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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。


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4羽 「おまえの輝ける場所だよ」②

「……タルクさん? なにしてるんです?」

「ああ、ヨータ。見てやってくれ」


 振り向いて立ち上がったタルクさんの陰に――ライラちゃんがしゃがんで居た。ふたつの集卵籠といっしょに。


「えっ、どうしたの? ライラちゃん」

「わけたの」


 籠の中で、ひよこがぴぃぴぃ言っている。僕は「えーっ⁉」と言って、急いでそのひよこたちを検めた。ざっと30匹くらい。


「……すごい」

「合ってんのか?」

「うん。一匹だけ間違いだけど。それだけ」


 僕のその解答を聞いて、タルクさんは「おーい、おじさん! ライラが、やったぞ!」と声をあげた。

 ハッラさんの親バカぶりは天元突破した。涙ぐみながらライラちゃんを抱きしめて「さすが俺の子、天才だ……!」と頬ずりする。すごく嫌がれて「とーちゃん、うるさい」って言われていた。

 それにしても、すごいな。子どもの吸収力。僕の作業やハッラさんの練習を眺めていただけで、できてしまうなんて。そりゃ、僕も質問されたときには答えていたけれど。ライラちゃんから話しかけてくれるって、なかなかないしさ。


「で、タルクさんはどうしたんですか?」

「おまえを連れに来た。――おじさん。ヨータ、もらってくぞ」


 僕はなんだそれ、と思ったけれど、ハッラさんはちょっと真面目な顔で「わかった。……がんばってこいよ、ヨータ」と言った。なにそれ。


 で、僕に配慮してくれて用意された幌なし馬車に乗って、どこかよくわからないところへ連れて行かれる。御者はタルクさん。

 空ではタルクさんの愛鳥のグラがめっちゃ高く飛んでついて来ている。ほぼ毎日、グラは僕がお世話になっているハッラさんの家にやって来るくらい、僕を諦めていない。そもそも、もらった羽を返していないのが原因だと思うんだけれども……。ぜったい返すなよって言われて、そのまま借りている部屋に置いてある。


「どこに行くんですか?」

「おまえの輝ける場所だよ」

「なにそれ」


 今こちらは春らしくて、生まれも育ちも九州は福岡の僕にとって、かなり肌寒い。でも地域的に考えたらこれでも暖かい方なんだってさ。ハッラさんから借りている着替えや上着を着込んでいるけれど、馬車に揺られながら僕は何度かくしゃみをした。


 30分くらい揺られたかな。4階建てくらいの高い石造り塀の建物にやって来た。鉄格子の入口の前で一度停車して、タルクさんが門衛さんになにか話しかけていた。


「――よし。……行くか」

「どこです? ここ」

「あとで教える」


 門内に入ったら、グラが舞い降りて来た。さすがにその大きさには慣れたけど、やっぱまだビクついてしまうなあ。食べられそうでさ。

 塀と同じ石煉瓦のでっかい建物の前に馬車を停めて、タルクさんが無言で促したから僕はその背中について中に入って行く。グラがキュルルーって背後で鳴いた。


 どんどん中に進んで。タルクさんみたいな、ハルシーピに乗る人用の皮の肩当てをしている人たちとたくさんすれ違った。みんな僕の容姿が珍しいんだろうな、ちらっと見てくる。

 着いたのは、二階の小部屋。きゅるるるー、きゅるるるーって、かわいい声がたくさん聞こえる。


「……おまえに、見てもらいたい」

「うわーーーーーーーーー! かわいいいいいいいいいいいいいい!」


 ふわっふわの、雛! 鶏の雛ではないのは一目でわかる大きさだけれど、とにかく、雛!

 全体は茶色だけれど、お腹のあたりがちょっとだけ白い。そして羽毛がぜんぶ産毛。かわいいかわいい。

 そして、見た感じから、僕は「なに? ハルシーピの雛?」ってなにげなく尋ねた。そしたらタルクさんがものすごい形相で僕を見て「どうしてわかった?」と鋭く聞く。


「え、だって……特徴の出方がグラと似てるっていうか……」

「……そんなこともわかるのか」

「そりゃあ、僕、初生雛雌雄鑑別師だから」


 タルクさんは、どこか思い詰めたような表情で僕を見る。そして、腕を引っ張って僕をハルシーピの雛のところへ近づけた。


「……こいつらの、雌雄を見分けてほしい。……できるか?」

「やってみないとわからないけれど……たぶん」


 大きさ的に、さすがに鶏の雛みたいに片手でつかんで流れ作業ってわけにはいかない。僕は囲いに向き直って、好奇心いっぱいに僕を見上げる雛たちの中から、一匹を両手で持ち上げてしゃがんだ。

 ひっくり返すのにもひよことは訳が違う。頭を下にするとびっくりしたのか、雛は身動ぎせずにぴたっと止まった。今だ。


「……うん。女の子」

「……こっちに入れてくれ」


 ぜんぶで20匹だった。オスが7羽。そして、メスが13羽。


 多少手間取ったけれど、5分くらいで僕が鑑別を終えると、タルクさんはやっぱりどこか真剣な顔をして、僕に言った。


「ヨータ。――俺は……おまえを、信じようと思う」


 きゅるるるるー、きゅるるーって、雛が鳴いていた。

 僕は、なにそれ、と思った。

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