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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 夏季休暇編
133/154

闇竜と契約Ⅰ

鍛錬を終えた俺はシャワーを借りて汗を流し、貴族としてはあまり褒められた格好ではないのだけれども、俺の部屋着に着替える。

ゆったりしてるので。


ふと、自分の手を見て、相変わらず日焼けしないな、などと考えてしまった。

普通なら、色が白いと言えば白人のような、ピンク味の強い肌の色を思い浮かべるのだが、俺に関しては、全く色素が抜け落ち血の気もない作り物のような白さである。はっきり言って鏡を見るのが気色悪いくらいだ。


それでももうすっかり慣れてしまって、鏡の前に立つときの俺は基本的に無表情であるので、もはや陶器人形と言われても何も言い返せないレベルである。でも別に死人のような色をしているわけではない。見る人が見れば、俺が神子であることがばれる程度の仕様である。


個人的には全然日焼けしてくれて構わないのだが、何だろう、精霊に愛されてるってこういうことでも差が出るものなのだろうか?


銀色の髪を【乾燥(ドライ)】で乾かし、ふとリンクストーンを手に取った。

そのままソルに繋いでみる。アイツも朝は早いのでもう起きているはずだ。

彼女らはフォンブラウの客人として客室を宛がわれている。


リンクストーンが赤く光る。


「もしもし、おはよう、ソル」

『おはよう、ロキ。こんな早くからどうしたの?』

「いや、なんかデルちゃんたちからとんでもない情報明かされてな。少し落ち着きたい」

『あらあら、ちょっと歌ってみる?』

「ああ、いいな、それ」


前世では結構一緒に歌も歌っていたようである。

微笑ましいというか、通り越して羨ましいぞ。

だってスカジ姉上、音痴だし……。

あー、やめとこうこれ以上は槍が飛んでくる気がする。


じゃあ、1曲ね、とソルが言って、歌い出した。

前世で合唱曲と呼ばれていたそれは、前世の俺にとっては身近だったのかもしれないが、今の俺にとってはとても新鮮なもので、演奏されていなくても前世の記憶からそのメロディを引き出してくることは可能だが、やはりソルの声で歌ってもらうのがとても耳に心地いいのだ。


今日のチョイスは、よく動画サイトで聞いていた、合唱アレンジのタイプで、ゆったりとした曲だった。

もちろん俺も歌える。


2人で声を重ねて、窓から見える青空に声が吸い込まれていった。

きっと、ルナを起こさないように、外に出て歌ってくれているのであろうソルの大きな声が、楽しそうに踊る。

いつの間に来ていたのか、近くにヴェンとドゥーが寄ってきて、聞き耳を立てていた。





「じゃあ、さっそく契約結んでみようか」

「……」


朝食が終わり、これからまた金属を弄ろうとインゴットを取り出そうとした俺に、リオが言ったのがこの言葉である。

俺が声を上げて反応を示さないのは、前世からの癖だったようで、俺はただ首を傾げることでちゃんと理解できていない、ということをリオに示した。


「あー、えっとね。歌ってたでしょ? 俺たちの契約って、要所を押さえてれば簡易的な契約で済むんだ。その中に、音属性が入ってる」

「……ああ、それでか」


どうやら、俺が歌を歌っていたため、音属性の契約を結びやすい状態になっているらしい。

リオが簡単に伝えてくれた条件は、ようは、喉がちゃんと開いていることが条件であるらしい。


「闇竜との契約って、闇っていうせいで夜の方がいいと思うやつが結構いるんだが、逆なんだよ。昼の、大いなる闇が晴れて個別に全てを判別できる状態にあるときの方がいいんだ」

「そういうもんなのか」

「ああ」


アウルムに言われて多少は納得した。

というか、俺はどうにも、言われたことをそのまま享受するタイプらしい。そしてそのまま知識として溜め込んで、別のところに利用することをなんとなくで行うタイプらしい。


部屋にいったん戻ってきているため、このままここで行うのかとも思ったが、屋外の方が効果は高いようだ。

あまり、反響しない方がいいのだとか。


「でもソレだと、やっぱあれじゃね?」

「うん、あれなんだよね」

「あれ、とは?」


なんだか不穏なんだが。


「うん、音ってね、その壁超えるとマッハっていうんですよ」

「いや、要は音速の衝撃波を一度その身体に受けるってことになりそうなわけなんだが」

「ジェット機ばりの衝撃を生身で受けろっていうのか?」


多少今度ははっきり表情が動いたと思う。

明らかに眉間にしわが寄ったのが分かったからな。


「えーと。まあ、それを軽減するのが、喉を開けておくという行為でありまして」

「音属性のマナを大量に体内に取り込まなきゃなんねーんだよ。でもそれは面倒だから、マナを少し固めたものを用意させた。ただし、これを飲んだら今日中は安静だ。お前の従兄弟たちが来る前にとっとと片付けちまおう」


アウルムにそう言い切られて俺は頷くしかなかった。

俺の従兄弟たちは、5日後には来る予定である。無論彼らは実家に帰って来るに過ぎないのだが、母上の話によると、どうにも俺のことを目の敵にしている節があるらしく、絡まれると厄介なのに変わりはない。

よって、今日から強行軍を実行する気でいるらしい。


「……お前らをこんなに厄介だと思う日が来るとは」

「今更だな。ほら、庭貸してもらおうぜ」


俺たちは曾御爺様たちに話をつけるために彼らが今集まっているであろう応接間へと向かったのだった。


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