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空の欠片  作者:
16/21

◇修学旅行◇

「修学旅行………」

「えぇ。修学旅行です。今年は長崎です。片桐さんはどうしますか?」

「ふえっ!?」


 いやいや。そんないきなり聞かれても困ります。そういうのはまずお母さんや由里先生たちと相談してから決めなきゃいけないでしょう。

 先生にそのことを伝えると、意外とあっさりとした答えが返ってきた。


「お母さんや病院の先生にはもう話を通してあります。片桐さん、あなたが行きたいのなら行っても構わないそうですよ?ただ、病院の先生が同伴するカタチでならね」


 いつの間に。ていうか、そういう話しがあったのなら私にも教えて欲しかった。いきなり知らされるのはちょっときつい。


「時期は秋ですから、そこまで辛いと言うことは無いと思いますが」

「………少し、考えてみてもいいですか?」

「ええ。ですが、早めにお返事いただけると嬉しいです。班編成の問題などもありますから」

「分かりました」


 そうしている間に玲君が戻ってくる。手にはコーヒーが2本と、ジュースが1本。そして、財布を脇に挟んでいた。


「ほい、琉嘉にはジュース」

「あ、ありがと。玲君」

「姉ちゃんはブラックでよかったんだろ?」

「はい。お疲れ様でした、玲」


 玲君は確認をしながら飲み物を手渡していった。私は貰ったジュースを開けて飲んだ。スッキリする。


「そういえば、玲。レポートは大丈夫ですか?」

「今朝終わらせた。姉ちゃんの手を借りる必要性は皆無だ」

「おやおや。冷たい言い方ですねぇ。そういう男は嫌われますよ。ねぇ、片桐さん?」

「ふぇっ!?」


 先生は玲君を捕獲してレポートの話をする。そういえば、今朝行った時に書いてたっけ。無事に終わったのかぁ。よかった。

 と、思っているといきなり先生に話しを振られた。どう反応すればいいのか分からなくて焦る。


「姉ちゃん!琉嘉を困らせるな」

「玲は本当に片桐さんのことが好きですねぇ」


 先生が言うと、その瞬間、玲君の顔は爆発的に真っ赤に染まる。そんな玲君を、先生は楽しそうな目で見ていた。

 相変わらず先生は玲君をオモチャとして扱っているようだ。


「姉ちゃん!そういうことを琉嘉の前で言うな!」

「どうしてです?玲は友達として片桐さんのことが好きなのでしょう?」

「………っ!!」


 先生が言った途端、玲君の視線が此方から別の場所へ外れる。普通に先生の言ったとおりだろうに、どうしてそんな反応をするのだろうか。

 男の子って謎なことがいっぱいだ。

 先生が来る前のカナイが言った独占欲のことも謎だけど、その玲君の反応も謎。気になるなぁ。


「先生。一つ聞いてもいいですか?」

「どうしました?」


 さっきまで玲君を弄って遊んでいた先生だが、私が声をかけるとすぐに玲君遊びを止め、此方を向く。


「今日カナイが来て玲君に言ってたんですけど、玲君の独占欲って何ですか?」


 私が言うと、先生は意地の悪そうな笑みを浮かべ、玲君を見た。………絶対楽しんでる。

 正反対に、玲君は顔をまた真っ赤にしていた。


「お、俺、病室戻る!じゃな、琉嘉。また明日来るからっ!!」


 玲君は急いで言って、急いで病室を出て行った。………どうしたんだろう。


「玲の行動は気にしなくてもいいですよ。で、独占欲の話しでしたよね」

「あ、はい」

「簡単な話しですよ。玲は今まであまり友達がいませんでしたからね。だから、せっかく出来たお友達の片桐さんを他の人に取られたくないんです」

「どういうことですか?」

「片桐さんと鳳君が仲良く話しているのを見てそんな感情に駆られたんでしょうね。このままだと片桐さんを鳳君に取られてしまうと」


 意味が分からない。どうして、取られると言う話しになるんだ。


「それが人間の感情の面白いところですよ。自分では自覚が無いのにそんな行動をとってしまう。そしてそれを他人に突っ込まれたらイライラするんです。大方、鳳君に突っ込まれたのでしょう?」


