第七八話
「鬼炎斬」
迦楼羅丸が炎の刀を生み出す。
秋ちゃんが手を合わせ、左手から刀を引き抜いた。
「錬成」
天景さんは落ちていた柄杓を拾う。
すると柄杓はその姿を木製の銃へと変えた。
「天景さんすごぉい」
「天景でいいよ。さん付けは気持ち悪い」
「どうやったのでござるか?」
「異国の『錬金術』とか言うのを真似ただけだ」
「なるほど。それはよい事を聞いた」
そういうと宿祢は錫杖を両手で持ち、目を閉じた。
「武装錬成・蛟」
錫杖に、水で出来た蛇のようなものが纏わりつく。
この技って確か…。
「あー!ずるいっ。わたしまだ必殺技の名前考え中なのに」
「この勝負、拙者の勝ちでござるな」
宿祢は勝ち誇ったような顔をしている。
わたしだってすぐにカッコイイ名前付けちゃうんだから。
「いつから勝負になっていたのよ。構えて冬、くるわよ」
お姉さんの言葉に、わたしは弓を出した。
前方から襲い掛かってくる悪霊を秋ちゃんと迦楼羅丸が蹴散らす。
二人を先頭にわたし達は本体の元へと走り出した。
後ろを追ってくる悪霊は宿祢と天景が牽制する。
走りながら、今がどういう状況なのかをお姉さんが簡潔に説明してくれた。
「愉比拿蛇の体は四百年前に滅んでいるの。迦楼羅と相討ち、という形でね」
「でも、愉比拿蛇はこうしているよ?」
「妖力だけが、暴れまわっているのよ。死して尚、その妖力は里を襲い続けた。だから私は生命力の全てを使って妖力を封じ込めたのよ。引きずられるようにして私の体も一緒に封印されてしまったのだけれど」
「愉比拿蛇の体はどうなったの?」
「さっきも言ったように、迦楼羅と相討ちよ。迦楼羅は岩に封じ込められ、愉比拿蛇の肉体は迦楼羅の業火で塵すら残らずに燃えつくしたわ。迦楼羅は炎獄鬼という種族なの。地獄の炎のようになんでも燃やせるのよ」
「肉体がないのならば、どのようにして討つのでござるか?」
「暴走を止める事が出来れば、浄化も可能よ」
「その為にも、妖力の核へ辿り着かないとね。天景っ」
「おうよっ」
そういうと秋ちゃんと天景が目の前でとうせんぼしていた悪霊を蹴散らした。
「ここは僕達で何とかするから、冬達は先に行って」
「秋ちゃん!」
「大丈夫。すぐに追いつくよ」
「うん、わかった。気を付けてね」
二人を残し、先に進む。
四方八方から襲い掛かる悪霊をなんとか退ける。
「見えたわ、祠よ!」
「行け、紫っ」
「ええ。来て、冬」
「うん」
この先にはいかせない、とでも言いたげな悪霊達を宿祢と迦楼羅丸が蹴散らす。
その隙をついてわたしとお姉さんは祠まで駆け寄った。
壊れてしまった封印の勾玉に手を触れたその時、
「きゃあああ!」
とてつもなく強い光が、わたしの視界を奪った。




