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Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
105/154

箱庭の工房

「よっしゃああああああ!!!」


俺は1人、成功の喜びを全身で表現して思いっきり飛び跳ねてみた。

ガキっぽい?

まだ14歳ですが何か。


「どうしたの、ロキ?」

「箱庭できた!」


ヘリオドールの日、俺たちはそれぞれジグソーパズルの中でゴロゴロしていた。

俺は結局あきらめきれずに工房を持ち運びする方法を探していたわけだが。


空間魔法が使えるんだから、ということでいろいろと試していたらできました。

三角または四角の形にアイテムを配置することで、簡易ゲートを作り、そこから魔物を呼べるという状態を作ってみた。お試しは一番身体の小さなフェンにやってもらった。

現在、学園にいるはずのフェンが俺の足に擦り寄っている。


「なんでフェンがここにいるの?」

「今呼んだ」

「あ、その四角で呼んだの?」

「ああ」


フェンの近くには、青い石が4つ置いてある。


「これが簡易ゲートなわけね」

「これならクルミも使えるだろ」

「あ、私のためだったんだ」

「いつまでもアイテムポーチじゃな。アイテムボックスがない分クルミは物の持ち運びが大変だろ?」

「うん」


ちなみにこの石自体は魔道具に該当する。サファイアが多くなり過ぎたので作ってみたのである。ルビーとエメラルドとアウルムにことごとくやられているサファイアを見ていると苦笑しか浮かばない。


「術式は?」

「主の声でコールだ」

「これそのまま使える?」

「ああ」


クルミはラドンだったな。アイツにもちゃんと対になる方はつけてきたので問題ない。

俺とソルはそっと下がってクルミの術式の発動を見守る。


俺は漢字で意味を考え、音を既存のものと同じにしている。

魔術というのは具体的なイメージも大事だが、自分にとって理解しやすい文字体系があるならばそちらを使った方が発動しやすい。これはゼロが教えてくれたもので、俺たちと同じ感じの文字体系を持っていたイミットには理解しやすいものとなっているだろう。ちなみに、漢字は同じでも、彼らはどちらかというと中国っぽい文字の扱い方をしている。

絶対そのせいで魔術使いにくくなってるからな、あいつら。


「【主の(コール)】」


辺りが淡い光に包まれ、サファイアが強く輝いた。

四角に並べられたサファイアからそれぞれ光が伸び、光で四角が出来上がる。そして一瞬でそこが光る面に変わった。


「シャアアア!」


小さな唸り声と共に、ラドンが飛び出してきた。

うむ、成功だ。

ラドンの中央の首にはクルミをイメージしたスモーキークォーツのブレスレットがはまっている。


「わぁ!」

「すごいわね」

「今は魔物たちにマークをつけてるが、そのうち連れ歩けないが連れ歩きたい、なんて状態にもなるかもしれないだろ? 今はまだできねーけど、箱型の方もクルミに使えるようにするから」

「ありがとう」


クルミは空間属性の適性がない。

なので、魔道具という形で提供するしかない。アイテムポーチよりも、内部を空間魔法で加工したほうがクルミにとっての安全地帯にもなっていいと思ったのだ。


対策まで一緒に作ってしまうのが俺流なのでクルミにはこの術式の補助を刻んだブレスレットを見せる。


「それは?」

「これが【主の(コール)】の補助コード。いちいち設置なんかしてらんねーからな、これに魔力を流して簡易ゲートを作れる。【主の(コール)】!」


足元にいたフェンは俺が宙に描いた円からポンと出てきた。


「そっちの方が簡単じゃない?」

「俺らには、な。空間属性の適性がない人間用の補助だから、クルミには結構負担かかるはずだ」

「あ、そうなんだ」

「元々これの元として考えてた方はドラゴンの角だの骨だのとデルちゃんたちが言ってたからな。相当量の魔力を消費するはずなんだ」


デルちゃんたちのあの発言は今でも覚えている。

今でもドラゴンとか無理ですよ?

会いはしたけどさ。


「これを考えると、魔道具も高いって言えなくなるわね」

「しかも魔力を流し過ぎりゃ壊れちまうしな」


俺が魔力操作の練習石を砂に変えたのと同じである。

魔道具は元々魔術を使えないほど魔力が弱い人間のために作られた物である。それが、一般に普及していない程度のものでは高額になるのも当然だし、必要だとされている物だって、ドラゴンの素材やミスリルなんぞを使えば馬鹿みたいに高くなってしまう。


今回のはメタリカ製のミスリルとサファイアを使っているので、原価自体を考えると小金貨5枚は下らない。俺の場合はほぼ食費分で補えるけどな。


「ぎゃああああ!?」

「!?」


考え事をしていたらセトの悲鳴が聞こえた。

俺たちは顔を見合わせ、どうした、とセトの方を見に行った。


「どうした、セト?」

「ロキ! ちょ、これ見てくれ!」


セトは包みを前にしていた。何だよと思って覗き込んだら、ドラゴンの角がそこに鎮座していた。


「……は?」

「メッセージカード付きだよ、これ」


クルミからメッセージカードを受け取り、目を通す。


『ジグソーパズル

 ちっちぇドラゴンを倒した報酬に角を貰ったので送る。それ、サンドドラゴンな。 ルガル』


「……ルガルヤバいな。流石Aランク」

「これ何竜?」

「地竜」

「へー」


土竜じゃないんです。


あれ、とりあえず……箱作れるくね?

うんうん、やってみよう。


「これ使っていいか」

「ああ、別に俺に送られてきたもんじゃねえし」

「箱庭を作るのね?」

「ああ」

「手伝うわよ」

「ありがとう」


俺はサンドドラゴンの角を受け取ってソルと一緒に奥の部屋に再び籠った。


この日の夕食頃には完成したので一旦俺が預かって後日お披露目することになった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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