 私は静かに頷いた。すると、先生は手を口にあて、笑った。


「で、その独占欲の話しを玲に聞きませんでしたか?片桐さん」

「聞きました」

「やはり。玲はその感情を認めたくないのにその張本人である片桐さんに聞かれて、答えられなかったんです。で、その説明を私が片桐さんにするに於いて、それを聞きたくないから玲は逃げた。そういうことですよ」


 人間の感情って複雑なんだな。私は真剣にそう思った。

 そして、先生は軽く笑いながら私に言った。


「片桐さん。この話し、玲にはしないで上げてくださいね。言ったら多分、また顔を真っ赤にして照れますから」


 よく分からないけど、一応返事をしておく。それが分かるようになるにはどのくらいの時間がかかるだろうか。

 私の返事を確認した先生は、微笑みながら立ち上がった。もう帰るのだろうか。


「さて、玲を捕まえてきましょうか」

「…………」


 遊び足りなかったんですね、先生。でも、今日はもう止めましょう。止めてあげて下さい。玲君の病室に行ったらもれなくカナイというオマケが付いて来かねないから。

 先生にそう言うと、先生はそれなら、とまた椅子に座る。

 そういえば、カナイは修学旅行はどうなるのだろう。


「鳳君は来ますよ。元々、入院といっても短期入院ですから。彼は来月にも退院します」


 ………会いたくないな。でも、クラスが違うなら大丈夫かな。

 先生に聞いてみると「大丈夫です」という言葉が返ってくる。なら、行こうかな。とりあえずお母さんとも相談しなきゃ。

 そうしてしばらくして先生は帰っていった。「また明日も来ます」と言い置いて。

 それから然程経たずに、また病室の扉がノックされる。来たのはお母さんだった。


「調子はどう?熱は下がった?」

「うん。昼に測った時はもう平熱だったよ」

「そう。それはよかったわね」


 お母さんは私と会話をしながら椅子に座る。さて、先生から聞いた話について聞かなくちゃね。


「ねー、お母さん」

「どうしたの?」

「修学旅行って、どうすればいいの?」

「琉嘉が行きたいのなら行けばいいじゃないの。お母さん、先生にはそう言ってるわよ?」


 やっぱり私の判断次第か。実際、どうすればいいのか分からない。行きたいけれど、行った先で何かあったらどうしようかと言う恐怖に襲われる。

 絶対に何も起こらないと言う保障は何処にもないから。

 そうやって悩んでいると、お母さんが私の顔を見て言った。目が、優しい。


「行きたいのなら行っておいで。何か起きたら、なんていう心配はしないで。それに、何かあったときのために、先生も同伴してくださるのよ?だから、大丈夫よ」

「うん……」


 それもそうだよね。なら、行こうかな。修学旅行なんて中学校生活で一度しかないんだから。


「行く………」

「そう。なら、本谷先生に連絡しなきゃね。琉嘉が自分で言う?お母さんが言ったほうがいい?」

「明日も来るって言ってたから自分で言う」


 私が言うと、お母さんはニッコリと微笑んだ。優しげな笑みだった。


 そして翌日、私は先生に修学旅行に行くことを話した。私が行くと言うと、先生はニッコリ笑いながら「加々見が喜ぶでしょう」と言っていた。

 そういえば、よっちゃんにも結構な時間会っていない。会いたいな。


「今度連れてきましょうか?部活も引退していますから、塾以外は恐らく暇でしょうし」

「わーい。お願いします♪」


 そう言って私は先生と約束をする。約束の後は昨日の続き、ノートの説明の時間だ。

 昨日と今日の努力のおかげか、忘れていた分を大分思い出すことが出来た。完全に思い出すまでもう少しだ。

