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真相

ドラゴンの巣に連れて行かれたホーディはドラゴンになんとか意思を伝えて山の麓にある小さな村に運んでもらった。

「ありがとうね!じゃあバイバイ、ワーマさんによろしくね」

「ガウ!」

 相変わらず小さいドラゴンはワーマの所でお世話になっていると勘違いしているホーディはドラゴンに別れの挨拶をして村の中に入っていった。

 ホーディが村に入ると家の前で人集りができ何か揉めているようであった。

 ホーディは全く知らない村であるがズカズカと人集りに近付いて輪の中に入っていった。

「こんにちは!」

 突然知らない男が会話に入ってきて村人達は驚いたがその中の老人がホーディの相手をした。

「これはこんな村に旅人とは珍しい……しかしすいません、今はなんのおもてなしも出来ないのです」

「何かあったんですか?」

「それがこの家の子供が熱を出したのですが薬が無くて……」

「だから今から薬を取りに行くんです!」

 老人がホーディに話していると子供の母親らしき女性が涙ながらに会話に割って入った。

「だからって今出たら夜になっちまう!危険だ!」

「でも!」

 村人達は必死に母親を説得しているが母親は我が子の為に今にも飛び出してしまいそうだ。

「じゃあ俺が行きます!」

 そんな中、手を上げて立候補したのは全くの部外者であるホーディであった。村人は突然の事に驚いている。

「え!そんな、旅のお方にそんな事は」

「俺若いですし走れば直ぐに着きますよ!」

 母親の言葉にホーディは笑顔で答えた。勿論ホーディは薬がある街の場所なんて知るわけがなく、どれだけ走ればいいかも分かっていない。

 そんな事も知らない母親はホーディの手を握り涙を流し感謝した。この村に一人で訪れたのだからきっと大丈夫なのだろうと勘違いしていた。

「ありがとうございます、旅のお方。ここから真っ直ぐ行くと街があります。大きな時計台の近くに薬屋があるので、そこなら薬があるはずです」

「分かりました!直ぐに行きます!」

 母親から街の情報を教えてもらうとホーディは迷わず村を飛び出て走り出した。

「あっ!お金!それに何の薬かも……」

 母親がホーディを呼び止めようとしたがホーディはあっという間に去ってしまった。

 この小さな村は森の中にあり、ホーディは森の中に作られた荒れた道を走って行く。ホーディは街までの距離を知らないがとりあえず道なりに進んで行った。

 ホーディが走っていると森の奥から鳴き声が聞こえた。ガサガサと森の奥の方から何かが動く音がする。ホーディが立ち止まり音のする方を見ると小さなドラゴンがひょっこり姿を現した。

 実はドラゴンはホーディが村を出てからずっと後をつけていた。しかし森の中でホーディを狙う魔物を見つけてそれを狩るとその魔物が悲鳴をあげてしまった。このまま隠れるわけにはいかないと思ったドラゴンはホーディの前に姿を現したのだ。

「あれ?どうした?帰らなかったのか?」

「ガウ!」

 ドラゴンはホーディの前に出ると背を向けて乗るように頭で合図した。

「乗せてくれるのか!」

「ガウガウ」

「ありがとう!」

 ホーディはこれで三回目なので遠慮なくドラゴンの背中に乗り込んだ。

 ドラゴンはホーディが背に乗ったのを確認すると羽ばたき一気に空高く上っていった。

 ドラゴンが羽ばたけばホーディが走っていた速さの何十倍の速さで空を進んでいく。ホーディは顔面に当たる風が強く目を開ける事が出来なかった。

「うお!速い!これなら直ぐに村に着く!」

 しばらく飛んで顔面に当たる風が弱くなったところでホーディは目を開けて下を見た。

「あった!あそこだ!」

 ホーディが指差す方には森の中にある集落が確認できた。ドラゴンはホーディの指示の下その集落の前に着陸した。

 ホーディがドラゴンから降りて集落を見てみると何か違和感があった。柵も門もどこか作りが荒く、決して丈夫そうに見えない。異臭も漂い何か柵の向こうから人間じゃないフゴフゴした変な声が聞こえた。

 鈍感なホーディですら違和感を感じて立ち尽くしていると柵の上からゴブリンが顔を出した。そこでようやくホーディは理解した。

「あれ?ここゴブリン村だ!」

 ゴブリンはホーディを襲おうと武器を持ち門を開けたがホーディの後ろにいたドラゴンを見ると今度はゴブリンの動きが止まった。

「グガアアアアアア!!」

 ドラゴンが咆哮を上げるとゴブリンは集落に逃げ込んだ。

 しかし集落を囲う柵も門もドラゴンの前では意味がない。ゴブリンは集落の反対側に行きそこから森の中へ消えていった。

 集落の中でドラゴンの咆哮を聞いたゴブリンも逃げ出すゴブリンを見て我先にと集落から逃げ出して森の中に消えていった。

 集落にいたゴブリンは五十は超えていたがその全てが集落を捨てて何処かへ走っていった。そしてそのゴブリン達と鉢合わせたのがトナーリャに向かう途中のオウフェであった。

「ありがとう!急いで薬を貰いに行こう!」

 ゴブリンを追い払ってくれたドラゴンに感謝しながらホーディは再びドラゴンの背中に乗り込んだ。

 ドラゴンが飛び上がると遠くに大きな街らしきものが見えた。今度はしっかりとした城壁があり人間が住んでいるのは見間違いようなかった。

「よし!見えてきた!今度こそ人の街だ!」

 ドラゴンが街を目指して飛んでいくがホーディは街を見ながら首を傾げた。どんなに探しても大きな時計台が見つからない。大きな時計台は無いが街の中心にそれはそれは立派な城が立っていた。

