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ロマク侯爵

リトスの叫び声を聞き、無事乗るべき馬車に乗ったホーディはのんびりと馬車旅をしていた。

 街に着き宿に泊り、そしてまた馬車に揺られる。己が国外追放された事など知らないホーディは呑気に旅をそれはそれは楽しんでいた。

 街に着き同行者が変わる度に仲良くなり、そして次の街で別れる。ホーディが乗る馬車は笑いと笑顔が絶えなかった。

 そんな旅をしている時、ふと外の景色を見ると遠くになんだか見覚えのある山が見えた。それは特に変わった特徴の無い山だがホーディには何故か見覚えがあった。

「なんか見たことある気がするなー」

 ホーディは少しずつ大きくなる山を見ながら記憶を振り返っていると道端に立てられた看板が目に入った。

「ロマク鉱山、危険な為関係者以外立ち入り禁止」

 その看板に書かれた文字を見てホーディは瞬時に思い出した。

「あっ!あの鉱山か!」

 この山はかつてホーディが奴隷として送り込まれ、汚いやり方で奴隷にされた者を死ぬまで働かせる悪名高き鉱山であった。

 ホーディは会話に夢中で気付いていなかったが最初から鉱山送りにされた時と全く同じルートを辿って旅をしていた。

 ホーディは御者に質問をした。

「ここってロマク侯爵の領地っすか?」

「そうだよ。え?知らなかったのか?」

 自分がいる場所を理解していないホーディに御者は驚いたが当の本人は全く気にしていない。

「そうかー……じゃあ挨拶しないとな!」

 ホーディはこのままロマク侯爵がいる街を通り過ぎる予定であったがそれを変更してロマク侯爵に挨拶することにした。


 ロマク侯爵が住む屋敷には大きな門がありそこから広い庭を通らなければ屋敷に辿り着けない。屋敷の大きさは貴族のステータスであり、屋敷や庭を見るだけでロマク家は大貴族だと子供でも理解できた。

 そんな門の前には二人の男が警備していた。

 警備しているとは言えその勤務態度はだらしがなく、公爵家に仕える門番にしては品性が無いように見えた。

 それもその筈、この二人は侯爵家が安値で雇った傭兵である。楽な仕事だと飛びついた二人は毎日こうして門の前に立ち怪しい人物の侵入を防いでいた。

 しかし最近ではロマク侯爵がパーティーを主催するとの事で頻繁に人が出入りしている。不真面目な二人はいちいち身体検査をするのを面倒臭がり、特に入っていく人達を止めもせず素通りさせていた。

「はーあ」

 背の高い門番はつまらなそうに大きく欠伸をした。門番は楽な仕事だがつまらない。侯爵家に仕えると聞き喜んで仕事に就いたが思ったより待遇が悪く、それも彼の勤務態度に反映されていた。

 欠伸をした背の高い門番に隣の太った門番が質問をした。

「なぁお前はどうする?」

「何が?」

「このままここで働くか?なんか侯爵様経済的に危ないらしいじゃん」

 太った門番が聞いた噂ではロマク侯爵は困窮しているらしい。なんでも悪い噂が絶えなかった侯爵が遂にその悪事がばれ、その隠蔽に高くのお金を費やしたとか。

 そんな噂を聞けばいつまでもこの仕事にしがみつくわけにはいかない。そもそも侯爵家の門番を低賃金で募集していた時点で気付くべきであった。

「そうだなー、賃金も減らされてるし次の支給日で辞めるかな」

 背の高い門番はぼんやりと空を眺めながら答えた。その門番の答えを聞き太った門番はニヤリと笑った。辺りを見回してコソコソと背の高い門番に近付き小声で話し始めた。

「それでよトナーリャで傭兵を集めてるって聞いたか?それもかなりの高額で」

「本当か?じゃあそっちに行くかな」

「そうしようぜ」

 それから二人はまだ貰ってもいない高賃金を何に使うと妄想を語りあった。久々に酒を浴びる程飲みたいし、そろそろ武器も新調したい。売春宿で過ごすのもいいだろうと、公爵家の門の前で品性のかけらも無い話をしていると、

「こんにちはー、ロマク侯爵に会いに来ました」

 その間をホーディは挨拶をしながら通り過ぎた。そしてそのまま迷うことなく屋敷に向かっていった。

 あっけにとられた二人は顔を見合わせた。何が起きたか分からない二人はしばらく無言で見つめ合った。

「知り合いか?」

「いや?お前の知り合いじゃないのか?」

 太った門番は背の高い門番に聞いてみたが違うらしい。

「俺の知り合いじゃない。あまりに自然に通ったから」

「じゃあ屋敷の人間じゃないか?パーティーだなんだで出入りも多いし」

「それもそうか。それよりトナーリャには有名な酒場があってな……」

 二人は門番としての仕事を全うせず、ホーディを追いかけ事なくまた雑談に花を咲かせた。

 

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