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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第三章 ヴェルク=ライナ

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52羽 「なにそれひどい」②

 タルクが、すごく気を利かせて上からかぶる形式のマントみたいのを入手してきた。どうしたの、突然イムロっぽいじゃん。男性に着てもらって、とりあえず治療痕だらけの体は隠せた。男性は気力で立っているって感じだった。どこかで休ませたいけど、人目があるからきっと街を出た方がいいのはわかった。


「お城観光はできなかったけど……いい?」

「ああ」

「はーい」


 本当は、タルクの実家だろうから……ちゃんと時間をとって行きたかったな。タルクの立場じゃ、そんなにできるもんじゃないだろ、里帰り。特に懐かしそうにもしていないから、覚えてないのかもしれないけれどさ。

 建物の陰を選んで移動する。僕とイムロで男性の両サイドを支えながら歩いた。レイパスたちを預けていたハルシーピ舎は街の外周にあるから、タルクには先に行ってもらって街の外で落ち合うことにした。でもね、なんか上手く進めない。しかたないよね。大怪我している人を無理に歩かせているんだから。途中でイムロがしびれを切らして「もういいんじゃないっすか?」って男性をおぶった。目立つから避けていたけど、のろのろしている方が人目につくよね。たしかに。


「この前待ち合わせに使った町まで移動しよう」

「……できるかな」


 レイパスたちと待っていたタルクが言った言葉に、僕はイムロが背負った男性を見ながら言った。折れた腕はとんでもない熱を持っていて、眼光の鋭さは変わらずともぐったりとしている。とてもハルシーピ騎乗に堪えられそうにない。


「しかたない、やるしかない。幌つきの荷台が入手できればよかったが、俺たちにはもう、金がない」


 移動したからってお金がなかったらどうにもならないけれど、とりあえず男性を安全に休ませるための場所へ行かなくては。男性へ移動することを伝えたらうなずいたので、イムロが乗るハルシーピの首へ縛りつけるように騎乗してもらった。僕とレイパスじゃ、まあ制御できなくなるのは目に見えているからね。陸送騎乗用ハルシーピって、のろのろ歩きだとかなり揺れるけれど、スピードが出たらかえってブレずに乗っているのが楽になるんだ。なので、走ってしまうことにした。


 タルクはグラに乗って空へ。そして、先に国境への中継地点である町へ入ってどうにか受けいれ体制を整えてくれることになった。国境を越えたときみたいに、悪徳商人に捕まらないかなあっていう懸念はあったけれど、現状なにもできない僕からそんなことは言えやしない。タルクも、イムロも、僕に振り回されているよな、と思う。ヴェルク=シーヴィに帰ったら、しっかりふたりにお礼を言って労わなきゃ。肩揉みとかでいいかな。

 町に着いたのは、もうすっかり夜更けだった。ハルシーピ舎にレイパスたちを預けようにも、無一文じゃそれもできない。本当に申し訳ないな、と思いながらも町の外でそのまま待機しているように言い聞かせたら、二羽はそろってキュァーと了承してくれた。ごめんね、おなかも空いただろうに。

 タルクはすぐに僕たちのところへやってきて「こっちだ」と先導してくれた。着いたのは馬車や農機具を収める倉庫みたいなところで、その端っこの部屋を借りられたらしい。聞いたらお願いした相手は商人じゃなくて町人とのことだったので、とりあえずタルクがドナドナされる危険はなさそう。よかった。


 着替えとかを入れて持ち歩いていた肩下げバッグを丸めて、男性の枕にした。横になるのはむき出しの堅土だけれどしかたない。井戸も使っていいってことだったので、水を汲んできて飲んでもらった。熱がひどい。脂汗も。これ、全治何カ月だろうか。ここまでしないと……死にかけるような思いをしないと、逃れることができない身分ってなんだろう。


「あの……まだ、お名前は教えてもらえませんか」


 水を口にした後、荒い息をつく男性へそっと聞いてみた。男性は目を伏せて「国境を、越えてからだ」と言い、眠りについた。

 それは、なんとなくだけれど、僕たちを警戒してではない気がした。

 むしろ、他のなにか……聞くことで僕たちが、なにか責任を負わされるとか、そういうことを懸念してではないかと思えたんだ。

 眠りを妨げないように部屋の外に出て、僕はタルクとイムロにそう告げた。ふたりも、僕の考えに同意した。


「賤当民っていうのが、どういう人間がなるものなのか知りませんが……どう考えても元はと言えば軍属の人間だと思います」

「ルムスの27っていう数字、軍の上の人とかになれるって意味だと言ってたよね。そのくらいだったのかな」


 小さな声で、三人でこそこそ立ち話。周りにはだれもいないけれど、聞かれてうれしい内容でもないから。

 タルクは、黙って眠っている男性の方向を見ていた。


「じゃないっすかねー。船でも頭領だったんでしょう?」

「うん、みんなを引っ張る役目をしていた」

「なんか、そんな空気感ですもんね。たぶん、普通にやり合ったら、俺敗ける気がする」


 イムロが言った言葉に、僕はその真剣な表情を見た。

 そうなんだよね。イムロも、タルクも……いざとなったら闘わなければならない、戦士であり、騎兵だ。


すみません、9:00にリロードお願いいたします……!

【8ː03追記】

ありがとうございました、追記しました!!!!

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