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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
110/154

魔物バトル

学園所有の浮島、そこの1つに闘技場がある。

生徒は皆ここへは教員の許可が無ければ入ることができない。

俺たちは魔物たちを伴ってそこに踏み入った。


一番最初に感じたのは、風。

次に、アウルムがふらついた。

ルビーたちもへたり込んだのを感じる。

浮島は、大地の精霊に区分される彼らにとっては、根元を切られたようなものなのだろう。


「【魔力経路再構築(リ・コネクト)】、紅玉、藍玉、翠玉、黄玉、金剛石、黄金」


全員に俺から魔力を直接渡す形にしてやる。アウルムが復活した。


「だー、怠い!」

「お前でそれならルビーたちは相当きつかっただろうな。後で魔石作るか……」

「そんな高度なことやらかすの、君くらいだよ?」


アレクセイが苦笑を浮かべている。

闘技場の中で俺たちはそれぞれ適当に席に座り、魔物たち同士で向かい合うのを眺める。

俺の対戦相手はクルミのラドンだ。


「魔物というのは、基本的に主の意を汲んで行動しますからね。じゃあ、頑張ってみてください」


特にハインドフット教授が何かを言うことはないらしい。

一番手はセトとアレクセイだった。無茶であると言っておこう。

ナイトメアドラゴンは身体が小さい。四足歩行タイプではないので速度もあまり出ないし。

たいしてフロストドレイク、でかいのである。


が、フロストドレイクよりもナイトメアドラゴンの方が硬い。これは、ナイトメアドラゴンが鋼竜に属していることからうかがえる。

だが、鋼竜にはブレスがない。

凍り付かされてしまえば鋼竜になす術などない。


案の定、開始早々フロストブレスとかいうブレスで氷漬けにされて敗北していた。


「なんというか、セトは今のせめて撥ね返せばよかったんじゃ」

「行ってやるな、そこまでの魔力アイツにはねえよ」


ソルの言葉に俺は苦笑を返した。





順当に進んでいき、俺とクルミの番になる。


「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


お互いに闘技場の中心部に下りて来て礼をする。

こっちはフェン、向こうはラドンで戦う。

理由など簡単である。

ナイトは圧倒的にラドンよりも上の存在である。

でなければ、リオの下位互換種なんて言葉は出てこない。


つまり、ナイトは恐らくこの場において最強と言っていい。

そんなやつわざわざ使ってやるわけがない。

あいつはのびのびとお散歩という名の蛇行をやってりゃいいのである。


「行くぞ、フェン」

「ヴォウ!」


「行きましょう、ラドン!」

「「「シャアアッ」」」


始め、というレスターの声と共に俺のクルミは互いの魔物への魔法攻撃を加える。


「【石の(ストンレイン)】!」

「【火矢(ファイアアロー)】!」


お互い手数の多い魔術をぶつける。フェンは毛先一本一本へ魔力を通し、毛皮で鎧を構成する。

ラドンは回避を行う。


「あっ、ラドン、ダメ! 【岩の(ウォール)】、【鋼の(スチールコート)】!」

「フェン、突っ込め! 【鉄の(アイアンコート)】!」


俺が今使える土の補助魔術は最高が(アイアン)。もちろんこの上が(スチール)で、さらに上に行くと銅、銀、金、白金、ミスリルとなっていく。


回避したラドンの頭のいくつかが火矢に当たる。

熱と貫かれた痛みにラドンが毒霧を吐いた。防衛本能なんだよな、アレ。


「【毒無効(アンチ)】」


ブレイクと同じで相手の何かをとっさに解除するときには俺は一単語で終わるようにしている。麻痺やら低速化やらへの解除魔術もアンチの一言である。

これがないとラドンの毒の息なんて皆を一瞬で殺すので。


ただ、クルミのラドンはそこまで個体としては強くなく、毒を吐く首は中央の付近の14頭だけである。そいつらを叩けば問題はないし、そいつらの首に毒を無効化するコードを張り付けてやれば問題ない。