 ちなみに、今日は玲君は来なかった。昨日の今日で、まだ顔を合わせ辛いらしい。

 代わりに、カナイが来た。ド迷惑男、鳳叶。勿論今日も全て無視したが。


「ねー、琉嘉ちゃん。そんな無視しなくてもよくない?先生も何か言ってやってくださーい」

「五月蝿い。迷惑。邪魔。早く帰って。……これでいいの?これで無視してないよ」

「まぁまぁ。片桐さん、そこまで毛嫌いしなくてもいいと思いますよ?」

「だって、さっきから書いてるとしょっちゅう邪魔するんですもん」


 先生までカナイの味方をするか。そう思ってカナイが邪魔をすることを伝えると、途端に先生は私の味方になる。


「鳳君。邪魔はいけませんよ」

「邪魔してませんってぇ」

「邪魔」


 先生の言葉を否定するカナイに、私は即答で肯定する。書いている時に声をかけて間違わせたり、私の手を掴んで書けないようにする事の何処が邪魔じゃないんだ。

 結局、カナイはそれからしばらく私の病室に居座り、途中で飽きたのか、自分の病室へ戻っていった。

 やっと静かになった。やっとのんびりと作業に励める。

 私はのんびりとノートを写し続けた。途中で分からない場所があると先生に質問をし、理解しながら写していった。

 そして、今日も疲れ切った状態で勉強を終了した。


「お疲れ様です。残りはまた明日ですね」

「明日もですか!?」

「ふふ。自業自得ですね」


 明日もこんなに疲れなきゃいけないのか。まぁ、確かに先生の言うとおり自業自得ではあるのだが、辛いな。

 とりあえず、この夏休み中に追いついて、受験に備えなくては。

 

 そうこうしている間に、時は流れる。月が替わり、カナイは退院した。それと同時に、夏休みが終わりを告げた。

 その後もどんどんと時は流れていった。

 そして、あっという間に修学旅行の日となった。


「るーぅちゃーん!!」


 お母さんに送られ、集合場所である学校へ着くと、よっちゃんが手を振りながら大きな声で私を呼ぶ。


「よっちゃん」

「るぅちゃん。良かったね、修学旅行来れて」

「うん。先生からもオッケー出たしね」


 私はそう言ってよっちゃんと喋る。私たちは、喋りながら整列した。

 整列すると、近くには小学校が同じだった友達が集まっていた。


「るぅちゃん久しぶりー。先生に聞いて、会うの楽しみに待ってた」

「ホントだよー。1年のときはクラス違ったから聞いただけだったけど、結構心配したんだよぅ」

「あはははは。心配かけてごめん。みんな、久しぶり」


 そして、先生の話が始まり、私たちは口を噤む。………先生の話は長かった。

 その長い話が終わるとやっと出発だ。だが、私はまずは同伴してくれる由里先生の元へ向かう。来るように言われていたからだ。


「琉嘉ちゃん。調子はどう?」

「良すぎるくらいだよ」


 由里先生は、私の手首を持ち、脈を取りながら私に問うた。


「それはよかった。脈も問題ないみたいだし、バスにそろそろ乗り込もうか」

「はーいっ」


 私は先生に言われてバスへ向かう。バスではもう、他のみんなは乗り込んでいた。


「るぅちゃん!こっちこっち」


 よっちゃんがバスの後ろのほうで手を振る。私の席はよっちゃんの隣のようだ。

 私が席に着くと同時に、バスのエンジンがかかる。私が待たせていたようだ。

 そして発進する前に、本谷先生がマイクを取り、言った。


「さて、今日は待ちに待った修学旅行ですね。入院している片桐さんも揃い、今回はクラス全員でのイベントとなります。みなさん、悔いの残らないよう、精一杯学び、楽しんでください」

