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新たなお誘い

「魔導士ギルドですか?」

 商人ギルドの受付で新たな仕事を貰おうと相談しに来ていたホーディは思わぬ言葉に驚いていた。そんなホーディを正面に座るアンはいつもと変わらぬ表情で淡々と話していく。

「はい、ギルド長が魔導士ギルドに相談したらホーディ君を調べてくれると」

「魔導士ギルドと仕事先が潰れるのと何か関係があるんですか?」

「もしかしたらそう言う呪いの可能性もありますので」

 何故魔導士ギルドに行かなければならないかと疑問に思っていたホーディだが、アンが言った呪いと言う言葉にホーディは目を見開いた。これまで気付かなかった呪いという視点に感心した。完全に盲点であったのだ。

「なるほど!呪いか!……え!俺呪われてるんっすか?俺元気ですよ?」

「いえ、だからそれを調べる為に魔導士ギルドに行って下さい。こちらが魔導士ギルドへの地図です」

 アンは話を聞いているのか分からないホーディを宥めつつ地図を取り出した。アンが魔導士ギルドへの地図を渡すや否やホーディは立ち上がった。

「ありがとうございます!では行ってきます!」

 元気にお礼を言い、手を振りながら小走りで去っていくホーディをアンは心配そうに見送った。

 周りの職員もホーディの事は知っており魔導士ギルドに期待を寄せ、去っていくホーディに暖かな視線を送っていた。

「何か分かればいいんだけど」

 アンは独り言を呟きギルド長の執務室へと向かった。

 

「無事ホーディ君に紹介しました」

 アンが執務室で仕事をしているショーンに報告するとショーンの顔は明るくなった。

「いやーよかった。これで心配事が無くなった」

 ショーンは笑顔で体を伸ばして解放感を満喫した。中年になり無理がきかなくなった体は伸びた事によりあちこちバキバキいっている。だがショーンは今そんな事を気にしていない。

 そんなショーンをアンは不安そうに見ている。別にショーンの体を心配しているわけではない。

「でも魔導士ギルドに向かわせてよかったんですか?」

「向こうが言ってきたんだ、それにちゃんとホーディの事は伝えた。ウチは何も悪くない」

 ショーンは自身に責任が及ばない為非常に気楽である。ホテルが潰れた時は死にそうな顔をしていたが直ぐにホーディを押し付けることができ心労は何一つ無い。その浮かれっぷりにアンが退出すれば一人で小躍りくらいしそうな雰囲気である。

「魔導士ギルドが潰れたらこちらにも被害が出ますよ?」

「大丈夫だって、ミラールさんは彼を観察する為に呼んだのだから流石に働かせないでしょ?出入りしているだけで潰れるなら真っ先にウチが潰れてるよ」

「まあ、そうですね。それにこれまでの仕事先より安全ですし」

「……そうだね」

 アンの言葉に何故かショーンは言い淀み顔を逸らした。明らかに怪しい態度のショーンにアンはズカズカと詰め寄った。

「なんですか?何か隠してません?」

 ショーンはアンの圧に押されて目を逸らしてとぼけた口調で話した。

「いや、ミラールさんも法に抵触するような事はしないはずだよなーって」

「過去に何かやったんですか?」

 更に近付きアンは圧をかける。それは受付で見せる優しいアンとは程遠い迫力である。ショーンもそんな怖いアンを見るのは初めてである。最近アンのショーンに対する当たりが強い。

「いや、今から三十年も前の事だよ?それからやってないらしいし」

 ショーンの話を聞きアンはフラフラと後退りし頭を抱えた。

「ごめんね、ホーディ君……無事でいてね……」

 アンはただ祈ることしかできなかった。

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