生徒会員と
投稿順間違えた―
ということで割込みです
「あんなことがあった後なのに都合がいいのは分かってるけど、お願いできないかな?」
俺の目の前には、うっすい水色の髪に淡紅色のメッシュという特徴的な髪をした先輩がいらっしゃっている。
この先輩、ツァル家の御方なのだが、長男の方。イーグルヴェット・ツァルという人である。
俺に頭を下げているが、この人は俺を生徒会へ引っ張り込みたいようである。
それを、俺と同級生だった弟の先走りによってぶっ壊された形になったようだ。
いや、なんせ悪評高き“ホークジェガ”の兄貴である。火消が大変なのは分かる。
ちなみにジェガは、姉上ですら俺に警告を発してきたような人間である。
姉上の警告は警告ではなくて、叩き潰せというものだったが。
姉上は何度も挑まれて返り討ちにしていたようである。俺も同じことせにゃならんのだろうか。
それにしても、ソルたちが生徒会を蹴っているのに俺が入る意味はない。
俺は丁寧に断ったのだが、なぜか今もここにいらっしゃるのである。
もはや体裁もプライドもかなぐり捨ててここにいるということであろうか。
「……先輩。俺は生徒会へ入ってもメリットがないんです。はっきり申し上げておきますと、できれば魔物の傍から離れたくないのです。すぐにでも駆けつけられる状況を作りたいというのが本音です。二度とあんな思いは御免ですので」
はっきりと断っておくことにする。だってこうしなければ彼は帰りづらい。
それでも食い下がって来るなら、理由を聞いてみようか。
「……そう、だよね……うん。ごめんね、無茶言ってしまって」
「……いえ、分かっていただければ」
お、引いてくれたな。
本心だったし罪悪感を抱く必要はないんだが、なんだかなあ。
この先輩の苦労性っぷりは少し見ているだけで伝わってくるのでちょっと同情を禁じえないのである。
「……あの、」
「やめとけロキ、大体テメーに時間なんぞあるもんかよ」
少し手伝うくらいなら、と声を掛けようとしたらアウルムに遮られた。
先輩が驚いたようにアウルムを見た。
「どういうことだい?」
「こいつには時間がないんスよ。元々組んでた予定より先に指示が出たから」
「は、なんだと? 俺は何も聞いてないぞ」
アウルムの言葉に俺が問い返す。
「当然。今朝あった指示だからな」
「すぐに教えろとあれほど言ったのに」
「十分すぐだろ、俺起きて2時間も経ってねーよ」
現在、1コマ目無しなのでそのフリー時間帯なのだが。
こやつは。
「やっぱ小さい時の方が魔力最大容量がでかくなりやすいからってことでな、お前にはとにかく大量の宿題と、ドルバロムとの契約命令が下った」
「はあああああ!?」
あ、アイツ久しぶりにあんなに表情崩したわねとソルが呑気な事言ってる。そんなこと言ってる場合じゃないんだが?
宿題はまだいい。
ドルバロムと契約?
つまりリオと契約しろということである。
ふざけるな。
「ドルバロムだと!? 魔力の最大容量持ってんのがアイツだと言ったのはお前だろう! いきなりすぎる、殺す気か!」
「いや、死なねえよお前もう死ねないから」
「最悪だ!」
死なないから無茶ぶりしてきたってことですか!
なんてこった。
「え、どういう……? なんで闇精霊の名前が出てくるんだい?」
「こいつ今、魔力の総容量を増やさなきゃいけなくってですね。よく伸びる18歳までの間残り4年間、闇精霊の力を借りてぶっ倒れる寸前まで魔術を行使しまくって魔力量を上げようって考えっスよ」
「……」
ちょっと待って、この先輩何か考え始めた!!
結局これ手伝う流れじゃね?
「……繊細な魔力操作を必要とする仕事がいくつかあるんだ。トレーニングの一環でやってくれても構わないよ?」
「ほら見ろやっぱりそういうこと言い出す人だった!」
ちょっと黒いかなと思っていた俺の勘は正しかった!
アウルムは少し悩み、内容を聞いて何か納得していた。
「確かにそれなら……」
「待て、宿題の量も聞いてないのに増やすのは無し! アウルムが鬼畜すぎる!」
「資料これな」
ぽいと投げ渡された紙の資料を受け取って読み流す。
数ページ目繰って手が止まった。
「……アウルムさん」
「どした?」
「イメージ力のトレーニングって、なんぞ……?」
「あー、魔術の威力調整の話じゃね? お前威力でかくなってくるとすぐぶっぱするタイプだろ」
イメージ力のトレーニングの話についてはまあ、ラノベで結構あったから構わない。なんとなく想像はつく。
でも、そのほかの方が面倒そうなんだぞ?
魔力を通して金細工を作れとか、手を使わずに木細工作れとか、宝石細工とか透かし彫りとか、逆に竜巻作ってみろとか無茶ぶり過ぎる。
全部クリアできたらいいらしいが、どういうことよこれ。
「宝石細工があるなら店で売れるし無駄にはならんぞ?」
「ゼロの魔力に合わせて親和性を高めたうえで魔道具の器を作るのもありだな」
俺はできるとは言ってない。
でもこれ、もうやるしかねーんだな。
先輩は俺には事務処理を手伝ってほしいのが分かっていたが、あえて作業の方を受けることとなった。それに合わせてソルたちも首を突っ込んできたので、向こうとしてはそこそこの結果は出せたってことになるだろう。
ただし、生徒会には例え推薦されようと入らないと決めていたソルとクルミが先輩をこっぴどくフっていたので、何とも言えない気分になった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。