29話目─エラトマ防衛戦①─
29話目更新です。
グロ成分?多めな感じですのでお気をつけてください。
主に主人公の精神ががが
─────紅月 上旬 本陣─────
リョウの思惑通り、日中頃相手は到着した。
「かぁ…数が多いねぇ、まったく…」
確かに、目の前一面が敵だ。
こちらの軍と違い人間のみで構成された部隊だ。
「三万体十万か…これで勝てば俺達は時の人ってかぁ?」
ノワル軍との距離500メートルといった所か…?
「シュン…緊張してるか?」
リョウに聞かれたが、これといって何も感じなかった。
「いや、不思議と落ち着いてる」
「そうか…頼むぞ先鋒大将さん」
リョウもいつも通りじゃないか。
「ああ、いってくる」
「お待ちしてました、シュン様」
「ああ、それで開戦はどうなるんだ?」
正直どうやってはじめるのかサッパリわからない。
「まずは、弓と魔法部隊による遠隔攻撃から始まります」
ココスがそう言うと、
後ろから魔法部隊と弓兵部隊が前にでた。
「彼等が遊撃、本陣の部隊兵達です」
弓兵が立ち止まり、弓を構える。
そして、後方からドラが一つ音を響かせると同時に両軍の弓兵による斉射が始まった。
まだ、準備できてねーよ!
ほとんどは当たらず地面に落ちるが、運の悪い兵士に矢が刺さり、あちこちで魔術部隊の兵士に当たり魔力暴走を起こし爆発現象が起きていく。
数分で既に地獄が出来始めていた。
「──飲み込まれる
【降り注ぐ雨】」
「──せてもいけない
【石の欠片】」
「──形物がまた一つ
【針の棘】」
詠唱が終わり、魔法も発射されてゆく。
魔法での砲撃は弓よりも目に見えて被害が増えていく。
自分の方に飛んできても消えてばかりではあるが。
用意された矢や、魔術部隊の魔力切れを持って全軍が進軍を開始する。
「全軍進め」
でいいのかな…?
「全軍…進めぇえ!!」
ココスの号令で進軍し始める。
本番なのにしまらないなぁ…
「オオオオオオッッ!!」
残り300メートル程。
補給を済ました弓兵部隊が再度射撃をはじめ、敵後軍へと打ち込んでいる。
矢の数等さすがに倍近くあるノワル連合軍だ、かなり多い。
残り100メートル魔術部隊、弓兵部隊の攻撃は止み、衝突へ向けて前進する音だけが聞こえる。
もしかして、今魔法打ってもいいんじゃないか?
躊躇していたら詠唱が終わる前にぶつかるだろう。
「冥府にも罪はある
最大限想像の限りを尽くして考えてみな
比較すること等できないけれど
考えの上をけれど限りなく上に
慈悲を求めてはいけない
彼等からしたら
これは遊戯と同じ
【冥府の極刑】」
残り60メートルも無い距離で詠唱が終わり、敵陣前方に黒い球体が浮かびあがる。
すぐ後にもう一度同じ魔法の詠唱を始める。
「シュン様!?体力が持ちませんよ!?」
対して疲れないが、とりあえずはこれで終わらす。
「【冥府の極刑】」
先ほどの球体が何人かを吸い込みはじめた直後にまた同じ球体が発生。
何人かを吸い込んでいく。
それを見たノワル国連合軍は見た事もない攻撃を受け、浮き足立つのを感じた。
「よし!中央が浮き足だった!突撃ぃ!」
「オオオオオ!!」
残り10メートル、既に目の鼻の先で彼らは混乱し始めてる、攻めるなら好機。
漆黒の剣を抜き、先頭の兵士を一人、また一人と切っていく。
続くココスとラウルフ族を主軸にした先鋒部隊が隊列を守って敵部隊を切り開いていく。
お互いがぶつかりあい、そこらじゅうで流れる断末魔。
首が刎ね。
腕が飛び。
足が捥げる。
目が飛び出し。
頭は潰れ。
悲鳴は怒号に掻き消される。
命とはこれほどまでに軽いモノだったか?
「シッ!!……シュン様!あまり前に行き過ぎては危険です!」
「大丈夫だ、このまま進む」
他の戦場はどうなっているだろう?
ヒューリーは大丈夫だろうが、デルミンやアーナンは大丈夫なのだろうか?
だが、今立ち止まっては彼等も落ち着いてしまうだろう。
少し進んでいくと、歩兵隊の中に一人だけ騎馬に乗った男が居た。
彼が指揮官か?
