それは、デートですか? ・4
side 宗吾
……早すぎた……
宗吾は待ち合わせの公園の入り口に、既に三十分前には突っ立っていた。
どれだけ楽しみにしてるんだ、と突っ込みたくなるだろうけどそこは軽く流して欲しい。
ここにこぎつけるまで、どれだけかかったか。
きっとこれを読んでくれてる人たちには、分かってもらえるだろう。
鈍感のくせに悩みすぎのあの女を手に入れるのに、どれだけ大変だったか。
腕時計に視線を落とすと、待ち合わせの時間五分前。
それを確認してから、宗吾は息を吐き出した。
辛い思いをしたのは、俺や美咲だけじゃない。
一番苦しかったのは、瑞貴のはずだ。
瑞貴には、感謝してもし足りない。
年下だけれど、尊敬していると言っても過言じゃない。
もし俺があいつの立場だったとして、同じ事をやれる自信はない。
だから、だからこそ俺は美咲を幸せにしてやりたいんだ。
「課長」
後ろから掛けられた声に、一瞬、心臓の鼓動が激しく打つ。
それを悟られないように、宗吾は無表情のまま振り返った。
そこには、初めて見る私服スカート姿の美咲。
思わずにやけそうになる口元を、片手で抑える。
「あ、あぁ。おはよう」
「おはようございます」
そんな宗吾の状態に何も気付かず、美咲はにこりと笑う。
ダメだ、可愛い。可愛すぎるぞ、この野郎。
う……、触れたい……
いつもと違う、柔らかい雰囲気。
初めて見るふわふわのスカートを、少し気にするように指先で押さえているのがツボ的に堪らん。
それに――
宗吾は思わず手を伸ばしかけてなんとか押し止めるが、視線は止められず美咲を見つめる。
いつもは一つに括られている髪が、風にゆっくりと揺れている。
触れたい。
サラサラと音がしそうなそれが、俺を誘っているようで……
「課長?」
「……っ」
いきなりどまん前に出てきた美咲の顔に、思いっきり驚いて後ずさる。
美咲はそんな俺に驚いたのか、目を真ん丸くして呆気に取られたように俺を見上げている。
その視線に、一気に顔に血が上る。
邪気のない顔が、思いっきり下心満載だった俺の心を見透かしているようで、内心慌てる。
……慌てるが、何をどう言ったらいいのか分からず、口を真一文字に結んだまま忙しなく視線を動かした。
美咲はそんな宗吾を見上げて、小さく首を傾げた。
「課長、顔、赤いですよ?」
そう言って額に伸ばしてきた手から、思わず顔を背けた。
「……」
しまった……、余計、怪しい……
「……」
手を伸ばしたまま動きの止まった美咲と、後ずさった体勢のまま固まっている俺。
周りから見たら、凄い間抜けな状態だろう。
美咲は怪訝そうな表情を浮かべて、その手を下ろした。
「あの、我慢しなくていいですよ? 今日は課長のアパートに行きましょうか」
「は?」
美咲から出た言葉に、心底驚いて聞き返す。
我慢しなくていい?
俺のアパート?
ぐるぐるといろんな事が脳裏を駆け巡り、一ヶ月前にプロポーズした後、帰られた記憶に行き当たる。
もしかして。
もしかして、今日は――
――いいのか?!
「だって、熱がありそうですよ? 風邪ひいてるの、我慢してるんでしょ?」
美咲のその言葉で、宗吾の脳内思考は投げ捨てられた。