5話目─初陣─
お久しぶりです。
ようやく5話更新となりました。
そして、今回より視点変更がされて行きます。
ぶっちゃけ、見苦しいかもしれませんが、ご了承ください
山賊と鉢合わせしたのは太陽が真上に差し掛かろうという所だった。
開けた平野にお互い見合い、号令はまだかといった所だろうか?
俺達新兵歩兵隊33人とギーレ達の重装歩兵隊10人の40人程の部隊
敵方…山賊たちは一人他と比べて装飾が派手なのが一人。
たぶん頭領とかそんな感じだろう。
それとそこから左右に十人ほど並んで、それが5列ほどか?
ざっと見て50人ぐらいと行ったところだろうか。
数としては、こちらが少々劣勢といったところだな。
「カエデ、コウタどう戦う?、数で負けてるから包囲とかは無理だと思うぞ」
ノワル場に居た時は重装歩兵隊を囮にして左右からと考えていたが。
まさか、50人規模になるとは思わなかった。
10人とか20人ぐらいだったのかと思ってたんだが、予想が外れたな。
思った以上に人口とか多いのかもしれない。
装備面に関しては、明らかにコチラの方が上だろう。
国から装備は支給されてるのだ。
さすがに重装歩兵みたいな重たい装備ではないが。
新兵達は、鎖帷子と材質は同じのコイフと呼ばれる頭巾を被っている。
当然ながら俺達も鎖帷子は着ている、まぁ、コイフとかは断ったが。
ちなみに、チェインメイルだけでも10kg前後の重量はあるみたいだ。
重装歩兵隊の人達はその上に全身を重そうなプレートメイルで包んでいるのだからすごいと思う…本当に。
山賊の方は、やはり山賊と言った風貌で。
薄汚れた布の服で上半身裸の奴さえいる。
中には革、レザーアーマーか?を着ているのもいるな。
首領っぽいのに関しては、鎧をつけてるようだけどよく見えない。
ただ…頭に何かの鳥の羽のようなものを差してるな。
目立つだけなのにと、思ったが忘れる事にする。
たぶんどちらかが今日、この世から消えるだろうけど…
十中八九アッチなんだろうけどねぇ…百人長のギーレさんがいるわけだしな。
「シュンさ、あのあいつらの装備見てみろよ、笑っちゃうつうの」
「コウタ、何がそんなに面白いんだ?確かに俺達と比べると装備の質は低いと思うけどな…」
「油断はするなって言いたいんだろ?そんな心配しなくても油断してるつもりはないさ、殺すだけ…それだけさ~」
今のコウタは正直少し危ないと思った。
何か大切な物を捨ててしまいそうな…ただ漠然とそんな気がしたから…
「殺すって…確かにその通りだけど、殺す事は良い事じゃないだろ」
俺が全て言い切る前にコウタが機嫌悪そうに言い放つ
「うっせーな!こんな世界に着ちまったんだ、生き残る為に大事な事だろうが!甘ったれた事言ってんと手前が死ぬんだよ!」
「ちょっと、コウタさん!いくらなんでもそんな言い方はないでしょう、シュンさんも貴方を心配して言ってるんですよ!?」
「…ッチ……まぁいいさ、オラッ!山賊どもをブチ殺してさっさと帰るぞ!」
俺とカエデはそのコウタの姿に唖然としていた。
戦闘を…いや、殺し合いをしにいくような感じというか…
ただ、そう…ただゲームをやってるように見えたんだ…
「さて、勇者コウタもやる気みたいですぜ、山賊退治と行きましょうかね」
俺達が言葉を失ってるとギーレが兵士達に合図するように喋りだした。
「オラッ!山賊どもも馬鹿みたいに目の前に来てくれたみてーだ!ノワル国の恐ろしさ見せてやろうじゃねーか!」
ギーレさんの表情は真剣そのもので、殺し合いの厳しさを物語っている。
「じゃあ、行くぞ野郎ども!突撃ィッ!!」
「「「「オオオオオッ!!!」」」」
俺とカエデの部隊を残してシュンとギーレの部隊は山賊目掛けて突撃していった。
「じゃあ、俺達は左右に分かれて挟撃しよう」
「…そう…ですね、気持ちは切り替えましょう…」
普段は新兵の中では1番目に強いカエデだが、やはり女の子だ殺し合いなんてしたくないんだろう。
「ああ、じゃあカエデはギーレさんの方に回って挟撃しかけてくれ」
「はい、わかりました、さぁ私達の出来る事をやりましょう!行きます!」
止めればいい…とは言えなかった…
正直俺も逃げ出したい…けど、それが得策には思えなかった。
ここは無理にでも茨の道だろうが、進むしかない…そう思ったから。
「じゃあ、俺達はコウタ達の援護に行きましょう、初陣を快勝で飾ります」
「「オオ!!」」
━━Side 山賊頭領━━
ふん…ノワル国が討伐しに来るってんで、蹴散らしに着たと思ったらたかが40名程度じゃねーか。
あの村の守備兵どもも50人ぐらい居たが全員打ち殺してやった。
鎧とかはほとんどの奴が鉄くずにしやがったからな。
本当に馬鹿な部下をもったと思うぜ、狙うなら頭を狙えってんだ。
「か…頭ァ…奴ら来やしたぜ…10人程変に豪華な装備してる奴らみたいでさー」
「ふん…んなもん見かけ倒した、気にするこたぁねーよ、何時もどおり俺達が打ち殺してやりゃあいい」
「さ、さすが頭!そんな事も見抜くなんて、益々惚れやすぜ!」
「おめーなんかの汚い顔の男に言われたって嬉しかぁねーよ、馬鹿」
ふん…だが、こいつらは俺を慕って集まったんだ大事にしてやらねーとな。
…そう大事な消耗品としてな…クク…
「いいか、てめぇら!馬鹿なノワルの奴らが生贄を差し出して来たぜ!
