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6話目─不穏─

ようやく、6話目です

軽く鬱展開気味ですので、ご注意を…

気付いた時は、すでに村に到着していて。

俺は昨夜泊まった部屋のベッドで寝かせられていた。

服も着替えさせられていたようだ。


気だるさに抗いながらも上半身を起こす。


昼間の事を思い出すと震えや吐き気が襲いかかってくる。

何故、俺はこんな所に居るんだろう。

自分が生き残る為に人殺しをした…

この、漫画の様な世界に来たせいで…


心の中で俺は世界を呪う。

どうして俺が……俺が何をした?

なんでこんな事にならなければいけない。

俺は、ただ普通に暮らしてただけなのに。

いっそ、死んでしまった方が楽なんじゃないか。

延々と…延々と思考が渦巻いている…


コンコンッ


「シュンさん、起きてますか?」

誰かの声で、思考がプツリと止まった

「あ、ああ」

「よかった…、入ってもよろしいですか?」

「ああ、大丈夫だ」

失礼しますとカエデが部屋に入ってくる。

ベットの脇に置いてあった椅子に腰掛けると

「昼間はお疲れ様でした、今は食欲とかありますか?」

昼間の、殺し合いの映像が頭に流れ吐き気が襲うがなんとか留める事ができた

「ごめん、今はちょっと食欲ない…かな…情けないな」

カエデは普段通りなのにと自己嫌悪になる。


「シュンさんは情けなくなんてないですよ!」

「え?」

その、カエデの言葉に驚きながらも彼女の顔を見る。

彼女は笑顔で。

「たぶん、シュンさんの反応が普通なんだと思います。

 私は子供の時から薙刀術を学んでいました…

 高校でも薙刀部に入っていまして、高校1年の時に部活内での試合で主将にも勝ちました

 その帰り道に、主将が不良グループ10人を使って私を襲わせたんです。

 『お前のせいで、こうなったんだ、後悔して犯られちゃいな』って…

 その時薙刀を私は持ってたので、抵抗したんです。

 家でも薙刀を習っていましたので、対人戦闘は大丈夫でしたから。

 むしろ、その時すごく楽しかったんです。

 なんて快感なんだろう充実されるんだろうって…

 人を殴るのが骨を折るのがすごい嬉しかった。

 だから、今日のあの戦いも私はすごく楽しかった嬉しかった。

 けど、こんな私の方が異常なんです。

 むしろシュンさんが私は羨ましい…

 人の命を尊いと思える、罪悪感に苛まれる

 人間的で良い事だと思います。

 確かに人の命を奪ったのは事実ですが…

 それを悲しみ後悔する気持ちは大事だから……

 だから人殺しに慣れず、辛いと思う気持ちは悪い事じゃないと思います。

 だから、あまり自分を責めないでください…」

カエデの言葉に少し…救われた気がした…

「……ありがとう」

「え…?い、いえ!すいません、私も変な事言ってしまって…」

「いや、少し気が楽になったよ…うん、後悔はある、けど生きる為にあの世界に戻る為

 辛いけど、押し潰されるかもしれないけど、早く戻れるように進もうと思う」

「はい!、私もシュンさんを支えられるように、守りますから」

と言った瞬間カエデの顔が真っ赤になった。

「あ…す、すいません!私、食事持ってきますね!」

そう言うとすごい速さで部屋を出て行って、俺一人部屋に残った。


「ふぅ…とりあえずは、魔王打倒って事かな…なるべく人を殺さないようにしたいな」




…翌日、俺達は村を後にして城に戻る事となった。

ただ、重装歩兵隊10人と馬車が、俺達を運ぶ馬車以外全て無かったが。




「それにしても、コウタの魔法はすごかったですね」

道中、カエデがコウタに昨日の戦闘の時に最初に使った魔法について質問していた。

「ん?ああ、あれな本当なら詠唱とか必要らしいけどな

 ぶっちゃけ詠唱とかめんどくせーから腕に風が回ってるのイメージして、それが出来たら前に飛ばすってだけだ」

まさかあんなに威力あるとは思わなかったけどなと、嬉しそうに笑顔で答えるコウタに。

少しだけ嫌な気分になった。

気分を払うべく俺もコウタに質問していく

「イメージで魔法って撃てるもんなのか?」

「ああ、なんか勇者は基本的に皆そんな感じらしいな、後は高位の魔術師とかか、それでも限度はあるらしいけどな」

ふむ…俺も魔法を使えればいいんだが、属性がわからないしな。

手の周りに風のイメージをしたが全然シックリこなかった…

「あ、できた…」

と、声がしたので横を見てみると、カエデの人差し指あらライターから出るぐらいの火が出ていた。

「うお、さすがカエデだな」

「ありがとう、出すと少し気だるく感じますね…」

「それが魔力消費ってらしいぜ?よくわかんねーけどな」

なるほど、イメージで出すようなものだから、精神力的なものを使うんだろう。

「これなら、武器に火を纏わせるイメージをすれば火を纏った武器になりそうですね」

「ああ、それが付与魔法って言うんだとよ、ただ、常にイメージし続けないといけないから面倒くせーしやらねーけど」

「なるほど、確かに…イメージし続けながら戦闘するのは骨が折れそうですね」

正直、今魔法の使えない俺からしたら中に入れる話題じゃない。

昨日か…多少気が楽になったとはいえ、辛い口に広がる苦味を忘れられる気はしなかった…




夜になろうかという時間に城についた。

王への報告は翌日との事で、今日は部屋に戻り寝る事にした。





━━Side ギーレ━━


俺達は昨夜のうちに城に戻った。

まぁ、色々と極秘任務があったからな。

特別報酬ももらって、尚且つ楽な任務で最高だったよ。

楽と言っても、あの山賊は結構強い部類に入っていると思う。

百人長とは言わないが十人長では相手にならない相手だろう?

