8話目─新しい居場所─
第8話目できました。
今回は少々短めです。
「裏切り者」
「あなたが居なければ死ななかったのに」
「人の皮を被った悪魔!」
「まだ死にたくなかった」
「痛い…痛いよ…」
「俺の首を返して…」
「腕…腕がないよ…」
「母さんに!母さんに会わせてよ!」
止めてくれ…俺じゃない…俺のせいじゃ…
周りには血だらけの人々が怨み言を吐いていて…
そこにはシャルや、死んだ新兵、俺が斬った山賊達…
「早くお前も死ねよ」
「なんでお前だけ生きている」
「肉体が妬ましい…」
「俺を殺した奴が怨めしい…」
俺は目を瞑り耳を塞ぐ事しか…
「うわあああああああああああ!!…ッハァ…夢…か…」
恐ろしく辛い夢だった…
「ん?…ここは?」
そこは石を掘って作ったような部屋だった。
俺は確か巨大な化け物と戦ってたはずなんだけど…
どうしてこんな所に居るのか考えているとドアの向こうから数人が駆けて来る音が聞こえた。
「なんだなんだ!?起きたのかい?」
勢いよくドアが開くと大柄な女性と相対的で小柄な男性が入ってきた。
「どうせ、あのキメラに食われる夢でも見たんだろう情けない」
「こら!ガク失礼だろ!…あたいの部下が失礼したね」
「いえ、すいませんがここは何処なのでしょうか?何故自分はここに居るのですか?」
「あら?記憶ないのかい?じゃあ、説明するよ?」
そう言うと壁際にあった椅子を持って近くに座る女性が喋りだした。
「昨日の夜にキメラが暴れてるって部下から連絡があってね、仲間集めて行って見るとだ!
そこにはキメラの死体とアンタが倒れてたわけだわ、そんで何が合ったのか知りたかったからね。
あんたをアタイらの住処に連れてきたってわけさね」
「…すいません、一つ質問が…キメラというのはあの猿みたいな化け物の事ですか?」
「今時キメラを知らないとはねぇ、…っと自己紹介がまだだったね。
アタイはスー、この変を縄張りにしている山賊の頭さね、んでそこのチビッ子がガクだ参謀をやらしてる」
「誰がチビッ子か!これでも20だ!」
何と…どう見ても14、5歳ぐらいにしか見えなかった…
「俺はシュンと言います、一応ノワル国で勇者として召喚されました」
元だけど…嘘じゃないよな。
「召喚?よくわからないねぇ…まぁ、いいさ、キメラについてだけどね…ガクよろしく」
そう言うと話すつもりはないとばかりにジーっと俺の顔を見始めたスー。
「了解、了解…キメラってのはだ、この大陸の魔獣が何らかの理由で│突然変異体化した事を指すんだ。
昨晩の奴もキメラだ、それとキメラは基本的に知能は低いから意思の疎通等も無理だな。
知能は低いけど極偶に魔法を使える種もいる。
また、大変凶暴で尚且つ、魔族・人間族等多種族が主食となっているため、被害も大きい。
だから、俺達…賊や国、あとは町にある自警団とか冒険者が討伐隊を組んで倒しにいくわけだ」
なるほど、人間達の天敵みたいなものなんだろう。
「ありがとうございます、キメラについてわかりました」
「じゃあ、こちらから質問だ、召喚とは何だ?勇者とは?」
「えっと俺もよくわかってないですが…召喚というのは違う世界の物をこちらの世界に呼び出す魔法の事です。
勇者というのは異世界から召喚した人間の事を指してるようです。
ノワル国が魔族と戦争中なため、その為に救世主として召喚されました」
「ふむ…なるほど、すべてに納得はできんがシュンの言ってる事に嘘はなさそうだな…」
少し間が空くとスーが思い出したように聞いてきた。
「…あっ、ねね!そういえば、あのキメラってアンタが一人で倒したのかい?」
「たぶん、そうだと思います…一応勇者には個々に能力があるらしいので。」
「能力ってなんだい!?」
「えっと、異世界の人間は元々ここの人間と変わらないのですが。
召喚の際に、力が強くなったりと普段は無い力が手に入るみたいなので。」
「よくわからないけど、アンタにもそれがあってその力でキメラを倒したってのかい?」
頷いて答える。
