表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Imitation  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年生 前期編
100/154

魔物と卵

俺がレスターを捕まえたのは、魔物学発展の時間だった。

というか、ようやく顔出したって感じである。

オイコラ、前期もう半分終わってんぞコラ。


「レスター教授、申し開きは」

「……(-_-;)」

「授業に出てこないなあと思っていたら、毒竜の卵なんて貰ってきて、何考えてるんですか!! この研究者脳がああああ!!」


俺は思いっきり怒鳴りつけていた。皆の目の前で。

公開処刑?

知らんがな。


皆がレスターに、非常に呆れたような視線を向けている。


「毒竜が魔物だからって楽観視するなと、あれほど、俺は言いました! なんでそのまま手元で育ててんだてめえそこに直れ突き刺してやる、ハインドフット教授、武器の使用許可をください」

「あっはっはっは、そこまでしなくていいよ、大丈夫。毒竜がどの段階で強力な毒をもつようになるのかを調べるために、陛下からちゃんと許可は貰ってるからね」


およそ中学生の言動ではない行為をしでかした自覚はあるが、でも普通の反応だと言いたい。


毒竜。

鋼竜、と、金属名を冠されたドラゴンがピンからキリまで所属しているグループ名だが、毒竜もそれと同じだ。


ポイズンドラゴンとわかりやすい名前のやつからファブニルなんつー名前だけじゃ何使うのかよくわからないヤツ、はたまたドラゴンゾンビまで所属している。


ドラゴンゾンビはネクロマンシー使わないとならないからいいけど、他のは鱗に触れただけで麻痺するとかそんな馬鹿みたいに強力なのだっているんだぞ、ジャバウォックとか。

もうちょっと生徒のことを考えてほしい。

卵持ち歩くなっつー話である。


特に、アウルムがいるところでは。


「ここにはアウルムがいるんですよ。親の形そのままで孵しちゃうやつが。生まれたときからファーブニルみたいな凶暴な種だったらどうするんですか!」

「ご、ごめん……」


元々専門が錬金術であるとはいえ、毒竜の卵なんぞもらってくるなという話だ。

しかもこれが原因で四半期の授業に出てない。教員なのに。


「この学園の教員の給料がどこから出てるとッ……」

「国庫です……」

「店もできたからなぁ、研究結果たっぷり見せてもらおうじゃねぇの?」


相当ロキ怒ってるわね、というソルの声が聞こえた。

仕方ないでしょ。


「授業開始時間を遅らせてしまい申し訳ありません」


皆に向き直って頭を下げると、ハインドフット教授が俺の頭を撫でてきた。


「まあ、毒竜に対してはそれだけ警戒するのが当然だからねえ。ほら、もういいよ、席に戻りなさい」

「……ありがとうございます」


俺は席に戻る。ハインドフット教授は教室を見渡して口元をほころばせる。


「気を取り直していきましょうか。まずは、生まれてきた魔物たちについて、少しずつ知っていきましょう」


今期はケットシーが2匹、コボルトが3匹、アルミラージが3匹、レッサースパイダーが1匹、ゴブリン2匹、ワイバーン1匹に青毛鳥1匹のメンツ。これに加えてアウルムと俺の魔物もいる。何故か生まれなかった、と泣いている子もいた。


「この卵は……」

「……」


抱えてみてすぐに分かった。この卵は死んでいる。運ぶのを手伝った時はまだ生きていたのを確認しているから、この3ヶ月のどこかで死んでしまったのだろう。


「卵って、死んじゃうんですね」

「むしろ死ぬことの方が多いんですよ。特に、学校で扱っている卵はとても小さい。本当は1キロ以上の重さはありますからね。皆が手に取った300グラムもない卵というのは、自然界では絶対に生まれることのない、弱者なんです」


ハインドフット教授はそう言って、その卵をそっとコンゴウの前に置く。コンゴウの行動など決まりきっている。

だから、やらせちゃいけない。


「流石にそれはきついですよ、教授」

「だってこの子いつも卵割りに来るじゃない?」

「アウルムの前では特にやらせないでください」


ちなみに、この卵。

放置すると卵型の魔物になる。だから魔物はこいつを見つけると確実に殺すために卵を踏みつぶしてしまう。


「俺がやります」

「火は出せるのかい?」

「はい」


火と水のフォンブラウを嘗めてもらっては困る。

俺は青い炎を作り上げ、卵を消し炭にした。


「!?」

「魔物の孵らなかった卵は、卵型の魔物になってしまうんですよ。だから、見つけると魔物は割ろうとします」


卵だった炭をごみ箱に捨てた俺にフェンが擦り寄ってくる。

白銀のフェンリルだ。

黒いフェンリルはロキのフェンリルだ。名は、フェイ。


「今期の変わり種は青毛鳥ですね。何になるのかな」


楽しそうにハインドフット教授は皆を見てから、俺の方へやってきた。

見ているのは俺の膝で落ち着いている白銀のフェンリルである。


「また、君は毎回とんでもないものばかり孵すね。今度はフェンリルかい」

「言い訳のしようもありません」

「ちなみに白い毛のフェンリルは光属性です。破壊特化の」

「……ラスボスですか?」


勇者の攻撃効かないぜひゃっふー。


今期はゴブリンがいるから後期組が大変だねえと言いつつハインドフット教授の授業が始まったのだった。


こちらのブクマが増えていてうれしいのにこちらを書かねばならないような気がしてくる件。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