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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第一章

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37/59

19羽 「おめでとう」 「なに?」②

「……こんばんは」

「こんばんは。来ると思っていた。入れ」


 手酌で飲んでいたみたいで、酒瓶と自分で切るタイプのハムとかチーズとか。コップはちゃんと僕の分もあって、片手で注いでくれた。


「で、なにから聞きたい」

「そう言われるとなにからがいいのかわかんないな。んーと、じゃあ、キャラヤってどういう意味?」

円環守総長キャラヤン・ヴァフティの愛称で、総長(キャラヤ)だ。この国は、円環集(キャラット)という会で成り立っている。それの一番偉いヤツ」

「んんー? 議会制ってこと?」


 聞いて、横文字に圧倒されながら頭をひねって質問すると、タルクが「なんだその、ギカイセイってのは」と言った。


「代表者が集まって、あーでもないこーでもないって、国の方針とか決める形態」

「あー、そんな感じだ」

「じゃあ共和制じゃん。この前違うって言ったじゃんか」

「なんだそれ? よくわからん。おまえの言葉は難しすぎるんだよ」


 まあいいや。謎肉のハムを切り分けて二股フォークを刺して食べる。相変わらずなんの肉かわからないけど美味しい。


「とりあえず、おまえは合格みたいだな。おめでとう」

「なに?」

「最初に出された茶と菓子、食っただろ」

「おいしかったね」

「間諜なら、食わねえよ、あれは」


 えっ、そうなん? よくわかんないけど、僕の前にだけ出されたのってそういうこと? 試されてたんだってわかって、なんか背中がぞっとする。

 思わず「なんで教えてくれなかったのさ!」と聞いたら「教えたらおまえ、ガッチガチになるだろ」と言われた。それはそう。


「で、もうひとつ。キャラヤは、愛称だ」

「うん」

「キャラヤン・ヴァフティの略称は総環長(ヴァフト)。こっちは、一般人たちが使っている言葉だ」

「ふーん?」

「おまえは、愛称を使うことを許されたんだよ」


 僕が「へー。ありがたいね?」と言うと、タルクがとても残念そうな顔をした。


「……まあ、ニホンから来た人間には、わからんのか、この重み」

「さっぱりだねー」


 なんて話をしながら飲んでいたら、ノックがあった。ブロム外務卿さんかなーと思ったらそうだった。タルクが追い返そうとしたけど、両手いっぱいに持った酒瓶とつまみを見て中へ入れた。なんて現金なヤツだろう。基本が食いしん坊なんだよな、タルクは。


「ヨータくん、お願いがあります」

「え、なんか嫌です」

「そんなあ!」


 ブロム外務卿さんの眉尻が露骨に下がった。メガネも曇ったかもしれない。タルクはブロム外務卿さんが持ってきた、テルク=ファルの東側の端の海岸沿いでしか捕れないらしい、赤身魚の燻製をいっしょうけんめい噛んでいた。僕もひとつもらったら、するめ並みに噛み応えがあった。しかも滋味がすごい。


「私だけ仲間外れ嫌ですよお!」

「えー、そんなことしてないじゃないですか。現にこうやっていっしょに飲んでるし」

「私のことも、ブロムと呼んでください。外務卿さんとか、わざわざいりませんから」

「えー」


 なんだ、お願いってそんなことなのか。キャラヤのことがあったからかな。たしかに毎回ブロム外務卿さんって言うの長いよね。

 僕が「わかりました、ブロムさん」って言ったら「さんもいりません」って言われて、じゃあってことで、呼び捨てになった。


 タルクがなにか言いたげにもぐもぐしていた。なにかいけないことだったかな、と思ったけど、なにもかも説明が圧倒的に足りないタルクが悪くない?

 みんなでほろ酔い加減になったとき、またノックがあった。

 キャラヤかな、と思って僕がドアを開けたら、気配のない男の人が存在感をちょっと感じさせるように立っていた。びっくりした。そして「こちら、円環守総長キャラヤン・ヴァフティからの差し入れです」って、めちゃくちゃおっきい籠を差し出してくれた。


「えっ、キャラヤは来ないの?」

「……『私が居たら安心して飲めないだろ』とのことです」

「えーっ、そんなことないのになあ」


 籠を受け取って部屋を振り返ると、ブロムが酔い覚めしたような真顔で僕を見ていた。そして「ヨータくん、君はとても大胆ですね」と感想を述べた。なんで。タルクは僕から籠を受け取って、中へごそごそ手を突っ込んだ。


「もしお仕事とか終わってたら、よかったら来てくださいってキャラヤに伝えてください。……あー、椅子が足りないかな。隣の部屋から借りられる?」

「……承知いたしました」


 気配のない男の人がすっと居なくなった。びっくりした。

 ドアを閉めて席に戻ったら、ブロムが酒ではなくて水差しから注いで飲んだ。タルクがベッドの上で、右脚だけできるようになったあぐらをしながら籠から大きい包みを出してる。


「……この子、こわい」

「あきらめろ、ブロム。こういうヤツだ、ヨータは」


 え、なにそれ。なんなの。そしてブロムは僕のこと何歳だと思っているの。

 トイレへ行った帰りに、キャラヤと行き合った。眉間のシワはあったけど、上機嫌でいっしょにタルクの部屋へ行った。ブロムがどっかから高価そうな椅子を調達してきていた。さっすが外務卿、気が利くよね。

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