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夏生詩集2

あなたがまだこの世界に

作者: 夏生

あなたがまだこの世界にいてくれて

よかった

余命を告げられた彼女と通信途絶えて

三日後、返信遅れてごめんなさい、と

彼女からのメールに心からほっとして

何度もとちりながら言葉を打って

返信した


あなたがまだこの世界にいてくれて

よかった


同じ言葉を学生時代、ある友人に

向けて言った


死にたい、と私に電話してきて

プツリと切れた

受話器をなげだして、友人のもとへ

無我夢中で駆け出した

靴を履いていなかった


友人は灰色のロープを持ったまま、

泣いていた


悔しい悔しいと泣いていた

真っ赤な文字の友人への罵詈雑言書かれた

ノート

浜辺で燃やした

暗い海は怖くなかった


赤い文字がこちらを見ながら

「死ねばいいのに」


焔にひしゃげながら

笑っていた


「それはお前だろ!」

私は灰になった赤い文字を

踏みつけた


友人の手を強く握りながら

下手な青春ドラマのような

ばかに明るい朝日を眺めた



冷たかった友人の手

今はどうしているだろう


もし、再会できたら

あなたがまだこの世界にいてくれて

よかった、と言ってしまうような

気がした









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