「あれ?おかしいな……もう少し低く飛べる?」

 ホーディのお願いを理解したドラゴンは高度を下げて街の上空を旋回した。ホーディはその状態でもう一度注意深く街を観察したがやはり大きな時計台は見当たらなかった。

「やっぱりここ王都だ!行き過ぎた!」

「ガウ?」

 何度も王都の上空を旋回しようやくここが王都だと気付いたホーディはドラゴンにお願いして引き返すことにした。

 ちなみにホーディが目指している街は王都よりも小さく、ホーディが探している薬は当然王都の薬屋でも売られていた。

「戻って!戻って!行き過ぎたみたい!」

 ホーディが慌ててドラゴンにお願いするとドラゴンは急旋回してこれまで飛んできた方向に向き直った。

 ホーディのお願いに急いで応えたドラゴンはうっかり城壁の屋上に掲げられていたトナーリャの国旗にぶつかり引き裂いてしまったがホーディはそれに気付くことはなかった。

 ドラゴンは大急ぎでこれまで来た方へ引き返す。ゴブリンの集落を飛び越え、森を抜けていく。そしてあっさりと王都よりも小さいがそれなりの大きさの街を見つけた。

 その街の中心に大きな時計台が見える。そして薬を飲んで頼まれた小さな村も僅かに視界に入った。

「あれだ!もっと近くにあったんだ」

 ホーディの言った通りドラゴンが速すぎるあまり目的の街はホーディが目を瞑っている間に通り過ぎていた。

 ドラゴンが街の外に降り立ちホーディを下ろした。

「ありがとう!ここで待ってて」

 ドラゴンにお礼を言うとホーディは走って街の中に入っていった。

 街の中心にそびえ立つ時計台を目指し、その周囲にある薬屋を探した。そして薬屋の看板を下げている店を見つけると息を切らせながら駆け込んだ。

「薬をください!」

 ホーディは扉を開けて直ぐに大きな声で注文した。大声に驚いた薬屋の店主だが当然の疑問を口にした。

「薬って何の?」

「え?確か熱が出てるとか」

 ホーディは急いで薬を取りに行くあまりどんな風邪か、何の薬が必要なのかも聞いていなかった。その為ホーディは子供が熱を出している以外の情報が無かった。

「他には?熱が出る風邪に出す薬はいろいろあるんだよ」

「えっとじゃあ一通り下さい」

「お金はあるのかい?」

 ホーディはパンパンのカバンをカウンターに置いた。ガシャンと音を立てて置かれた鞄からは金貨が溢れ落ちた。それを見た店主は言葉を失った。

「これで足りますか?」

「……え?ああ……足りるよ」

 ホーディは薬屋で熱を出した時に効く薬を高価な物から安物まで一通り買い込み箱に詰め込んで店を出た。あれだけずっしりとしていたホーディの鞄はすっかり軽くなっていた。

 ホーディは街の外で待っているドラゴンに乗り込み薬を待っている母親の下へ急いだ。ドラゴンに乗れば三十秒もかからず村に到着した。

 村の外でドラゴンを待たせてホーディは薬が入った箱を抱えながら母親の下へ向かった。

「ありがとうございます。これで息子も助かります」

 ホーディから薬が入った箱を受け取った母親は泣いてお礼を言った。何人もの村人からもお礼を言われたホーディだがほとんどドラゴンが頑張ってくれた為謙遜するばかりであった。

 村人からのお礼も一通り終わるとホーディは村の外で待たせているドラゴンの下へ戻ってきた。

「待たせてごめんね。それで今日はこの村でもてなしてくれるって、君も来る?」

 ホーディの質問にドラゴンは首を横に振り申し出を断った。ドラゴンも本来人間とは相容れない事は理解している。

「そうか、ワーマさんのとこに戻らないといけないよな」

 勝手に納得したホーディは少し考えてると「ちょっと待ってて」と言いドラゴンを残して村に戻っていった。

 しばらくすると箱一杯に干し肉や果物を詰め込んでホーディが戻ってきた。

「はい、いっぱい貰ってきたよ。今日はありがとう」

 ホーディは今日のお礼にとドラゴンに贈り物を渡した。

 しかしドラゴンは困ってしまった。ホーディを助けたのは自分を檻から出してくれた恩からであり、贈り物を貰うと恩を返したとは言えなくなってしまう。

 義理堅いドラゴンは少し考えると自身の鱗を数枚取りホーディの鞄に捩じ込んだ。

「え?鱗?くれるの?竜の鱗って貴重なんでしょ?」

「ガウ!ガウ!」

「よく分からないけどありがとう!」

 喜んでいるホーディを見たドラゴンは満足して大きなドラゴンが待つ巣穴に向かって飛び立った。

「じゃあねーワーマさんによろしくねー」

 ホーディは大きく腕を振ってドラゴンに別れの挨拶をした。

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