第1章 1話
うん。思い出した。
勢いに任せてやってみろなんていうからこうなったのか。ミラの失敗なのか、それとも普通に発動してこうなったか気になるな。
とりあえずはこの部屋から出てみるか。
体が小さくなったからドアを開けるのも一苦労だな。
廊下に出たが他にも扉が三つほどある。この家には部屋が四つ以上あることになる。一つは先程の部屋、残りの三つも確かめるとするか。
すぐ近くの扉を開けてみる。
俺のいた部屋と同じような家具があった。だが問題はそこではない。さっき俺が眠っていたベッドと同じものに誰かが眠っているのだ。
見た感じだが、いまの俺と同じぐらいの年齢に見える。ただ俺と違い髪の長さから女の子だと思われる。
ぐっすり眠っているようだし他の部屋の確認をしたら戻ってこよう。
残りの二つの部屋を確認したら一つはリビングと台所のある部屋で台所は水道は流石になかったが野菜などが並べられていた。ただし俺のいまの身長だと料理は一苦労だろう。リビングはテーブルと椅子と小さな暖炉があるだけだ。そして残りの部屋はなんと風呂場とトイレだった。ここには脱衣所に扉が二つあり一つは風呂場への扉でもう一つはトイレの扉だった。
なにより不思議なのは水洗である事と風呂場が大浴場とまで言えないものの、普通の家のお風呂の倍は見受けられる大きさのお風呂なのだ。
ここが何処なのか不明だが住むのには身長さえあれば不自由は無いだろう。まぁ身長がないのだが。
とりあえず一通り家を見たが変なところは無いようだ。外も探索したいが、家より外は危険だろう。外は森もあり場所も不確かなのだ、外にでて行きなり動物に襲われたらこの体ではどうしょうもない。
なので先程の女の子が眠っていた部屋へ行き起こしていろいろ聞いて見なくては。
女の子の部屋へ戻って来たが先程と変わらず眠っていた。このまま起きるまで待つのはしゃくなので起こす。
「おい。おきろ。早く起きてここの説明をしろ」
すこし乱暴に言ってしまった。起こそうと思ったら回想の時の幼女だったのだ。髪は俺と同じく灰色になっていたが顔つきはそのままで年齢も三歳ぐらいだと思う。
「あと五分だけー。五分だけでいいからぁー」
「ダメだ。早く起きろ」
布団を奪い取られ眠そうな眼をこすりながら体を起こして来た。服装は回想の時の動物パジャマのままである。俺は無地の灰色のパジャマだが。
「んー、あれ?ここ何処?あっ!変態さんだ!」
「変態じゃねぇ!灰伸だ!というか俺だってわかるのかよ?見た目すごく変わったはずだぞ?」
「しゅ、しゅみません!変態さん。」
「だから変態じゃ……じゃなくて、なんで俺だってわかったんだ?」
「え?だってほとんど変わらないでしょ?変わったのは見た目だけなんだから?」
「見た目が変わったらわからねーぞ!……それより、この状況がなんだか分かるか?」
「えーっと。多分だけどね、黒い本の魔法が発動したからこうなったんだろ思う!」
この幼女の失敗なのか……でも発動はしたとか言ってるからうまく発動したからこうなったのか?
「なら、俺が小さくなった理由は分かるか?」
「これも多分だけど、わたしが発動したのに巻き込まれたハイシンがわたしの年齢に影響されたんだと思う!」
「お前のせいかよ……」
「む、お前じゃない!ミラ!」
「はいはい、ミラの影響ねぇ……」
「しゅみません……」
どうしてこうなったかは大体想像ついたな。あの本が魔法の本でその本を発動させて不思議な場所に飛ばされて、さらにはミラの影響で小さくなったと。ダメっ子ミラのせいだけでは無いか……
「まぁ、気に病むな。発動していいと言ったのは俺だからミラのせいではないから。逆に俺があの本を持ってきたからミラも飛ばされたんだしな」
「ありがとうハイシン。でもここ何処なんだろ?」
「ミラはダメっ子だけど女神様なんだろ?場所ぐらいわからないのか?」
「ダメっ子じゃないもん!んー、女神の力がなくなってる?」
「ということは、場所もわからないし戻れないのか!?」
女神のミラが居たから戻れると思ったんだが。覚悟はしてたからそこまで慌てずに済んだな。
それとミラも女神だとしても力もなくなったらしいから俺よりも思うところはあるかもしれないから怒れない。
「ごめんね、どんな魔法陣かわからないのに発動させたから……」
「だからいいって、魔法なんてわからないし頼んだのは俺だ。とりあえずは今の現状を確認しないとな」
そう、神様の力が使えないとなるとこの現状を確認するにはいろいろしなくてはならないだろう。まずはこの世界が何処なのか。
地球の可能性も捨てきれはしないが可能性は低いだろう。様々な本を読んできたがこのような展開で地球な訳がないのだ。
状況から察するに異世界に飛ばされたとは推測できる。勘に過ぎないのだが。
だとしても確かめないといけないのだが、この体だと何かあった時にどうしようも無くなってしまう。
そんなこと言っても仕方あるまい。とりあえずは周りを確かめに行かなくてはならない。
あとはミラを連れて行くかだ。
信用は出来そうだがダメっ子なのが厳しい。何かに出くわした時に絶対対処できないだろうし。
起こしたがもう少し寝ててもらおう。
「ミラ、俺はすこし周りを確かめてくるからここでもう少し寝ててくれない?」
「ん!わかった!たくさんねるね!」
「お、おう。任せた」
たくさんは寝なくてはいいのだが……
とりあえずは、外にでて周りを確認してくるか。畑と森があることしかわからないがここが他に人がいたら助かるな……
扉を開けたらそこは小さな村のようだ。
このログハウスもどきは村の外れの方の家らしい。すこし遠くの方では剣を持った二人組が会話をしている。
他の家もこの家と同じログハウスもどきであり、ここからではすこししか前ないが村の真ん中だと思われるところに他とは違う大きめのログハウスもどきがある。あまり見えないが集会所か村長の家だろう。
とりあえずは、会話している二人組に話しかけてみるとするか。