が、これは魔物を殺すものではなく、魔物を使って戦うだけである。

つまり。


「王手」

「あー……」


俺がクルミの首に手を当てる。


「負けました」

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」


皆は魔物同士の決着がついていたが、俺たちはそんな甘いことはしない。


「ラドン、戻っておいで」

「フェン、よくやった」


フェンはひたすら俺に向かってラドンが進むことができないようにするためにずっと陣取ってくれていた。あの小さな身体でだ。

駆け寄ってきたフェンを抱きしめてやると擦り寄ってくる。ふわふわの毛並みを撫でれば心地よさそうに目を細めた。


「ラドン、数が多いものは防御したほうがいいって言ったでしょ?」

「あと、傷付いて毒霧吐くのもやめろ。その14頭切り落とされて終わるぞお前」

「「「( ;∀;)」」」

「あー泣いちゃった」

「何泣いてんだよ男のくせに」


このラドンは雄である。エリオ殿下のライとは違うのである。

ラドン、一応雄雌あるんだよな。


皆で俺に絡みついてきたので撫でてやる。

アウルムと俺に絡んでくる魔物を比較して気付いたが、どうやら、年若く幼い魔物――卵から孵ったばかりで、右も左も分からない幼子。それが懐くのが、アウルムだ。


一方俺に構ってくれと絡んでくるのは、ある程度育った個体。

大体1ヶ月ほど経つとアウルムを離れて俺の方へやってくる。特に多頭系はその傾向が強いが、レスターの言っていた通りなのだろう。


彼らは総じて戦いたがり、好戦的なのだ。

どうしてかはわからないが、卵が小さかったために親からも捨てられるような子たちである。おそらく、俺の魔力に中てられてその流れに任せて暴れている感じだろう。


俺ってそんなに好戦的だろうか?

ちょっとその評価はいただけないが――いや、フォンブラウの血か。スカジ姉上を考えると俺も十分脳筋ですからね。


「今ので勝敗決まるんですか?」


1年生の質問にハインドフット教授が答える。


「ああ、今のは随分と綺麗に決まっていたねえ。そもそも魔物使い同士の戦いというのは、魔物がやられても負けだけれど、魔物使い本人がやられたら完全敗北、すなわち死を指してしまうからね。だから、クルミ君とロキ君がやったように、主人を倒すのが普通だ。例えば、こうだ」


ハインドフット教授が軽く手を振った。俺はとっさにクルミを突き飛ばした。


「【鋼の(スチールコート)】!」


クルミが俺に防御底上げを掛け、俺は崩しかけた体勢を立て直す。とっさに腕をクロスさせて身を守ったが、何本か刺さった。


俺は刺さったものを注意して見る。

ハインドフット教授は、植物を扱ったようである。

この野郎。


禿げてるからって酷いぜ!

まあ、目は緑なので風と見間違いかねなかったんだが。


「無詠唱ですよね今の、刺さりましたけど」

「あちゃー。うん、だって君が庇うとは思ってなかったんだもの」


土属性を持っていると元々防御力が高い状態になるので、それを考えると俺はクルミよりは柔らかいのだろう。

ごめんね、と言いつつ木片を魔力に還して消し去ってくれるハインドフット教授。


『貴様』

「ああ、フェン、やめろ。いいから」

『しかし』


フェンが唸り始めたので制しておく。

俺が自分で治そうとすると、ルナが駆け寄ってきて、俺の傷を光属性で治してくれた。


「ありがとう」

「いいのよ。それに、たまにはこうやって練習しなくちゃ」


ハインドフット教授はカルに詰め寄られていた。

さっきのはおそらく、ラドンが反応しきれないのを見越しての攻撃だったのだろう。それに俺が反応して怪我をした。それだけだ。


「ごめんねえ」

「いえ、俺も何も考えずに動いたので」


もっと肌に魔力を流しておけば今の木片たちは刺さることはなかっただろう。

そんな反省をしつつ、ハインドフット教授の言葉を聞いていた。



もう一話いきます。

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