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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第二章

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29羽 「どんな意味なの?」①

「うわーっ、すごいな、これ!」


 白い漆喰壁で緑の三角屋根。大きな窓がたくさんある家。ちょっとだけコロニアル様式を思わせる外観の建物が整然と並んでいる街。それが、今滞在しているファルガントという都市だった。

 ありがたいくらいの晴天の中、指定文化財みたいのに登録されている古民家を訪ねたとき、僕が最初に注目したのは壁だった。一部分の漆喰跡が横一列に鳥をモチーフとした模様になっている。かわいいかわいい。もちろんハルシーピなんだろう。すごいな、職人技。


「テルク=ファルの西部では、こうした建築技術が発展し今に受け継がれています。わりと人気がありましてね。他国から学びに来る人もいるほどです」

「西側っていうことは、東側はもっと違う感じなの?」

「ええ、同じ国とは思えないほど、様子が違いますよ」


 にこにことブロムが解説してくれる。そっかー、どんな感じなんだろう、東側。

 隠密っぽい雰囲気で周囲への警戒を怠らないでくれている翼騎兵隊の人たちの中、僕はすっかり外国旅行を満喫するモードになっていた。海外とか、高校の修学旅行で台湾へ行ったくらいだしなー。はたしてここを海外って言葉でくくっていいのかわからんけれども。

 タルクは、めちゃくちゃつまらなそうな表情で着いてきていた。いちおう目立たないように赤い髪を隠すつばつきの帽子をかぶって。僕もなんでかおそろいでかぶせられた。なんで。

 古民家の中は、展示物を置いてファルガントの開拓の歴史を紹介していた。人払いがされていて、館長さんがつきっきりで詳しく説明してくれる。余計なお仕事増やしてすみません。ブロムからお手当とかもらってください。


 でっかくて真っ白いツバメの巣みたいのが展示されていた。やっぱり縁起物とされているのかなあ、としげしげと見ていたら、館長さんが「これはメードの巣です」と言った。


「なにか、呪い的な意味があるんですか?」

「そうですね。我が国では、すべての鳥はハルシーピの配下にあると伝統的に考えられています。とりわけ渡り鳥であるメードは、我が国を横断して良い便りをもたらしてくれるとされている」


 ふーん。国鳥とかに指定されているんだろうか。館長さんは続けて「営巣することがめずらしい種のため、また来てくれるようにとこうして古い巣を保管する習慣があります」と言った。なるほど、やっぱ縁起物。


 ブロムが思い出したみたいに「メードをご覧になったことは?」と聞いてきた。僕はちょっと考えてから「どうだろう? 知らずに見ていたかも」と答える。


「そうかもしれませんね。ヴェルク=シーヴィにも渡っているはずですから。小さなハルシーピのような見た目で、かわいらしいですよ」


 おー、それはちょっと見たい。茶色い翼に、お腹のあたりが真っ白いモフモフのグラを思い出す。どうしてるかな。傷はそろそろ良くなっているだろうか。なんだかんだ、こっちに来てからこんなに長期間顔を合わせないなんてことがなかったから、そこそこ寂しく感じる。

 タルクがめちゃくちゃ退屈そうに大あくびをしていた。おい、館長さんに失礼だろうが。


 場所を移動する手配が整ったと連絡があって、館長さんへお礼を言ってその場を後にする。右手を胸に当てて見送ってくださった。馬車で護送されたのは、先日音楽祭が開かれたっていう、大きなホール。昨日クラヴェル王子と会っただだっ広くて長いようなところではなくて、しっかり観劇とかする用のドームみたいな感じだった。

 今はイベントが一段落して、地元の歌唱隊が練習しているらしい。音響の感覚をつかむにはちょうどいいからってことで連れて来られたみたい。わざわざファルガントで音楽祭をやるくらいだから、気合いが入った施設なんだろうな。


 練習のじゃまをしたくないって僕が言うと、観客席の後方からすっと入ってタダ聴きする形になった。それもなんか嫌だなあ。まあいいけど。舞台ではちょうどオルガンっぽい楽器に合わせて歌唱隊が歌っているところだった。すっごく美しい。


 灰の海に 沈む日よ

 翼広げ 降りて来い

 ハルよ ハルよ

 火の舌を 飲み干せ


 たぶん、そんな歌詞。ずっとそのリフレイン。すげーと思って僕が聴き入っていると、しばらくしてブロムがうれしそうに「どうです? すごい音響施設でしょう?」と、たしかに音のことだけど、僕が考えたのとはちょっとズレたところを聞いてきた。僕は素直に「すごいね」と答える。


「ハルって、ハルシーピのこと?」

「そうです。古代の文献では、ハルシーピは一貫してハルと記されています」


 タルクが椅子に座ったまま眠り始めたので、とりあえず鼻をつまんで起こしておいた。

 施設自体にも見どころがあるよ、とのことだったので、ホールを出て外周を歩いて回る。あー、壁が壁画チック。すごい。これもハルシーピモチーフっぽいな。


「もしかして、さっき歌われていたのと同じ内容の壁画?」

「ご明察です。ハル古典に基づいたものです。あの、左上のが舞い降りてくるハルシーピですね」


 鷹が、獲物を狙って急降下してくるときみたいな構図。ハルシーピみたいな大きい鳥にとっ捕まったら、大変だろうな。そう考えたら、地道な求愛だけしてくるグラってもしかして紳士かも、とか思った。しらんけど。


「さっきの歌詞、どんな意味なの?」


 気になったから聞いたんだけど、もしかして常識的なことで、知らないってバレたら困るかなって、言ってから気づいた。まあいいや。ブロムは気にした風でもなく「天からこの地にやって来た御使いが、ハルシーピに命じた言葉です」と言った。


 僕は、どきり、とした。

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