【第7章】ミニマリスト
遊園地の迷子センターで母を待っている。
そんな僕の隣に、同じように迷子になっている子供が座った。彼女は僕にとって、そんな存在だった。
彼女の涙は、僕を過去へと連れて行った。
永遠にこの孤独が続くんじゃないかという恐ろしさ。そして、それから逃れるために生きてきた、これまでの人生。
「ツラかったんだ」
葬ったはずだった。
自分を変えてでも、僕には誰かが必要だったんだ。
「頑張ったね」
これまで作り上げてきた自分が、崩れていくのを感じる。
彼女と僕は似ていない。
本当の彼女は明るく元気な子だったと言っていた。
僕はまるで逆だ。臆病で身勝手な性格である。
彼女が言っていたように、本当はみんなが思っているような良い子ではなかった。
それなのに、また彼女に会いたいと思った。
葬ったはずの自分が、会いたいと言っている。
彼女とカフェで別れたあと、僕はユニクロに寄った。
そこで、白のシャツに黒のパンツ、薄手のロングカーディガンをサッと手に取り、購入した。
今着ている派手な服が、とても窮屈に思えたからだ。
-----
蝉が生きることを喜ぶように鳴いている。
僕は引っ越しをした。
その時、ほとんどの家具や家電を捨てた。
テレビや電子レンジ、トースター、ベッド、カーテン、棚や机まで……。
それから、これまで集めてきた漫画やゲーム、CD、DVD、写真などの思い出のものまで全部捨てた。
残したものは、洗濯機と小さな冷蔵庫くらいだった。
モノを捨てる作業は、自分に付いていた付属品を一つひとつ手放していくようで、体が軽くなっていくのを感じた。
ただ、洋服だけはほとんど捨てられなかった。
これは、僕にとっての鎧だった。だから、捨てる訳にはいかない。
荷物はほとんど無くなり、予定時間よりもかなり早く引っ越しは終わった。
こんなに楽な引っ越しは初めてだった。
それまでの半分の家賃のマンション。
エレベーターは無く、5階建ての4階の角部屋。茶色のフローリングに白い壁、キッチンにユニットバスのワンルーム。
何もない部屋は、ガランとしていて声が響く。
寂しくはなかった。
本当に大切なものは、少しで良い。
今の僕には、これからも生きていくための鎧と、もう一人の迷子に会えたら、それで充分だった。
彼女が初めて店に来た時、僕は別の人を担当していたから気づかなかったけれど、支払いの時に顔を見て「あれ?」と思った。
大きく盛った目に、ピンクのチーク。ファッションはフリフリした可愛いものを着ているのに、新しくした髪型はボブヘアーで大人っぽい。
髪型は似合っていたが、その姿には合っていないように感じた。
どこかで見たことがある。
そして、先日のアイドルの卒業ライブに行った時に、ステージの端の方にいた『かほるん』であることに気づいた。




