして、こっちでの俺の先生が決まったのだった。





俺は宛がわれている部屋に戻って、リンクストーンを取り出す。

あて先は、ソル。

リンクストーンが赤く光った。


『はーい、ソルでーす』

「ソル、ロキだ」

『はーい。今度はどうしたのー』


ソルの後ろでルナが何か喋っているのが聞こえる。誰かと喋っているのだろう。


「客人か?」

『ううん、セトナと一緒にお菓子の話してるだけよ?』

「なら、少しルナに聞きたいことがある」

『はいはーい』


ソルはすぐにルナを呼んでくれた。ルナだけでなく、セトナも近くに来たようだが。

リンクストーンにオレンジと淡い紫が広がった。


『もしもーし、ルナですー』

「ああ、ルナ。一つ聞きたいことがある」

『はーい?』

「コーキ・ディディガナという名は知っているか?」

『えっ!』


ルナが驚いて声を上げ、やっぱなんかあったかと俺は内心不安になった。

何が待っているのかさっぱりだからな。


『会ったの!? どうやって!?』

「母上の実家の近くに来ていたのをゼロが探知してな、今日会った」

『彼、ドラゴンゾンビに向かっていこうとしなかった?』

「……説き伏せて城壁内に連れ込んだ」


あからさまにルナが息を吐き出した。


『よかった……』

「ルナ、アイツは何だ」

『イミラブMEMORIAのハズレ攻略対象だね。バッドエンド以外ないの。彼ゾンビだから』

「……やっぱゾンビ化するんだったのかよ」


嫌な予感がしたから連れ帰ってきた、その時の俺の判断を称賛したい。


『そのドラゴンゾンビ、コーキのお兄ちゃんなのよ。調べればわかるけど、中にイミットの遺体が混じってるはず』

「倒し方は?」

『相討ち覚悟で貴族のおばあさんが出ていって戦死』


それ絶対曾御婆様か御婆様だ。

ドルバロム行かせるの確定な。


『どうする気なの、スズ』

「ドルバロムに押しつぶさせる。腐ってもドラゴンだ、人間が行ったら確実に死人が出る。それよりは、過剰戦力くらいがちょうどいい」


ドルバロムに頼むぞと呟けば、分かったと小さな声で返答があった。


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