あいつらをぶっ殺して装備もらおうじゃねーか!あの重そうな奴らの鎧は
良い金になんぞ!、オラッ!蹴散らせぇえええ!!」
「「「「オオオッ!!」」」」
さて、これで勝てば、部下に食わす飯も増やせるってもんだな…
じゃあ、行くか美味しそうな獲物の居る 戦場にな…
━━Side シュン━━
やはり、コウタは足の速さも相まってか突出しすぎてしまっている。
せめて周りに合わせるという事を知ってほしいな。
まぁ、ギーレさんがなんとかしてくれるだろう。
敵は50人とコウタ一人では明らかに危ない…
運が悪ければ死ぬんじゃないかと危惧しかが…
だが、コウタは…その先陣を切り裂いた。
俺が思っている以上にコウタは冷静だったような。
衝突まで数メートルといった所で。
コウタは風魔法を発動させた。
俺の属性が何かわからないため、レクチャーは受けていないが、コウタとカエデは違う。
コウタは空いた左手を前に翳した…すると手の周りが何か渦巻いた…そう小さい竜巻のようなものが覆ったかと思った瞬間
それは前方に射出され、山賊達の数名は遠めからでもわかるように四肢を撒き散らせ吹き飛んでいった…
「う、うわぁ!?」
「なんだよ今の!」
「こんなの聞いてねーよ!」
出鼻を挫かれ混乱に落ちた所に追いついた新兵達と重装歩兵隊が突撃をしかける。
「ギャァァァ!」
「ヒィ…ヒギャアアァ…」
最初の勢いが嘘かのようにまた一人一人と討ち取られてゆく山賊。
これは、本当に現実なのか…今さらながら自信がない…
夢ならどれだけよかったか…
一人考えに耽ってる状態ではない事もわかっていた…けど…
「…ふぅ…戦闘は始まりました、走りながらでいいので聞いてください」
気持ちを落ち着かせ、俺達の部隊の動きを教える。
「まず、中央で重装歩兵と新兵隊が戦闘中です
コウタのおかげで混乱のため意識が目の前にしかいってませんし
ここは、背後へ回り混もうと思います
何人かは、気付いてくると思いますが
そこは私達で倒しましょう」
「「「ハッ」」」」
少し気にいらなそうな顔をしているが、俺に選ばれたんだからしょうがない。
俺は安全になるべく誰も死なないようにしたいだけだ。
━━Side コウタ━━
ハ…ハハハ!
なんだコレ!
おもしれぇ!!
殺し合いだがなんだが知らねーが。
喧嘩の延長上みたいなもんだ。
自慢じゃねーが、負ける経験なんてほとんど無い
それに、俺にはこの魔法がある。
その辺の奴らにゃあ、山賊どもなんかにゃあ負ける気はしねーよ。
まだ、使える魔法も魔力の練り方もあまりうまいとは言えないが。
最初の一発ぐらいなら全然いける!
後ろの奴らも追いついてきた、俺がMVPだ。
これで、カエデも少しは俺の事見てくれるかな。
「こいつ等守備兵とかと全然ちげーよ!」
「見掛け通りつえーよ」
「農民だった俺達には無理だったんだよ」
おーおー…情けねー奴らだ。
左右を見てみると兵士達も山賊どもを蹴散らしている。
「貴様らぁ!たかが魔法で何ビビってやがる!」
奥からうぜぇ声が聞こえてきた、
あれか?頭領とかそんな感じの奴だろう。
じゃあ、ブチ殺して終わらせるか!
