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ヨロコビのタネ 1

 ある晴れた日、花帽子の花ちゃんと空帽子の空ちゃんは、広場でいつものように仲良く遊んでいました。

 楽しさに花ちゃんの帽子の中で花は咲き乱れ、空ちゃんの帽子の空はどこよりも透き通っています。  そこにたそがれ君が通りがかりました。

 たそがれ君は二人の友達です。

 たそがれ君の帽子を見てみると、木枯らしが吹ていていました。

「どうしたの?」

 花ちゃんはその荒れた風景に心配になってたずねました。

「かなしいんだ……」

 たそがれ君はつぶやくように言うと、うなだれてしまいました。

 たそがれ君は今日は朝起きてからずっとついていませんでした。

 まず時計が止まって朝寝坊して、牛乳は腐っていて飲めないし、焼いたパンは黒焦げです。それでたそがれ君は気分を直そうとジュースを買いに出かけました。

 ジュースを買いにいつも通る道を歩いていたら、いつもは吠えない犬に吠えられ、信号は赤信号ばかりで、石につまずき壁に激突。自転車にひかれそうになって、よけたら溝にはまってしまう……そんなことが立て続けに起こりました。

 そんな状態の中やっとのことで販売機にたどり着き、飲み物を買おうとお金を手に取ったら突風が吹いて手がすべり、ころころ転がったお金は流れの早い川の中へ消えてしまいました。

 世界の全てに見放されたような気になって哀しくなったたそがれくんは、あてもなくしょんぼり歩いていたのでした。

「それじゃあ一緒に遊ぼうよ」

 花ちゃんと空ちゃんはたそがれくんを元気付けようと考えました。

 追いかけっこボール遊び言葉遊び。

 たくさんたくさん遊んでたそがれくんは元気になってにっこり笑いました。

「たそがれくんが笑った!」

 花ちゃんと空ちゃんはとてもとても嬉しくなりました。

 花ちゃんの帽子の中はきれいな花が満開です。

 空ちゃんは飛び上がりたい気持ちになり帽子から大きく強い風が起こりました。

 風は花ちゃんの帽子の中の花を遠くに運びます。

 空に向かって花が舞う風景を誰もがきれいだと一瞬見惚れました。

 でも・・・

「あ!帽子の中から花がなくなってる!」

 そうです、強い風は根こそぎ帽子から花を引き抜いてしまったのです。

 いつもにこにこしている花ちゃんは真っ青になりました。

「タネも、なくなってる・・・」

 花ちゃんの帽子にはタネが一つだけあって、そこから花が咲くんだよ、とお母さんに聞いたことがあります。

 タネがなくなり花ちゃんは今まで感じたことがないくらい哀しくなりました。

 胸がぎゅうっと痛くなってつらくてつらくて、とうとう泣いてしまいました。

 二人は初めて見る花ちゃんの泣き顔に驚き、そして哀しくなりました。

「僕がいけないんだ。花ちゃんが僕に声をかけてくれたから僕の良くないことが花ちゃんにもうつってしまったんだ」

 たそがれ君は自分の不運が風邪のようにうつったのだと、自分を責めだしました。

「花ちゃん僕のせいでつらい思いをさせてしまって、本当にごめんね」

 たそがれ君はこれ以上花ちゃんのそばにいてはいけないと思い、涙を見せないように振り向くことなく走ってその場を離れました。

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