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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第一章

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30/59

16羽 「しかたない。そういうもんだ」①

「――で、断らなかった結果がこれだが、なにか俺に言いたいことはあるか? ヨータ?」

「ごめんなさい」


 花冠をかぶって花輪を首にかけられ、低い壇上の椅子に座っているタルクの隣りで、僕も同じ姿で座ってすみやかに頭を下げた。本当にすみませんでした。

 今、僕たちの前では子どもたちが合唱している。なんとか学堂院ていうところの低学年の子たち。たぶん50人くらい。ウン、ジョウズダネー。

 宴の用意がされていた。控え目に言っても町総出での歓待だった。ここには一泊するのみだって言ったし言っているのに、少なく見ても歓待スケジュールは一週間あった。なんかこう、すみませんでした。公翼の人気なめてました。偉い肩書すごい。

 町長さんっぽい人があいさつを始めた。あ、これ校長先生パターンだ。僕にはわかる。案の定、町の成り立ちからヴェルク=シーヴィとの関わりや交友について、それに今は3万人の人口を誇る交易中継都市へと成長し、云々。

 上の空で聞いていてあらためてわかったことは、ここはヴェルク=シーヴィの東隣の国テルク=ファルにある、スミットハルという町。鍛冶屋さんがめちゃくちゃ多いらしく、その製品の多くはヴェルク=シーヴィへと輸出されているらしい。

 北へ行けばヴェルク=シーヴィの首都があるらしいし、南には僕が滞在していたムルナヴェンがある。僕がムルナヴェンで買ったお鍋とかも、たぶんここで造られたんじゃなかろうか。


 で、長いあいさつが終わって。……そろそろ解放されるかな? という兆しがあった気もするんだけれど、気のせいだった。普通に次の催しが始まる。なんか、この地域に伝わる話の劇。勘弁してくれ。僕の接待スマイルもいいかげん引きつってきたし、タルクは不機嫌を通り越して無になっている。完全なる無。

 劇は1時間程度だった。そして悲恋な終わり方。なにを観せられたんだいったい。僕こういうの不得意なんだけど、だれか解説してくれ。

 と、思いながら。


「うっ……!」


 我ながらちょっとウソっぽかったけれど、体を折り曲げて呻いてみた。タルクが即座に反応して「だいじょうぶか⁉」と乗っかる。


「差し込みが……!」

「なんだって!」


 大げさなくらいに驚愕してみせたタルクは、この町の劇団員よりも演技に気合いが入っていたと思う。僕の肩に手を置いて「連れが急病だ! 休ませる、宿はどこだ!」と声をあげた。周囲が騒然とし、次の催し物の準備をしていた人たちがおろおろする。タルクが周囲を見渡して「あそこか」と当たりをつけた。

 で、なぜか僕をお姫様抱っこ。


「――は⁉ なにそれ⁉」

「どけてくれ、彼を運ぶ!」


 花冠を頭に乗せたまま迫真の凛々しさで人々の間を走る。きゃあ、って声がいくつもあがる。どこかの建物に入ってから、タルクは僕を下ろした。


「なかなかいい仮病だった」

「それはどうも。まさか人生でお姫様気分を味わうことがあると思わなかった」

「俺も27のおっさんを抱き上げることがあるとは思わなかった」


 おどおどとした中年男性がカウンター越しにこちらを見ていた。タルクはその人へ「部屋は空いているだろうか」と尋ねた。


「は、はい。部屋自体はありますが……たぶん、公翼様には他の施設が用意をしているはずで……」

「いや、そちらは肌に合わないからいい。ここにする。ベッドがふたつある部屋で……ああ、厨房は使えるか?」

「えっ、はい。ええ……でも」

「案内を頼む」


 有無を言わせずにタルクが押し切った。入口から町長さんが入ってきて「公翼様、公翼様にはべつの宿を用意しておりまして、そちらで」と言い募って来たけれど、タルクは最後まで聞かずに「必要ない。ここでいい」と切って捨てた。すみません……。

 正直なところ、ずっと催事につきあわされるのはちょっとごめん。たぶん用意されている宿でも同じ状況だろうなって、僕にでもわかった。タルクGJだ。


 町長さんの監視の下、最初に通されたのはめちゃくちゃいい部屋だったんだけど、間取りとかを見てタルクが「ここじゃないところがいい。ああ、1階にあれば、それがいいな」とか言い始めた。突然来てそれはなかろう、と思ったけど、公翼様だからいいのかな。しらんけど。

 

「明日の朝、ここを出るぞ」

「早っ。いやまあ、それが予定通りなんだけれども」

「なんか、すごくめんどくさい匂いがする。さっさとずらかるぞ」


 そうなんだ。よくわからんな。ところで、なぜか食事とかを厨房を借りて僕が作ることになった。タルクに言われて。公翼様になにを食べさせたらいいのかわからないお店の人たちからは天使が舞い降りたとでも言わんばかりに膝をついて感謝された。すみません、なんかすみません。

 それに、町長が気合いを入れて準備させていた酒宴とか酒宴とか酒宴とかあったらしいんだけれど、タルクが僕を指して「俺はこいつの作った物しか食わん」と宣言したことでお開きになった。さすがにひんしゅくを買うだろうと思ったけれど、むしろ「さすが公翼様、身辺管理を徹底されている」みたいな感じで好意的に受け入れられたっぽい。よかったね。


 夕食を作り始めようかって思ったとき、グラたちの食事はどうなっただろう、と思ったら、そのタイミングでタルクが宿の主人へ言った。


「俺のイクナは、俺の調理人からしかエサを食べないようにしつけている。なので、これから食事をさせに行く」

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