表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/36

ゴーマン王子

イテハルン王国侵攻を中止しドラゴン討伐に作戦を切り替えたゴーマンは作戦室で部下からの報告を待っていた。

 しばらくすると作戦室の扉が開かれ一人の騎士が入ってきた。ゴーマンは待ちきれず騎士の報告を聞く前に自ら切り出した。

「オウフェの奴は出たか」

「はい、王都を出てイテハルンに向かっております」

「ふっ何も知らずバカな奴だ」

 ゴーマンはオウフェの事を鼻で笑った。完全にオウフェを出し抜いたと確信したゴーマンは既に国王の気分であった。

 ほんの僅かな時間国王気分に浸ったゴーマンは部下を集めドラゴン討伐の為の作戦を練ることにした。目撃証言を分析してどの地点にドラゴンがいるか割り出そうと話し合っていると、突如作戦室の扉が開かれた。

「ドラゴンが王都に向かってきています!」

 作戦室に勢いよく飛び込んで来た兵士の報告を聞いたゴーマンは興奮のあまり椅子を倒しながら立ち上がった。

「はっは!神は私に味方したようだ!まさか向こうからきてくれるとはな!探す手間が省けたぞ!」

「まさにゴーマン様が国王になるのは神のお導きです」

 高笑いをするゴーマンと同じく騎士達も興奮を抑えきれないでいた。

「緊急警報をだせ!」

 ゴーマンは兵士に命令したが報告に来た兵士はそれを躊躇った。

「しかしどうやらまだ幼体らしく、緊急警報を出すほどでは」

「構わん!国民の不安を煽るのだ!」

「はっ!」

 兵士はゴーマンに怒鳴られると作戦室を飛び出して走り去った。

「これで民を味方につける。戦争に明け暮れる愚か者とドラゴンを倒した英雄。どちらが支持を得られるか明白だ」

 ゴーマンは勝利を確信した笑みを浮かべていた。

 そこからの動きは早かった。王都中に緊急警報の鐘を響かせて国民を家の中に避難させた。騎士達はドラゴンが出た事を触れ回り国民の不安を煽りに煽った。王都の門を閉めて厳戒態勢を敷き、ただならぬ状況だと嫌でも理解させた。

「ドラゴンが出たんだって?」

「オウフェ様は今いないぞ、どうするんだ」

「あれはゴーマン様の騎士じゃないか?」

 ゴーマンの思惑通り国民達を不安に陥れ、そしてゴーマン直属の騎士を王都中に派遣する事で国民はゴーマンに救いを求めた。

 ゴーマンも特注の鎧を装備してドラゴン退治に出向こうとしたが兵士が報告にやってきた。

「ドラゴンが去りました」

「被害は無いのか?」

「ありません」

 王都に被害が出れば更に国民は不安になりゴーマンを支持したであろう。予想が外れたゴーマンは悔しそうな表情を浮かべたが直ぐに切り替えた。

「ちっ、まあいい。後は盛大に出立してドラゴンを追うぞ」

「はい」

 そしてドラゴンは今し方出現したのにも関わらず何故か万全の準備を整えたゴーマンは騎士を引き連れて堂々と城から国民の前に現れた。

 家の中で怯えている国民に見せつけるようにゴーマンは王都の大通りを行進していく。

 迫力ある騎士達を引き連れたゴーマンの姿を見た国民は家が飛び出しゴーマンに向かって歓声を上げた。それはオウフェが出立した時と違い心からの声であった。

 そんな国民からの期待を一身に受けたゴーマンは満足気に大通りを行進していくが目の前から息を切らせながら兵士が走って来るのが見えた。

「大変です!」

 兵士はゴーマンの前に立ち行進を止めたが息を切らせており言葉で出てこない。本来王族の行進を止めればその場で切り捨てられてもおかしくないがゴーマンはそれをしなかった。

「何だ?またドラゴンか?」

 ゴーマンは嬉しそうな表情を抑えきれなかった。またドラゴンが出たなら今度こそ討伐してみせると興奮していた。国民の前でドラゴンに立ち向かうと宣言し駆け出せば国民は熱狂するに違いなかった。

 しかし兵士からの報告はゴーマンの考えを大きく外れるものであった。

「オウフェ殿下です!オウフェ殿下が王都に攻め込んで来ています!」

 その場の誰もが兵士の言っている事を理解できなかった。国民も騎士もそして誰よりもオウフェを嫌い、同じ野望を持つ為全てを理解しているゴーマンでさえ。

「何だと!どういう事だ!奴はイテハルンに向かったはずだろ!馬鹿な事を言うな!」

 ゴーマンは群衆の前にも関わらず焦り兵士を怒鳴りつけた。しかし兵士は怯えながらも報告を続けた。

「分かりません!閉じている王都の門を壊しています!」

 ゴーマンは訳が分からなかった。ただオウフェが攻撃仕掛ける理由は一つしかない。王座である。

 何らかの理由でオウフェは遠征から急遽戻りゴーマンがいる王都を攻撃しているのだ。そして門を破れば次にやる事はゴーマンを討つ事になるだろう。

 それならゴーマンはただ黙って見ているわけにもいかない。このまま指を咥えて見ていれば実力行使によって王座が奪われてしまう可能性がある。ゴーマンがやるべき事は一つであった。

「こっちも兵を出して鎮圧しろ!奴等の好きにさせるな!」

「はっ!」

 騎士達に迷いがないと言えば嘘になるがそれでもゴーマンの命令に従いオウフェとその騎士団を鎮圧しに駆け出した。

 ゴーマンは数人の騎士を引き連れて城に引き返した。先程の歓声が嘘のように群衆は混乱し誰もゴーマンの事を見ていなかった。

「何がしたい……血迷ったか……」

 ゴーマンは苛立ち、焦り、唇を噛み締めた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