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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
113/154

夏のある日のこと

「今年の合宿は“フェゾレの森”で3日間、ポイント制となりました」


レスターの説明を受けながら俺たちは顔を見合わせた。

連絡のためにレスターがやって来たのは分かったのだが、そして伝えてきた内容がこれである。


合宿。中等部2年で1回、3年で2回あるポイント稼ぎの伝統行事である。

戦闘訓練等の結果を出す場でもある。

ちなみに言ってしまうと、班を組んで行動することになる。その班でのポイントが最終的に成績に反映される。


俺みたいなマルチタイプから、エリスのようなヒーラー系、ソルのような攻撃系と様々に分かれる中、バランスよく6人でパーティを組まねばならない。


俺が引く手あまたになるのは確定だ。

でも、ゼロとアウルムは確定でついてくるので、残り3人。

女子と組むと面倒だが、俺はとりあえずカルについた方がいいと思っている。


だって、ロゼは女の子だし。

となると、もう1人か。セトもついてくるだろうからな。


「今のうちにしっかり班を決めておいてくださいね」


レスターはそう言って姿を消した。

生徒達はわっと話し出す。


「どうしよう、よりにもよってフェゾレの森だなんて」

「あそこ魔物多いんだろ? ヤバくないか」

「浅いとこまでのはずだからいけるんじゃないでしょうか?」


口々に皆不安を語るが、俺はまっすぐカルのところへ歩いていた。

セトとロゼがこちらに気付いた。


「ロキ」

「カル、セト、ロゼ嬢。どうするかの方針は決まったか?」

「決まったぞ」


カルは基本的にすぐにこの班決めの時点でロゼを外したはずである。

まあ、俺をどう扱うかで大分違う。

本人に聞くのが一番だろう。


「カルの方針は?」

「最低限、お前とセトで固める。ラスト1人は、俺の従者の中から選ぼうと思うが」

「あら、私は外すのね」

「女性陣は女性陣で組んだ方がやりやすい。それと、ロゼはナタリア嬢と組んでほしい」

「分かりましたわ」


ロゼは一礼するとナタリアたちの方へ向かった。

俺がカルの傍に来たから皆こっちを見るだけだが、こうじゃなかったら俺引っ張られてたんだろうなあ。


セトは完全に戦力だな。俺もだがある程度の範囲はサーチできる。

解析よりも戦闘に力を入れていることを考えると。


「やはり情報を集められる奴がいいかもしれんな」

「だな。ならついてくるのはセスになる」


セスは魔物学を一緒に取っていた奴でもある。ちなみにケットシー。

髪は緑だが黄色のメッシュが入っている。瞳も緑なので典型的な風属性タイプだ。

この黄色については、おそらく他国の光属性持ちの血統にメッシュのやつがいたのでその為に出たのではないかとのこと。


――この世界のメッシュは染めないんだぜ。


「構わん」

「魔物を連れて行けるかってのも聞いてみるか?」

「いいなそれ」


フェンでも連れて行くとするかな。スーは森ではうまく走れないからな。

ナイト?

あんなバケモノは連れて行かない。

甘えてくるのはいいがいい加減体長が70メートルを超えた。

シオンからもなんでそんな大きくなってんのって言われる始末だぞ!


「にしても、暑いな」

「ああ、暑いな」

「アレクセイのフロストドレイクのとこにでも行くか」

「極寒だけどな」


魔物学発展を取っている生徒達で声を掛け合って皆で魔物宿舎へ向かうことになった。





魔物宿舎に来ると、冷気が溢れていた。

そしてこれは。


アレクセイがわたわたしているのが見える。


「えっと……【(クール)】」


とりあえず周辺の気温を下げるためにサファイアをばらまいた。水の魔力がこもっているので。

なんで俺以外水使える強い奴がここにアレクセイしかいないの?

トールはどこだ!


「【衝撃(クラッシュ)】」


空気中の冷やした水を一気に氷結させていく。よくわからんが、これを一体化した魔術は現在開発中です。

この程度ではフロストドレイクの手助けにもならんかもしれんな。


「あっ、ロキ、ありがとう」

「アレクセイ、言ってくれれば手伝うのに」

「あはは……」


近付いて行けば周囲を凍らせたのが俺だと理解したアレクセイが口を開いた。苦笑するその視線の先には、暑さにやられてだれてしまったフロストドレイクがいた。


「なんでこうなってるんだ? ここの結界は完璧だったのに」

「よくわからないんだが、そこの角のサファイアが割れていたんだ。たぶんそれで解けてしまったんだろう」

「はァ!?」


声を上げたのは俺ではなくアウルム。

そりゃそうである、俺だって驚愕に目を見開いた。


「サファイアの生成した石だぞ!? 黒髪のメタリカの石がそう簡単に割られてたまるか!」


メタリカ族というのは、黒い髪ほど力が強い。トパーズ以外は黒髪だが、そういう理由があったらしい。

ちなみに、アストは関係ない。生成能力高いものが黒い髪を持つだけだそうで、加工技術をメインに据えているアストにとっては髪の色は関係ないのだとか。


アウルムが割られたというサファイアをじっくり観察する。

俺も割れたサファイアを解析魔術で見てみた。


「……おいまさか、」

「やられたな」


俺とアウルムは顔を見合わせる。


「どうした?」


カルが尋ねてくる。

俺はゼロを見やった。


「ゼロ、ここに残れ。風属性持ちは先に魔物宿舎へ。カルは校舎へ戻れ。鼠が入り込んでやがる」

「ッ!」


皆に緊張が走った。風属性持ちは速度が速いので先に行かせた。カルは万が一のために校舎へ戻す。


「ロゼ、頼めるか」

「ええ」

「俺は魔物たちを見てくる。そっちは頼んだ」


俺はすぐに魔物宿舎へ走り出す。無論そのまま走っていくわけがない。


「アウルム」

「ん」

「「【転移(テレポート)】、コンゴウ」」


そのまま俺たちは転移して魔物宿舎の前へ降り立った。


この時まだ俺たちは、相手を“人間だ”と、そう思っていたのである。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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