現に新兵2人がアイツによって殺されてるからな、鈍器の振り回しに巻き込まれただけだが。

なんとも、情けない死に方で。

っと、さっさと報告して戦利品に手をつけないとな。


「昨夜の戦闘報告は以上となります」

「ご苦労、して勇者達の感じはどうか」

「ッハ、 カエデ・コウタ共に勇者の質としては十分かと

 カエデの武力、コウタの魔力共に抜きんでているかと思われます」

「そうか、して68番目の勇者はどうか?」

「力に関しては異常としか申し上げられません

 コウタとほぼ互角の力をもつ敵首領相手に一合と成さず討ち取りましたゆえ

 また、心が弱く山賊を殺すのさえ、精神が追い込まれる始末です

 魔族どもを見て敵として認知できるかと言えば怪しいかと存じ上げます。

 結論で言いますと"危険"ですな、消すなり殺すなり早めがよろしいかと」

「そうか、ご苦労…下がってよいぞ、戦利品に関しては自由に」

「ッハ、ありがたき幸せ…」

ま、勇者の何割かはこうなる運命だわな。

シュンよ呪うなよ、国のためだからしょうがないさ。






━━Side シュン━━


翌日、朝食の前に国王様に呼ばれたので行く事にした。

謁見の間の前に着くとすでにカエデとコウタも居た。

「カエデ、コウタおはよう」

「シュンさんおはようございます」

「はよ」

挨拶し終わると、扉が開きはじめた。

早朝にも拘らず、中央の玉座に王様

左右に大臣と将軍達が立っていた。


「おはようございます、国王様」

膝をついて挨拶をする

「うむ、頭を上げなさい」

頭を上げると王様は大臣の一人に目配せすると何やら3人ほど従者を連れてこちらへ来る

「勇者達の戦い百人長ギーレから聞いておる大義であった」

「ありがとうございます、これは?」

「うむ、まずカエデとコウタ両名には10人長の位を授ける

 また、敵頭領を討ち取ったシュンには百人長の位を授ける

 また、お主らにはまだ指揮する兵科も決めてないのでは後に各将軍に話すがよい」

「畏まりました」

「何か質問はあるか?」

「国王様、ひとついいですか?」

「勇者コウタよ、何かあるか?」

「はい、俺は諜報部隊に入りたいと思うのですが、よろしいでしょうか」

「ふむ、して何故諜報部隊に志願を?」

「先日の戦闘で自分はやはり他の勇者と戦闘で見劣りします

 ですので、自分に合った、この足と風魔法で国のために戦いたいと思います」

「わかった、では後ほど諜報部隊の者を行かせる他に無ければ各自解散だ」




謁見の間を後にして3人で朝食を食べた後、カエデと2人で歩兵隊の兵舎に向かった

「…ふむ、シュンとカエデ殿、両名は歩兵隊に加入と見てよろしいか?」

「はい、私は薙刀しか使えませんし、馬に乗りながらというのも辛いと感じましたので」

