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それは、デートですか? ・12

Side-加藤



「馬鹿だね」

「うん、馬鹿よね」

「まぁ、その通りだね」


走っていく美咲を見つめる宗吾のすぐ傍の茂み。

ばれないように二人を見守っていた、田口・加藤・亨の三人は思いっきり溜息をついた。



「あの言い方じゃ、状況分かっていない久我先輩にとっては、悪い方にしか取れないよね」

それまでこの後の企みを水沢と練っていた田口が、呆れたように呟く。


確かになぁと相槌を打ちながら、加藤は走っていく美咲の背中を見つめた。



状況がわかっていれば、簡単な話。


美咲のいつもと違う可愛い姿に、気持ちが昂ぶり気味の宗吾。

まったく気付かず期待させるような言葉を吐いた後、おもいっきり投げ捨てた美咲(笑

それに宗吾がもやっとしているところに、亨が登場。

自分といるより楽しそうにされていたら、宗吾も面白くない。

だから多分、今の“帰る”発言は。



「二人きりになりたいって事なんだろうね」


亨が苦笑気味に肩を竦める。

田口が同意するように、深く頷いた。

「言葉と表情の足らない課長と、鈍い久我先輩。難しいですねぇ」


ははは田口、それ当てはまりすぎて笑えねぇ。



「美咲ちゃんてば、どうしたの?」

「うわっ」



その時、いきなり後ろから話しかけられて思わず叫び声をあげた。

途端、口を思いっきり田口に押さえられる。


「馬鹿っ、課長にばれるでしょっ」


いや、お前の声もでかい。



そう言いたかったけれど口も開かないし、言ったところで田口にどつかれるだけだから大人しく頷いてみました。


俺、偉い。



田口が口から手を離したのを見計らって、後ろから首にまわされた腕を両手で掴む。


「真崎さん、苦しい」

「あぁ、ごめんごめん。僕、手加減できないからぁ」


嘘だ、出来ないんじゃなくてしないんだろ。



そう思ったけれど、どうせ笑顔で威圧されるだけだから大人しく頷いてみました。

俺、偉い。



「加藤、情けない」



田口には、ばっさり切られましたが何か?



真崎は加藤の後ろから、亨達の後ろに移動する。

「尾行してきたの? 二人とも、いやらしいなぁ」

にこにこ満面の笑みのその下は一体何を考えているのか分からない真崎に、女は度胸を地でいく田口がにっこり返し。

「真崎さんを尾行してきたんですよ? 真崎さんこそ、いやらし~」


怖いよ、田口。

真崎さん相手に、よく言えるな。


真崎は田口の言葉にも動揺せず、ニコニコ笑いながら亨に視線を移した。

「水沢くんも来てたんだ」

「えぇ、偶然ですけど」

亨も手馴れた風に、柔らかく微笑みながら頷く。


おぉ、真崎さんに対抗できている!

ただの優しそうな人じゃないようだ。



――じゃぁ、へタレは俺だけかよ



内心がっくり来ている加藤はさておかれ、真崎達は茂みから宗吾を盗み見る。



駆けていく美咲を見つめていた宗吾は大きく溜息をつくと、少し離れた場所にあるベンチに腰を下ろす。

そのまま両腕を組んで目を瞑った。



――見た目、怖ぇ



不機嫌オーラをまとった宗吾の周りには、きっと誰も近寄らないだろうことうけあい。



田口に状況を説明されていた真崎は少し考えた後、こそこそと亨に耳打ちをする。

全て聞き終えた後、亨は難しそうな表情を浮かべていたが、溜息をついて立ち上がった。

「まぁ、やれるだけやってみますよ」

「君ならできるよ、久我部長の秘蔵っ子だもん」

「でも、真崎さんはそれでいいんですか?」

「このままじゃ、楽しくならないからね」

その言葉にひきつった笑いを浮かべながら、亨は美咲の向かった方に小太郎共々走っていった。



「何言ったんです?」


笑顔を崩さない真崎に恐る恐る聞いてみると、「企業秘密」と返される。

企業秘密って、同じ会社の同じ課じゃんとか思ったけれど、とりあえずその言葉は飲み込む。

教えてもらえない事は分かったので、他に気になることを聞いてみた。


「そういえば、瑞貴先輩は?」


一緒に女性集団の中にいたはずの、瑞貴の姿が見当たらない。


同じく疑問に思っただろう田口も、宗吾から視線を外して真崎を見た。


「ん~、瑞貴?」


真崎はなんでもないように呟くと、くすくすと楽しそうに笑った。



「僕が抜け出すために、生贄として置いてきた」




――鬼だよ、このヒト


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