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国外追放

「ホーディを国外追放する」

 ギルド長会議で副騎士団長が放った言葉に一同騒然とした。

 国外追放は刑を執行できない地位の高い貴族や役職持ち、海外の重要人物などを処分する特別措置である。それをなんの地位も権力も持たない一般人であるホーディを追放しようと言うのだ。

「つ、追放ですか?」

 最初にショーンが質問をした。もちろんショーンの表情には驚きと戸惑いが入り混じっている。

「そうだこの国から出て行ってもらう」

 そう言い切った副騎士団長の答えに疑問を呈したのは冒険者ギルドのハンスであった。

「それはどんな根拠でだ?奴はおそらくトラブルを起こしているが犯罪をしている訳じゃない。正当な理由がなければ追放処分はできない筈だ」

 国外追放には正当性が無ければいけない。もし一般人の追放処分が簡単にまかり通ればそれは市民への弾圧に繋がり強権国家になる恐れがある。ハンスはそれを危惧していた。

 そんなハンスの圧にも副騎士団長は臆さず答えた。

「こちらとしてもこのような決断を下した事を恥じている。しかし今差し迫っている問題があるのだ」

 副騎士団長は辺りを一度見回した。そして一息つき口を開いた。

「隣国のトナーリャ王国が侵攻してくる兆しがある」

 トナーリャ王国。それはこのイテハルン王国と国境を接する大国である。国同士の関係は特別悪くはないがトナーリャ王は欲深い男だと知られており、チャンスさえあればイテハルン王国を狙っていると言われている。

 誰もが副騎士団長の発言に固まり声を出せずにいる。トナーリャ王の噂は有名だが、所詮ただの噂でありまさか本当に侵攻するとは思ってもみなかった。

「驚くのも無理はない。しかし密偵からの情報と物資の動きを見て我々はそう結論付けた」

 副騎士団長の言葉には迷いがなかった。嘘や冗談の類でなく、本当にこの国に危機が迫っているのがその真剣な表情から察せられた。

「だが何で今なんだ?戦争するにも理由があるだろ?」

 工房ギルドのトゥーリオが疑問を口にした。

「我が国は何故だが分からんが立て続けに問題が起き混乱状態にある。その隙を突くつもりなのだろう」

「それでホーディを追放ってわけか?」

「また問題が起きれば間違いなくトナーリャ王国は侵攻してくる。これ以上奴に好き勝手にさせるわけにはいかないのだ」

 ホーディがどのようにして問題を起こしているか、そもそも本当にホーディのせいなのかは未だに分からないが副騎士団長は必ずホーディに原因があると確信していた。

「あくまでこの国から少しの間出てもらうだけだ。例えばトナーリャ王国での仕事を紹介するとかな」

 そう言うと副騎士団長はショーンを見た。それと同時に他の者もショーンに注目する。

 一同の視線を一気に浴びるショーンは額に汗を流しながら口を開いた。

「確かにトナーリャ王国にも系列の商人ギルドはあります。紹介するのも可能です。しかしいきなりトナーリャの仕事を紹介するのは無理があるのでは?」

「それを何とかするのがお前の仕事だろ!」

「ええ……」

 何故だかトゥーリオに詰められたショーンは何も言えなかった。

「もしトナーリャ王国に追放して問題を起こせれば戦争は回避出来るかもしれん。これは仕事の紹介等と言う小さな話では無い!国の存続がかかっているのだ。理解してくれるな?」

 副騎士団長は説得している口ぶりだがその目は有無を言わせぬ程鋭くショーンを凝視している。これはお願いではない、権力と威圧を組み合わせた絶対的な命令であら。

「こちらとしてもこれ以上問題を起こされるのは辛いな」

「冒険者ギルドも戦争になるのは勘弁だ」

「老い先短い老人には平穏な生活がいいね」

 トゥーリオ、ハンス、ミラールと口々に自分勝手な事を言い、チラチラとショーンを見た。誰も口振りは軽いがその目は「絶対に断るなよ」と強い意志を感じた。

 この場にショーンの味方は誰一人いなかった。もはやショーンに残された道はない。

「分かりました……」

 そうショーンが呟くと安心したようにホッと胸を撫で下ろした。

 あっさり折れたショーンだがホーディから解放されるならそれもいいかと納得した。

 

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