『おーっ!』


 みんなの声がバスの中で轟く。………ちょっと怖いぞ。

 そして、バスは出発した。目的地は空港だ。私たちは、飛行機で長崎空港へと向かう予定なのだ。


「片桐さん、大丈夫?」


 バスが発進すると、通路を挟んで横の席に座っていた女子が声をかけてくる。違う小学校から来た子のようで、私の記憶にはいない子だ。


「うん。大丈夫」

「何かあったら言ってね?私、学級委員だしさ」

「分かった。ありがとう。…………えと、名前教えてくれる?」

「そういえば、まだだったよね。私、谷戸高嶺やと たかね。タカでいいよ」


 そうやって私たちが話していると、横から口出しが入る。それはもちろん、よっちゃん。


「委員長でいいよ、委員長で」

「それが嫌だからこう呼んで、っていってるんだろが、馬鹿ヨシ」

「バカヨシって男の名前みたいだから止めてよ」

「なら、委員長って呼ばせないでよ」


 ………私の関係ないところで静かにバトルが始まってるね。うん、止めて欲しいものですね、あっはっは。

 そう思っていると、突如マイクの声が耳を突く。それは、本谷先生の声だった。


「加々見、谷戸。バスの中で喧嘩はしないようにしてくださいね?」


 静かだが、威圧感を感じさせる声だ。聞く人を逆らわせない力を持っている。そんな先生の声に、二人は黙る。

 やっと静かになった。


「他のみなさんも、旅行中に喧嘩などしないでくださいね。その時はお説教の時間が始まりますよ。その場合、連帯責任でみなさん総まとめでお説教ですからね」


 それを聞いたクラスメート全員が一気に静まる。先生、学校でも怖かったのか。浮かべる笑みが怖い。

 でも、そのほうが喧嘩しないで楽しい修学旅行になるかな。

 そしてその後は至って平和にバスは進み、高速に乗って空港へと向かう。その途中、サービスエリアでトイレ休憩を取った。


「るぅちゃん、トイレ行こ」

「うん」


 私はよっちゃんと一緒にバスを降りてトイレへ向かう。次はいつ行けるか分からないから今のうちに行っておくことにしたのだ。

 バスを降りる時に由里先生に軽く手を掴まれる。…………なんだろう。


「琉嘉ちゃん、体調は平気?」

「大丈夫♪」


 なんだ。そのためにわざわざ私の腕を掴んで動きを止めたのか。まだ、何も無い。大丈夫だと言うのに。

 それから少し黙って次の行動を待ってみる。だが、それも無いようなので私はよっちゃんとトイレへ向かった。

 私たちがバスへ戻ると、大体の人が元の席に戻っている。………待たせたのかな。だが、それは違った。私たちよりも遅い人がいた。それは、委員長のタカちゃんだった。


「あれ?もうみんな戻ってた?」

「あなたが最後ですよ、谷戸」

「え…………あー、すみません」

「時間は遅れていませんから大丈夫ですよ。さ、早く席に戻りなさい」


 タカちゃんはそう言われて足早に席に戻ってきた。

 そしてタカちゃんが席に着いたのを確認すると同時にバスが発車する。次に降りるのは空港に着いたときか。

 何か、疲れたな。久しぶりにはしゃいだからかな。すっごい、眠い。


「るぅちゃん、大丈夫?」

「だいじょぶぅー。ちょっと、疲れただけだから」


 私たちがそうやって話していると、そんな私の様子に気が付いたらしい由里先生がバスの揺れに耐えながらゆっくりと此方へやってくる。

 …………大丈夫なのに。


「琉嘉ちゃん、どうしたの?」

「疲れて眠たいだけ。大丈夫だよぅ」

「本当に大丈夫?」

「大丈夫大丈夫」


 由里先生は私の手を取り、脈を取りながら問う。脈を取るなら聞かなくても良くないか。

 ま、いいや。どうせ空港までまだ時間がかかるだろうから、寝よう。

 そう思って目を瞑る。それから寝付くまでにそう時間はかからなかった。気が付いたら空港がもう目の前というところまで来ていた。


