それは、デートですか? ・2
Side 加藤
「――デート、だろうね」
なんとなく“とぼとぼ”という言葉が似合う美咲の後姿を玄関脇の窓から眺めていた加藤は、いきなり真横から出てきた真崎に持っていた歯ブラシを落としそこなって焦った声を上げた。
「ままっ、真崎先輩っ」
一ヶ月前から自分の上司となった真崎を、未だ加藤は把握しきれないでいた。
ただ分かる事は。
「だな」
同じくいきなり反対側から出てきた瑞貴に、再び思考が飛び散る。
「みっ、瑞貴先輩……」
涼やかな笑顔で真崎と同じ様に窓から外を見る瑞貴。
直接仕事をしたことは無いが、過去営業トップで企画課所属、出世街道まっしぐらという、違うものにまっしぐらしたい猫が引き返して争奪戦を繰り広げるんじゃないかと思うほど、格好いい先輩。
そして、今は大家さん。
自宅に住まわせてもらってる。
そんな瑞貴を、やっぱり加藤は把握し切れていない。
ただ分かる事は。
二人とも、久我先輩が好きで、課長をからかいたいということ。
片や甘い雰囲気の整った顔立ちと、片や爽やかって言葉が這いずり回って許しを請いそうなぐらい綺麗な顔が、どす黒い笑みを浮かべた。
「つけちゃおうか?」
「だな」
こうなる事を分かっていたかのようにすでに準備万端の二人は、いつもなら絶対にない息のあった動きで玄関から出て行った。
玄関のドアの閉まる音で、我に返る。
慌てて洗面所で口を濯いで、二階の自分の部屋へと駆け上がった。
「あれ? 加藤どうしたの?」
ドアを開けて入ろうとしたその時、隣の部屋の田口が丁度出てきた。
「――いいところに来た!」
いや、来たもなにも同じ家に住んでるんだから、おかしな言い回しなんだけど。
大急ぎでさっきの話をすると、田口は納得したように五分後玄関! と叫んで部屋に戻っていった。
加藤も慌てて部屋の中に入り、寝巻きを脱ぎ捨てる。
適当においてあった服に着替えて、財布と携帯を掴んで再び部屋を飛び出した。
そのまま戸締りに走り回り、五分後、二人は玄関から飛び出す。
「久我先輩と加倉井課長の貴重な初デート! あの二人から、絶対守りぬくわよ!」
「おうっ!」
スカートまではいていった初デート、絶対死守! と、美咲が聞いていたら悶絶しそうな言葉を叫びながら田口と加藤は駅へと駆け抜けていった。