「いいか!戦いの見本っての見せてやる!」
「ッハ!てめぇが頭か、だっせぇ格好してんじゃねーよ」
「貴様は誰だ」
「勇者様だよ、このカスが!」
「ふん、ちょうどいい、勇者だが知らんが俺に勝てると思うな!」
━━Side シュン━━
どうやら、山賊頭領とコウタがぶつかったみたいだ。
下半身だけとは言え肉体強化されてるんだ、そうそう死なないだろう。
ちょうど、後ろに回りこんだあたりでコウタと山賊頭が戦ってるのが見えた。
数としてはほとんどが山賊達しか減っていないだろう。
最初の魔法のおかげで相手の士気も下がってるし練度も違うようだ。
山賊達の動きは新兵と見比べてもかなりの違いがあるしな。
ただ、あの頭領はかなり違うみたいだけど。
コウタが万が一ピンチになる前に他の兵士を倒せばいいよな。
「よし、背後より突撃をしかける、行くぞ!」
「「「「オオッ!!」」」」
俺達が背後より突撃と同時にカエデの部隊も側面から突撃を仕掛ける。
「な、なんだ?後ろから……敵だ!敵が後ろにぃ!」
「何言ってるんだよ、後ろに敵が居る…わけ…敵だあああああ!?」
「ふざけんな、こんな所で死ぬわけにはいかねー」
「俺は逃げる!」
「馬鹿!?何処に逃げるんだよ!此処は最後尾で後ろには敵だぞ!」
「う、うるせー!逃げなきゃ死ぬんだよ!」
予想通り、敵は背後と側面からの挟撃に戸惑ってるようだ。
ただでさえ魔法で混乱してたんだ、コレで全体が混乱しただろう。
「ウオオオオッ!!」
「い、嫌ギャアアアア」
グシャと、嫌な音と手の感触、山賊の断末魔を聞こえる。
だけど、これが現実とは思えなくて…
目の前の『敵』へ剣と突き刺し薙ぎ払い断ち割る。
血の臭いに吐き気を催すが、今は構っていられない。
この地獄のような物を終わらせたい。
ただ、その一心で『敵』を殺した。
━━Side カエデ━━
元いた世界で私は人を斬った事がある…
実際は斬ってはいないけれど。
木製の薙刀で人の骨を粉砕させた事がある。
私は汚い女だと思う、シュンの気を引きたくて、弱く見せた。
ただ、心配してほしくてそうした。
だけど、私は人を傷つけるのは好きなんだと思う。
だって、この人を斬る感触が…
血を…血を滾らせるから…
「イヤァアアアアアアアアア!!」
絶叫に似た叫びを上げ、山賊の首を刎ねる。
飛び散る血潮がとても、綺麗で儚く感じる私はもう、戻れないんだと自覚した。
「さぁ、敵の残りは僅かです、一人残らず蹴散らしましょう」
私についてきた兵士達は途惑いながらも頷いて一緒に戦ってくれた。
━━Side シュン━━
もう、山賊達の残りは僅かとなっていた。
山賊首領とコウタを中心に円を組んで包囲し。
また一人、一人とその命を散らして行く。
コウタもかなり息を切らし。
山賊頭領も少なくない傷を負っている。
「ハァ…ハァ…あとは…お前だけだ…ぞ…さっさとおっ死ね木偶の坊が」
「クッ…クソ…集めた部下どもを皆殺しにしやがって…」
「うるせぇ、てめーらが暴れたから俺達が出るハメになったんだ
自業自得だ馬鹿が」
「自業自得の意味は知らねーが腹が立つ…
だがな、ここで死ぬわけにはいかねぇ!」
「誰が逃がぅわっぷ!?」
隙だとばかりに鈍器をかち上げ土をコウタの目にぶち込む。
「ッハ!ザマーミロ!」
捨てゼリフを吐き捨て。
後方…俺の居る方向へ走りよってくる。
「邪魔だ小僧!打ち殺すぞ!」
山賊は叫びながら俺に手に持った獲物を振りかぶる。
「悪いな、俺も勇者なんでな、死ぬわけには行かない」
自動防御の発動で敵の鈍器を受け止め、
瞬間、角度をずらし、受け流す。
最近覚えた事だが思ったよりうまく行った。
そして、受け流し体勢を崩した瞬間
「え…」
首を……刎ねた
山賊頭領は間抜けな声を上げ、死んだ…
俺が殺した…うん…そうだな、俺が殺したんだ…
戦闘が終わり落ち着いた瞬間に俺は気を失った。
この日の戦死者は
山賊団51名
ノワル国軍2名だった。
━━Side ???━━
「ここがあいつらの巣か。
おーおー、いっぱい居るわ居るわ。
早くそいつら連れて帰るぞ。
あの勇者様がたが山賊殺してくれたおかげで
こいつらを手に入れる事は出来た。
こりゃ高く売れるな…クク…」
「隊長、俺にも分け前くださいよ」
「あーあーわかったわかった、ったく俺はいい部下を持ったよ本当」
「ギャハハ、隊長のおかげっすね!」
山賊達の巣を後にした荷物をいっぱい引きつれながら。
第5話了です。
ちゃんと、読める文ではあればいいのですが。
誤字脱字などありましたらご一報ください。