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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 夏季休暇編
134/154

闇竜と契約Ⅱ

裏手の庭を借りて俺たちは契約を結ぶための支度をした。

母上が大慌てで父上たちを呼びに言ったので、おそらく俺は倒れるのだろう。


「母上、そんなに慌ててはロキが不安がります!」

「母様、落ち着くのだ。ロキは死なない」

「フレイ兄上、スカジ姉上、もはやロキ兄上は倒れることを想定内に収めておいでです」


我がきょうだいたちも頑張ってるようだが、いや、トールはもはや諦めてるな。

仕方ないと思う。


「……まあ、普通はそういう未来が視えるよねー」

「……スクルド様のって外れないから、たぶんマジで倒れるぞ?」

「ちょ、絶対安全な方法だからって言ったのゴーだろ」

「ドルちゃんがちゃんと加減すればって俺言ったじゃないっスか!」


もうヤダ俺をどうする気なのこいつら。


曾御爺様たちは結局一緒に見守ってるし、もうちょい静かにやれないかなと思ったのだが、アウルムを見やると、首を左右に振られた。

どうやら、俺が倒れる、というか、安静の理由はこの辺にあるらしい。


アウルムたちの契約とは異なり、何も身に着けなくていいそうだが、その分結構体に負担がかかるのだそうである。

メタリカたちは人数がいたためこちらに配慮してくれたと見える。


「じゃあなんでリオは直接なんだ?」

「俺とロキの属性、メインになってるのが重力磁場か変化かってだけだからねー。言ってしまえば、よく似ているからとっとと結んでしまった方が容量云々を考えなくて済む」

「土に回せる量に限界がある、的な感じか」

「その通り」


俺が事情を理解したところで、アウルムは俺からいったんピアスを外させた。

つまり、それだけ現在のアウルムたちが容量を取っているということである。


「素直に従属できればこんなことにはなってねーんだが、なにぶん半精霊なもんでな」

「そっちは大丈夫だからゆっくり待ってなよ」

「ああ、そうさせてもらうわ」


アウルムは俺たちから離れていく。

リオと向き合うと、リオがにこりと笑い、その服装を変えた。


言ってしまえば、法被のようなものを着ているのだが、下は、イメージとしては格闘家というか。なんかゆったりした服なんだが、足が出ていて、そこには鱗がびっしりと。

腕にも鱗のラインが走っているし、目が、さっきよりもかなり威圧感を感じる、爬虫類のあの目になっている。


けれどもその金色がとても美しく感じるので、なかなか視線を外せなかった。


「……もうそんなとこまで踏み込んできたんだ」

「……?」

「ううん、理解してないならいいや」


契約もしやすいしね、と言われ、リオが俺の胸に手を置いた。


「俺の名前は、ドルバロム・プロミネア。さあ、呼んでくれ」

「……ドルバロム・プロミネア」


名を、呼んだだけだった。

呼んだだけで、急激に周囲のマナの量が段違いに高まっていくのを感じた。

あはは、と小さな声で笑ったリオの姿が、ドラゴンへ転じた。


その姿は、半分以上が透けていた。

すけていると言ったら、弱々しい印象があるはずだった。

なのに、俺の目の前に立つリオといったら!


その場でトールやフレイ兄上は尻餅をつき、スカジ姉上も後ずさる。ディーン御爺様は気絶し、父上は表情が強張り、母上も膝を折ってしまわれた。

万全の状態で微動だにしないのは、ヘイムダル曾御爺様だけ。

御婆様も曾御婆様もしゃがみ込んでいらっしゃった。


でもそれは、ゼロなんかもっと酷くて、平服状態だった。

アウルムは平気そうだったがノーカンである。


息を吸い込むだけで大量のマナが体内に入ってくるのを感じ取れた。

本来マナってものは、感じ取れない。

魔力ならばある程度の人間は感じ取れるものだが、これは上位竜が魔力自体をそもそもあまり必要とせずに魔法を行使するために来る現象であるらしい。


「透けてんのに、酷い威圧感だな」

『仕方ないだろ? 大体今俺、自分で巻いたとぐろの中に顔突っ込んでる状態なんだよ?』


威圧されない方がおかしいよ、君たちは俺の身体に囲まれてるんだからね。


そう言ったドルバロムの威圧感はそれは半端ないものであり、周囲への防御障壁自体はヘイムダル曾御爺様が張ってくださっていたようである。そうでなければ、屋敷の外へのことも考えねばならなかった。

というか、もっと警戒すべきだっただろう、俺。


「で、この後は?」

『予想よりもマナの吸収率がいいねえ。この世界に足を着けたかな?』


そう言われれば、つい最近の話題じゃねーかと肝を冷やす羽目になった。

コロンと手に握らされた美しい夜空を閉じ込めたような石を眺める。どうやらこれを飲めということらしい。


俺は意を決してそれを口に含んだ。

大きさとしては、2センチ角ほどのサイズを、ビー玉のようにまんまるにしたもの。

多少大きいものは呑み込むのが苦しくて、上を向いて頑張って飲み込む羽目になった。


喉がひりひりする。

しばらく顔をしかめていると、急に胸のあたりが苦しくなった。

痛いとかではなく、緩やかにせり上がってくるようなそれに俺は困惑する。

胸に手を当てて俺はリオを見上げる。


リオはふっと竜人の姿になると、俺に足早に近寄ってきた。


「急に力が入らなくなるはずだから、こっちに倒れてくるんだよ」

「お、おう……?」


それよりこの胸の鈍い苦しさをどうにかしてほしい、そんなことを思っていると、ふっと足から力が抜けた。

慌ててドルバロムの方へ倒れ込めば、衝撃もなく受け止められた。


「頑張った」

「……ん」

「ゆっくりお休み。【聖夜(ホーリーナイト)】」


案外簡単に、ナタリアの家の魔法を行使するリオに俺は苦笑を零しつつ、大人しく寝かせてもらうことにしたのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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