「自分も同じ理由です。」

「…わかりました…では、カエデ殿に歩兵隊十人長の位を

 シュン殿には歩兵隊百人長の位を授けます…ようこそ歩兵隊へ」

「「ありがとうございます」」

「アリエスさん、一つお願いがあるのですが」

「なんでしょうかシュン殿」

「はい、武器を変えたいと思うのですがよろしいですか?」

「大丈夫ですよ、武器庫にある装備をお好きに使って結構です。

 また、お求めのが無ければ作らせますので申しつけください」

「ありがとうございます、早速見てきます」

そう言うと、武器庫に早速向かう事にした。


今、俺が使ってる武器は両刃の剣だ

これだと、切れ味は悪くても楽に殺してしまうと思う。

元来西洋の剣ってのは重さを生かして叩き斬るとか叩き割る用法だからだ。

なので俺は片刃の剣、そうだな曲刀ではなく、直刀のサーベルみたいな武器がいいなっと

思いながら武器庫に入ったら、先客が居たようだ。

「ん?あんた誰だい?」

その先客はすごい身長が高かった。

パッと見て190cmぐらいはあるんじゃないだろうか?

体は細く格好も兵士というよりは文官みたいな格好をしている

顔も整ってるというか整いすぎてるだろコレ…

「俺はシュンと言うんだ68番目の勇者らしい」

「なるほど、新人さんかよろしくな。

 俺は13番目だったリョウだ」

「ああ、よろしく」

あれ?けど今いる勇者ってほとんどが前線に居るんじゃないんだっけか?

「他の勇者は前線に居るって聞いたんだけど」

「え?ああそうだな、前線に居ると思うぜ?

 俺は特殊任務中なんだよ、今はちょっと探し物とこの勇者専用武器の調査をな」

「そうなのか、俺もちょっと武器を変えたくてね」

「なんでまた武器を変えに?」

「ああ、両刃だと殺したくなくても殺しちゃうからな

 片刃の武器なら峰打ちでもできるかなってさ」

「峰打ちねぇ、『敵は根絶やし』が、この国の方針だろ?」

「敵だからって全てを殺していいとは俺は思えないから

 それに、できれば人は殺したくない」

「甘いねぇ…けど、その考えは同感だ

 じゃあ、これがいいんじゃないかね」

 それは全長1メートル程のサーベルだった。

「ああ、ありがとうこれぐらいならちょうどいいと思う」

「いやいや、気にするないい意見聞かせてもらったしな、

 でだ…お前さんこの国どう思う?」

リョウという人物は何かを値踏みするような、そんな感じで俺に聞いてくる。

「そうだな、少し不気味な気がする

 なるべく、いい所だけを見せたいんだろうけどね

 …たぶんそれだけじゃないんだと思う。

 これはどこの世界でも同じじゃないのかな」

「…ああ、そうだな。あと、魔王軍について話は聞いたか?」

「まぁ、簡単には聞いたかな?

