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一時の別れ

ギルド長会議から商人ギルドに戻ったショーンは会議の内容をアンに話した。

「トナーリャのギルドで働かせる?!」

「まあ、そう言う事だ……」

 驚いているアンにショーンは歯切れ悪く答えた。副騎士団長から厳命されておりトナーリャが侵攻準備をしている事を話してはいけなかった。その為ショーンはアンに重要は部分を省いて説明をした。それが余計にショーンの言動の怪しさを際立たせた。

 そんな挙動不審なショーンにアンは直ぐに何かあると気付いた。

「なにか隠してませんか?」

 ジトッとした視線を送るアンにショーンは冷や汗をかきながら慌てて否定する。

「いや!何も隠してない!ウチにはもう紹介できる仕事は無いし!これ以上ここで問題を起こされると私の限界が来てしまう!それにトナーリャのギルドには求人が出ている!何も問題は無い!」

 必死で理由を並べるショーンをアンはますます怪しんだが、口からスラスラ出てきた理由についてはどれも納得出来るものであった。

 これでもショーンはギルド長でアンはその部下である。なんとなく怪しいだけで部下が上司を追求することなどできない。とりあえずアンは不信感を飲み込み現実的な話をした。

「ですが向かうまでの運賃はどうするのですか?お金が無ければ行けませんよ?」

「それはこちらの事情で行くのだから全額ギルドから出す。宿泊費もこちら持ちだ。通行証も用意する」

「随分と手厚いですね」

「こちらが紹介するのだそれぐらいの誠意を見せなければ」

 どれだけアンが懸念点を指摘してもショーンはこれまで聞いた事のない待遇を用意している。それほどまでにホーディを追い出したいのだろう。

 そして出てくるのはやはりショーンへの不信感である。なんとしてでもショーンを追い出したいという強い意志を感じた。

「何かやましいことでも?」

「だから何も無いと言ってるだろ!とにかく奴が来たら直ぐに紹介して向かわせるんだ!」

「はぁ……」

 アンの追求を無理矢理終わらせたショーンは足早に去っていき自身の執務室に逃げ込んだ。


 数日後、ホーディとリトスは都の端にある馬車の停留所の前にいた。この停留所からは多くの馬車が出ており、ハルフルト王国の端から端まで運行している。

 アンからトナーリャの仕事を紹介されたホーディはそれを何の疑いもなく快く快諾した。しっかり者のリトスも商人ギルドの決まりについて何も知らないのでホーディが隣の国に行くのもそういうものかと納得していた。

「じゃあお兄ちゃんまたね」

「元気でな」

「村に戻って色々片付けたら直ぐに追いかけるから」

 リトスは村を出て来たがそれはホーディを探す為であり、まだ村で色々とやり残してきた事があった。その為一度村に戻り再度ホーディと共に暮らすことにした。そのためここでは別々の馬車に乗りしばしの別れである。

 感動の再会を果たした兄妹の別れであるがホーディは特に悲しそうでも寂しそうでもなかった。

「リトスまで来なくていいのに」

「駄目!一人しかいない家族なんだから。それにお兄ちゃんを一人にするのは心配」

「リトスは心配性だなー」

 リトスは心配しているがホーディは能天気に笑っている。

「必ずトナーリャの商人ギルドに行ってね。私もそこに行くから」

「分かってるって」

「本当に行くんだよ!」

「大丈夫だって」

 トナーリャでは商人ギルドを待ち合わせの場所に指定したリトスはそれを何度もホーディに伝えた。そんなホーディは「大丈夫、大丈夫」と余裕の笑顔を見せている。それが余計にリトスを心配させた。

 リトスは最後までホーディを心配して故郷に向かう馬車に乗り込んだ。乗り込んだ後も心配そうにホーディと会話を交わし約束をこれでもかと念押しした。そして馬車が出発するとホーディは大きく手を振り見送った。

「じゃあまたなー」

「ちゃんと言う通りにしてよー」

 リトスはホーディが小さくなるまで心配そうに遠くから見つめている。そんな事を気にしないホーディは元気よく歩き出した。

「よし!俺も行くか!」

 ホーディは自信満々に馬車に乗り込もうとすると遠くからリトスの声が響いてきた。

「お兄ちゃん!そっちの馬車じゃなーい!」

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