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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第二章

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27羽 「どうぞ、お好きに呼んでください」①

 テルク=ファルへ来る前に、キャラヤと約束したことがある。それは、僕が高所恐怖症であることを、だれにも悟らせないということ。


「男は弱みを見せてはいけない。そして、特別な称号を得たおまえは、特別でなくてはならない」


 なんかそんなことを言われて、僕の鑑別技術の正確さは、僕が『空を飛ばない』という誓約を果たしているから保たれている、という設定になった。

 それによって、僕の希少なスキルを狙う者たちは、僕を空路で誘拐できなくなる。空を封じ込めるのは僕の身を守る上で最優先事項ということで、その設定はまことしやかにウワサとして流すことになった。なので、当然ブロムも知っていた。

 僕が他に呪いをしないであろうことは、ただの推測として他言していないということだけれど。ブロムがウワサを知っているということは、テルク=ファルのお偉いさんは、みんな把握している、ということで。

 ざくっと、僕の理解で言うとなんだけど。テルク=ファルは、地球で考えるところのロシアみたいに、国土が東西に長い大国だ。もちろん、形は違うけれどね。僕がおじゃましたのは、その極西にある一番大きな都市のファルガント。まあ、モスクワあたりって考えればわかりやすいかな。首都はもっと真ん中にあるらしい。

 で、僕は『空を飛ばない』という制約がある。

 なので。

 来ちゃった。偉い人。たくさん。

 僕へ会いに。


 キャラヤと初めて会ったときは、わりとしっかり準備させられた上で臨んだけれど、あくまで非公式な場だった。

 僕が今立たされているのは、ファルガントで一番大きなホールみたいなところ。天井はあまりにも高くて精巧な紋様が入っている。それを両サイドから支える柱は白く、僕が両手を広げたよりもずっと太い。広い。長い。夏なのにうっすら寒いと感じるのは、実際の室温にもよるけど、僕があまりにも心細く感じているからなんだろう。

 僕は、走り幅跳びでもできそうな距離を置いた壇上で椅子に座った、偉い人に相対している。左胸に手を当てて。

 タルクは、決して僕から離れないという態度を示して隣に立ってくれている。ありがたい。

 でも、なぜかタルクは、手を胸に当てなかった。


「初めまして、鑑別師(トゥンニスタヤ)・ヨータ殿。私はガルドリクの三の子息、クラヴェル・ファルヴォルン。ずっとあなたに会いたいと思っていた。来てくださり感謝する」


 響き渡った声は澄んでいてとても若々しい。この場所から姿を見ても、たぶんハタチそこそこじゃないかなと思う。光を集めたみたいに柔らかな金髪。それに、たぶん青い瞳。いかにも王子様っていう感じの男性は、僕をじっと見たあとに「近くへ」と述べた。どうしていいかわからなくてタルクを見ると顎をしゃくってみせたので、言われた通り近づいた。半分くらい。

 座っているのはその、クラヴェルっていう王子様だけ。あとの偉そうなおじさんたちは、その背後とかに立っている。あらかじめどんな人が来るのかタルクに聞いたけど「知らん」て言われたので、どれだけ偉い人たちなのかはよくわからない。ただ、先日ゲリラお見合いを仕掛けて来た趣味で国防をされているおじさんはいた。ブロムも。なので、大臣クラスの人たちだと思う。たぶん。


「……あなたに関するたのしげなウワサは、たくさん耳にしている。正直なところ恐ろしげな呪い師だったらどうしようと思っていたのだけれど、そうじゃない、好青年のようでよかった」


 どんなウワサだよ。なに流したのキャラヤ。いちおう褒められたんだと思ったので、僕は「もったいないお言葉です」と言っておいた。たぶん、直答はしてもいいはずなんだよね。キャラヤが前に、僕に指示できるのって翼公とキャラヤだけだって言ってたから。

 そこらへんのこともわかんないんだよなー。タルクに聞いても知らんって言われそうだよなー。


「ルクヴォテル外務卿があなたをお迎えにあがったのは、他でもないあなたに、テルク=ファルからの請願があるからです。私はガルドリクからそれを預かり、こうして名代で参りました。本来ならばガルドリク自身が伏してお願いすべきところを、申し訳ない」

「いえ、問題ありません」

「そう。ありがとう」


 ブロムってルクヴォテルっていう苗字だったんだね。聞いたはずだけどわすれていたよ。……ところでガルドリクってだれ?

 とりあえず、いろいろわかっていそうな顔色を保つために、僕は言葉を少なくしておこうと考えた。ブロムには世の中的に世間知らずだってことはバレてしまっているけれど、足元を見られるようなことはしない方がいいに決まっているからさ。クラヴェル王子は、少しだけ首を傾げて僕を見て、言った。


「ぜひ、私のことはクラヴェルと呼んでほしい。私は、あなたをどのように呼べばいいだろうか」


 うっ、と喉が詰まった。まじか。予想していない質問だった。なにも知らなかったら「あ、ヨータでいいです」って答えたんだけどさ。名前呼びがけっこう重要らしいって聞いたばかりだし。どうしたらいいんだ、これ。

 タルクはぜったいに頼れないってわかっているから、僕はあんまり長くない間を置いたあとで「どうぞ、お好きに呼んでください」と言った。僕が自分から名前呼びを指定するよりいいかなって思って。

 クラヴェル王子はちょっと考えて、それから「鑑別師(トゥンニスタヤ)・ヨータ殿。ルクヴォテル外務卿と同じ特権を、私にいただいても?」と薄く笑って言った。僕は「どうぞ」って言った。タルクがなんか言いたそうな空気を出した。だからそういうのは先に言え。


昨日は、ご意見をくださりありがとうございました!

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いつも支えてくださり感謝です!!!!!


土日を挟んで、次の更新は23日(月)です

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