「あ、るぅちゃん起きた?もうすぐ空港に着くよ」

「うん。もう見えてるね」


 そうしてバスは駐車場で止まり、私たちもバスから降りる。バスから降りて荷物を受け取った後、クラス単位で空港の中へと移動した。

 空港内に入ると、整列をする。……これは、また長いお話開始フラグですか。

 その通りでした。修学旅行に同伴する教頭が長々と話を始める。寝起きの頭には辛い。また、眠たくなる。でも、起きておかなくちゃ。頑張る。

 それから約30分後、やっと長々とした話しが終わり、チケットが配られる。私の席は、もちろんよっちゃんの隣だ。

 チケットを配られた後、手荷物検査を受け、手続きが始まるまでのんびりと待機する。その待機する私の両隣にはよっちゃんと由里先生がいた。………私に自由は無いのかな。

 まぁ、二人とも心配してくれてるのは分かる。でもね、少しくらい一人でゆっくりしたい時もあるわけですよ。まぁ、言っても無駄だろうから言わないけど。

 それからしばらくして、やっと搭乗手続きが始まった。1組から順番に手続きを済ませ搭乗する。


「るぅちゃん窓際かぁ。いいなぁ」


 チケットに書かれていた座席に座ると、横の席に座るよっちゃんが羨ましそうな声で言う。何故。


「窓際なら富士山見えるじゃんか。私、見てみたかったんだよ」

「…………代わる?」

「いや、いいよ。帰りに窓際になることを期待しとく」


 そうなるといいね。多分、叶わぬ夢だと思うけど。


「そういえばるうちゃんさ、隣のクラスの鳳叶って知ってる?」

「…………そいつの話はしないで。そこらへんから出てきそうだから」

「その言い方はひどいんじゃない?」


 ほら出た。万年ド迷惑男鳳叶。


「あれ?どこから出没したんだ?鳳」

「よっす、加々見。俺は琉嘉ちゃんのいるところなら何処でも出没するぜ」

「二人とも知り合い?」


 カナイとよっちゃんは知り合いだったのか。二人はのんびりと会話を進める。そんな中で、このバカは余計なことを言いやがった。

 それを聞いたよっちゃんは目を輝かせて質問をしてきた。


「うん」

「こんなの知らない」


 勿論、前者はカナイ。後者は私である。


「えー、病院で仲良くなったじゃんか」

「あれは仲良くしたとは言わない。一方的にお前が引っ付いてきてるだけだ」

「あれは俺のスキンシップ♪」

「ウザいスキンシップだね」


 そうやってカナイと話していると、横から笑い声が聞こえる。それはよっちゃんだった。


「二人とも仲良いじゃん。るぅちゃんはどうしてそんな必死に否定するの?」


 それは決まってるでしょう。


「ウザいから」


 よっちゃんが一瞬止まる。でも、それ以外に表現方法は無い。それが一番的確な表現なのだ。

 そうしていると、クラスの点呼を取っていたタカちゃんがカナイの腕を掴む。


「鳳。お前は隣のクラスだろう。早く自分の席に行け」

「五月蝿いよ谷戸。こうでもしないと琉嘉ちゃんは逃げるんだ」

「逃げられるようなことをしてるお前が悪いんだろう」


 あぁ、五月蝿い。いいから早く自分のクラスに戻れよカナイ。迷惑なんだよ。そう思いながら私は窓の外を見つめる。離陸にはまだ時間がかかりそうだ。

 まぁ、いいさ。のんびりのんびり行こう。いい休憩の時間だ。

 そうして私がのんびりと外を眺めている間にカナイは自分のクラスに戻ったらしい。平和でいい。

 それからしばらくして飛行機は離陸した。離陸時の全員のテンションがすごい。少し動くだけでキャーキャーと騒ぐ声が聞こえる。

 ま、いっか。眠いし、また寝よう。

 堕ちる。堕ちて行く。深く。深く。

 沈む。沈み込む。深い場所へ。


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