「まぁ、正直よくわかんないけど、様はアンタは物凄く強いって事だねぇ…」
ウチにほしいなぁと言いながら、ガクに視線を向けるスー。
「団長、それは俺に言う事じゃなくてそいつに言うべき事だろう…」
「えーガクの力でなんとかしておくれよー」
そんな事を二人で話してる間にこの先どうするかを考えた。
俺は国を追われている、この人達と一緒に居ればこの人達の命も危ないだろう。
それに、ノワルで俺を逃がしてくれた人…あの人は後で追いつくと言っていたけれど…
「まぁ、山賊なんてやってるからね、国からは狙われるし勇者なんて言われてるんだしねぇ…
ここで会った事は忘れて国にお帰りよ、馬と地図ぐらいなら渡すさね」
国から狙われている…この人達も…それならば、俺の力で守れるなら守ってあげたい。
俺の力でどれだけ守れるかわからないけど。
「あの…スーさん、良ければ俺を山賊団に入れてくれませんか?」
「そうそう、早く帰って…ってえええ!?」
スーさんはたぶん俺が帰りたいと言うと思ったんだろうけど。
俺にも事情はある…駄目ならば東をまた目指せばいいよな。
そう考えながら答えを待っていると。
「な…危険です!もしかしたらスパイで国に情報を売る魂胆かもしれません!」
確かにそう考えられるかもしれない、それならばこちらも正直に事情を話すしかないか。
「理由はあります、俺は今国から裏切り者として国から負われていますから。
それに俺には戦う力がある、命を救ってもらった恩もある、スーさんに俺が出来る事で恩返しがしたいんです」
「追われている?尚更危険だ!お前を追って追跡隊なんて来よう者なら俺達なんて皆殺しだ!」
「ガク!黙ってな!…シュン、あんたはキメラを一人で倒した確かに力はあるようだね。
けど、私達にも戦う力はあるよ、無ければ山賊なんてやってない。
…いいだろう、シュンお前は今このときからうちらの仲間だ!」
「団長!」
「黙ってな!もう決まった事だよ!
それに…アンタは身長だけでなく器も小さいのかい?」
「ああ!もうわかりましたよ!…ったく頑固なんだよなウチの団長は」
「ありがとうございます、スーさんガクさん…」
そう言いお辞儀をすると。
「おおっと!アンタはもうアタイの部下だ!団長と呼びな!」
「わかりました団長」
「俺も一応ここでは団長の次に偉いからな、副団長なんていわれたくないが、参謀とでも呼べ」
「ああ、わかった参謀殿」
昔のあの世界に居た時のような安らぎをここで感じた…
守ろう、この人達を…
「よし!じゃあ、入団祝いだ!今日は飲むさね!」
「団長はいつも飲んでるけどな…」
「うるさいよ!チビッ子!」
「チビって言わないでくださいよ!気にしてるんですから!」
「悔しかったら背を伸ばしてみな」
そう言って素早い動きで部屋を出て行ったスー。
「…ったく…ま!シュン、ようこそとだけ言っておくよ、飯の時間になったら呼びに来る、またな」
そう言って部屋を出て行こうとするガクを見送るが、部屋を出てく瞬間。
「シュン…俺達を裏切るなよ」
そう言葉を最後に部屋を出て行った。
裏切れるわけないさ…
俺の頼れる場所は無いのだから…
夕食は豪華だった。
住処はどうやら山の一部を掘った洞窟のようで、ご飯は洞窟の外で行われた。
聞いた話によると、野菜等は近くで作り、家畜も居るらしい。
山賊団というか、普通に集落を作った人達みたいなイメージを受けた。
また、キメラの皮や骨が高く売れたため、お酒も大量に仕入れる事ができたようで。
山賊団の皆が大喜びをしていた。
また、俺が一人でキメラを倒し、山賊団に入るとスーからの発表で湧き上がる皆。
もっとガクみたいに反対や抗議など起こる気もしていたのだけれど、皆歓迎してくれた。
守ろう、より一層その思いを強くして、俺は山賊団の一人になったんだ。
第8話目了です。
次回はどうしようか悩んでいます。
番外編としてカエデ達の話にするか
普通に9話を公開するか…
誤字、脱字等あればご一報ください。
ではまた。