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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
128/154

2年前期終業パーティ

どたばたが、終わった。


俺たちは前期終業パーティに出席している。

皆適当に飲食、またはおしゃべりに花を咲かせ、俺たちもまた、適当に食事をしていた。


「いやー、前期濃かったな」

「主にお前のせいでな」


アウルムが悪びれずに言うのでそう返してやれば、苦笑を返された。

前世の俺のノリも悪くはなかったが、これからのことを考えていたら自然と少し口調が固くなった。

それと、やたら魔物に懐かれるようになった。


一部の舐めてかかってくる生徒にはもはやアウルムといると託児所扱いを受けるようになったのであえて無表情でそれを受けてやっている。気が付いた時には自分に懐いてない、なんてことが起きるだろうがそんなことは知ったことではない。自分の魔物の管理くらい自分ですればいいのだ。


シオンについてだが、この夏休み中にネイヴァスの本隊へ預けられることになった。

一度だけでも母上の実家に顔を見せないかという話にはなったのだが、本人たっての希望でそれは止めておくことになった。誰にも覚えていてもらえないというのであれば、意味がないと。


まあ、そんなこと宣うシオンちゃんのために今日はカメラを持って来たわけでして。

俺はまあ、遠くから撮ってもらえば俺と一緒に居るシオンが撮れるのではないだろうか。


俺の横ではヴェンとドゥーがブドウをちぎって口に運んでいる。

時折目が合うと俺にもブドウを押し付けてくるので、遠慮なくいただいている。


セトがアルトリアと、カルがロゼとダンスしているのが見える。本当に楽し気で、ロゼにダンスを見ていてほしいと言われたのを思い出して少し口端が上がるのが分かった。


ぼんやりしている間、俺は魔術の訓練をしておく。ハインドフット教授とソニア教授が近くにいたので申請をして、もとの位置に戻り、魔力を行使する。


危なくないものがいいから、水と氷でも使おうかなと考えて、魔力で水を作り出す。

水の球を浮かべてふわふわとヴェンとドゥーの傍に浮遊させれば2人はそれを軽く手で追いかける。


『パパの魔力、綺麗』

『こんなに澄んだ水を作れるなんて、流石ね、愛しい子』


俺の中ではその水の玉、水素と酸素が結び付いた分子の塊なんですがね。

というかそんくらいしか考えていないから、不純物というべきものが少ない真水に近い状態なのだろう。


俺は口に押し付けられたスイカに驚いた。

フォークで差し出されたそれは種もすべて取ってあったので遠慮なく頂く。

そしてフォークを差し出した腕の持ち主を追えば、ナタリアだった。


「ナタリア」

「ロキ君、疲れてるね?」

「ああ……」


俺は小さく息を吐き出した。実は、カメラを完成させるために結構寝不足になっていたりするのである。

後悔はない。


「流石に、教科書でちらと見た程度の知識では際限が難しい。すぐに焼くという工程もあるから余計難しくてな」

「主語が欲しいけど、カメラだね?」

「ああ」


出来たそれをナタリアに見せると、ナタリアはうわ、と小さく声を上げた。


「インスタントじゃないこれ、なんで一眼レフみたいなの作ってるの?」

「いや、なんかそうなった」

「うわ、魔術でこんなの再現するくらいならもっと別の方向に力使った方がいいと思うの私だけ?」

「いや、それを作ると言ったら、訓練にも丁度いいからなあ、などとアウルムが抜かした」


俺は素直に答える。ナタリアが苦笑した。

分かってはいるんだぞ。アウルムも俺のことを考えて言っているのだということくらいは。


それにしても、1つ疑問が残っている。

今の俺は何故半分ほどにまで魔力量が落ちているなんて状態になっているのかということである。


「ナタリア」

「なあに?」

「あなたの考えを聞かせてほしい。なぜ俺は、魔力量が落ち込んでいるのだろうか」


俺の言葉にナタリアは少し息を詰めた。

しばらく考えたナタリアが口を開いた。


「……たぶん、だけど、私たちが最終決戦へ突入するようになる前に、あなたが何かしたのだと思うわ。そしてそれ以降勝てなくなった」

「……それが事実なら、俺がやったのは無駄ってことか」

「分からないの。もしかしたらややこしくなっただけだったのかもしれない。もしかしたら、弱体化させたところで止まってるのかもしれない。――やたら、ロキを絶望へ追い込もうとしている節が見られて、嫌な感じなの」


ナタリアなりの気付きなのだろう。

ナタリアが過ごした世界はどいつもこいつもそんなんばかりだったようである。

俺は水玉を凍らせてナタリアの元へ運んだ。


「あれ、くれるの?」

「ああ。ただの魔力から作った水だ、維持してもらわねばならんが」

「ありがとう」


透明な氷の大きな結晶を作って渡せば、この形よく探してたなあ、黒い手袋つけて、とナタリアが懐かしそうに笑う。


リョウという人物であったことを過去のものとして考えるようになってから、急速にこちらでの生活に現実味が出てきた。


現実を生きている気でも、そう受け取ってないことはあるらしいなと、そんなことを考えた。

今までの俺は、この身体でストーリーを読んでいて、感情移入した、程度のものだったのだろう。おかしな話である。


ダンスを終えたロゼたちがこちらへ寄ってくる。俺も公爵様の子息である、1曲くらい踊ろうかなと考える。クルミも踊ることにしたらしい、ユリウスのリードと共に中央へ向かう。

俺はナタリアを見た。


「ナタリア嬢、俺と1曲踊っていただけませんか?」

「はい、喜んで」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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