 魔族は人間を根絶やしにしようとするとか

 勇者が居なければ魔族に世界は滅ぼされるとかぐらいは」

「……そうかそうか、ありがとう

 …一つ忠告だけしておく、この国を」

何かリョウが伝えようとした時後ろから。

「リョウちゃん!早くしないと魔王様が心配するよ!」

何か可愛らしい声が聞こえてきた。

ん?…魔王様?って聞こえたんだが。

「魔王様って今言ったか?」

後ろを向こうとした瞬間。

「ッゲ!?ヤバッ何か居るし!」

「バカ!ヒナ逃げるぞ!シュン、死ぬなよおおおぉ…」

「え?、ちょっと!リョウちゃん待ってよ!」

後ろ向いた時にはすでに誰も居なかった。

けど、なんだったんだ…とりあえずアリエスさんに報告だけしとこうかな。




「…という事があったんですが」

「…そう……ですか…この事は内密に私はちょっと急用ができたので失礼します」

「あ、はいお疲れ様です…?」

アリエスさんを見送ると取り残される俺とカエデ。

「あ、シュンさん武器変えてきたんですね。

 片刃の剣…?ですか?」

「ああ、サーベルって呼ばれる剣だったかな

 できれば人を殺したくないからね。

 峰で打ってもいいように直刃のを選んだんだ」

「なるほど、敵でも殺さないようにする…シュンさんは優しいですね」

「ハハッ、そんなんじゃないと思うけどね…

 っと、新兵達に挨拶為直そうか、今日から同じ歩兵隊だしね」

「そうですね、行きましょう」

それから、挨拶をしなおして新兵達と訓練をした。




夜、アリエスさんに歓迎会だと食事に誘われたのでご一緒させてもらうことにした。

アリエスさんの家は城の外にあるため、案内してもらった。

屋敷は3階建てで門を越えると庭があり中央には噴水がある。

また屋敷の外観は白を基本として芸術品にさえ見える程綺麗で管理も行き届いているんだろう。

屋敷に入るとまず、中央にカーペットが引かれ、その奥に左右に広がって2階への階段があった。

食堂は2階で、入るとそこにはシャルが居て、ちょっと、というかかなり驚いた。

「シャルなんでここに?!」

「あ、シュン様!はい、シュン様の初陣祝いをすると聞いたので私もお手伝いしたいとお伝えした所

 快く承諾してもらいまして!数日シュン様がいらっしゃらなかったので心を込めて奉仕いたします!」

「そっか、うん…ありがとう」

「はひ…っ…は、はい!」

舌を噛んだようだ、テンション上がりすぎて失敗しないか少し心配だな。

「…すまないが、シュン殿と少し話しがしたいのでは準備の方を頼む…

 準備が出来たら呼んでくれ」

「畏まりました」

そう言うと、シャルとアリエスさんの給仕の人達が食堂を後にする。

「シュン殿、ではコチラの席へどうぞ」

「あ、はい。ありがとうございます」

お礼を言ってから、話について聞く

「それで、アリエスさん俺に食事の前に話しとは?」

「…これは言うべきか迷ったのですが。

 昼間報告に頂いた、13番目の勇者と名乗るリョウについてです」

「リョウですか?はいちょっと変でしたし魔王と言う単語も聞いたので報告したのですが」

「はい、彼は勇者ではありません。

 裏切り者、魔王軍に着いた異世界人です…」

裏切り者?では、何故あの時俺を殺さなかったんだ?

魔王軍なら勇者を一人でも消しておきたいと思うと思うんだけど。

「…彼は、2年ほど前にゴブリン討伐の任務の時に一緒に居た歩兵隊100人を殺し…

 ゴブリン達と魔国に逃げました。

 …その後、魔国の将軍として我らの国と敵対しております」

「え…でも、何故俺と会ったとき殺さなかったのでしょうか

 あのときは後ろにもう一人居たはずですから、俺を拉致なり殺すなり造作もないと思うのですが」

そう、2年もこっちの世界に居るんだ俺が知らない事は幾らでも知ってるだろう。

「たぶん、貴方に悪言を吐き、離反させようとしたのでしょう…」

愚かだと吐き捨てる。


「旦那様、食事の用意が出来ましたがいかがしますか?」

「うむ、頼む」

「ただいま、お持ちいたします」


料理はとてもおいしそうだったけど。

先ほどの話を聞いて味なんてわかるはずもなかった…

「あの、シュン様?よかったらお飲み物をお注ぎしますが」

「ん…シャルありがとう、戴くよ」

シャルに飲み物を注いでもらって飲もうとした瞬間。

……そのグラスを投げ捨てた…

6話目了です。


ようやく、魔王軍と繋がりが~っといった所でしょうか?

誤字・脱字などありましたら御一報お願いします

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