既に敵と交戦中なのに何をしているんだ、怒号を飛ばしているだけで何が出来る。
一足でたどり着ける位置についたと同時に飛び上がり指揮官へと斬りかかる。
「──何をしている!進まんか!ええい屑どもが!!」
自分の力の無さを他人のせいにする…
「屑はお前だ」
え?っと間抜けな声を出す敵の指揮官がこちらを向くがもう遅い。戦場に居るのに剣も抜かずに居るなんて愚の骨頂ではないだろうか。
「その首もらった!」
「ま、まっ!」
首を刎ね、着地と同時に周囲一帯い居る物の足を横なぎにたたっ切る。
「ひゃ、百人長のアスハム様が討ち取られたぞおおおお!」
「で、伝令!伝令を飛ばせええええ」
「あ、あいつは悪魔だ…人間が人間を殺している…」
ノワル兵達の声にイラつきを覚える…
後ろを見る、役20歩程の距離か…
ここなら使えるかな。
「僕の歌を聞いてくれませんか
お金はいりません
物もいりません
ただ聞いてください
終った時にわかるから
【死に絶える歌】」
そう、無差別攻撃魔法を発動させる。
なるべく広範囲、だが仲間に被害の行かない範囲に抑える。
「う、唄…?う…ぐぅゲェェェェ!!」
唄を聴いた人間達は皆血反吐を吐いて転げまわっていく。
人間達が足場も見えない程居た場所がいつの間にか俺を中心に10メートル程が綺麗に開けた場所となった。
ノワル国連合軍の兵士達は皆、発狂死していたが。
立ち上がり、後ろを見る、よかったちゃんとココスたちの範囲外で抑えられたようだ。
後方の惨劇を見て放心状態の兵士を斬りココス達も追いついてきたみたいだ。
「こ、これは…シュン様が…?」
「ああ、たいしたことない」
これがあのアリエスの指揮した部隊なのか?
張り合いも何もないじゃないか。
「とりあえず…我が部隊は現在突出しすぎております…ミランダが上空を飛んでいたので気付いてると思いますが…」
「いいじゃないか…」
ああ、いいな…これが戦場か…楽しい、楽しいなぁ。
「あいつらに恐怖を撒き散らしてやろう…シャルを殺し、スー達を殺しつくし………そしてコウタさえも…」
何故コウタの名前が?コウタは生きてるだろう。
アグニスに着てから一度も会ってないはずだ。
なんだ……脳内で巡るこの光景は…
何故コウタが血を吐いてこちらを睨んでいるんだ…
「っく…」
軽く頭痛がした、と思った時後方で大きな爆発音が聞こえた。
「なんだ!?」
「あ、あれは」
空を見ると赤い布がついた矢が飛んでいる。
「赤い矢…後退の合図!?シュン様!」
「俺はいい、行くんだ」
俺一人でもあいつらを殺してやる。
「いけません!シュン様は部隊の隊長なのです!」
くそ…だが、リョウが考えもなしにそんな事するはずもないか…
「……すまない、頭に血が上ってたみたいだ……各自他の部隊と合流! ココスが先頭を俺が殿を勤める」
「ッハ!」
他の部隊と合流し、ココスを置いて本陣へと向かう。
─────同日 昼 本陣──────
「リョウ、いいか?」
「来たか…思ったより早く来たな」
リョウは難しい顔をしていたが、すぐに笑顔に戻り返してきた。
戦況はよくないのか…?
「ちょっと左翼が押され気味だった…だが、シュンが百人長を倒してくれたおかげで一瞬あいつらに隙が生まれたからな、ササが一部の兵士達と援軍に向かい押し返せた」
何故ヒューリーが居たのに、そんな押される結果に…
「ヒューリーが居て何故って思ったろう、ヒューリーは相手の十人長を2人程討ち取ってる、お前に次ぐ戦果だ…ただな、アーナンが負傷した」
あの、ミノタウロス族の士官か…
「右腕を切り飛ばされたよ、相手は柄の長い太刀…薙刀を使う……女らしい」
もしやとカエデの顔が浮かぶ。
「アーナンと対峙した時に名前を名乗った、"サオトメ カエデ"とな、知っているか?」
やはり…彼女か…
「ああ、俺と同じ時期にここに来た人だ…
「そうか…どうする…?」
確かに気になる…けど……。
「そんな事より、アーナンの様態は!?」
「今は腕をくっ付けてる最中だ、大丈夫数日後には戦線に復帰できるよ」
その言葉を受けて安堵のため息が出た。
「ふ…やっぱ、お前をうちに入れてよかったよ…」
「いきなり、何を言ってるんだよ」
本当にアーナンが無事でよかった。
「リョウ、お願いがあるんだが──」
彼女が戦場に出たらすぐ教えてくれと言おうとしたんだけど
「だめだ」
「まだ最後まで言ってないぞ!」
「どうせ、その女をお前が止めるって言いたいんだろう?だからダメだ」
何故だ…彼女を守るとコウタと約束したんだ、コウタの遺言を…?
遺言…?
「なるべく、そいつは捕縛させるようにする、今は抑えろ…そんな余裕がないのはわかるだろう」
確かにそうかもしれない、一度の衝突で本陣に下がっている負傷兵は数千人は居るみたいだからだ。
それに死者も少なくない数だろう…
「だから、すまん…今は抑えろ」
「……わかった………わがままいってすまない、けど……彼女が俺の前に出てきた時は……俺が止める」
「……任せる」
「伝令!」
兵士が一人駆け寄ってくるのが見えた。
「どうした?」
「ノワル国連合軍が再度進軍を再開しました!中央には勇者のみの部隊も確認済みです!」
異世界の人間…俺と同じ世界の人達か…
「やめるか…?」
リョウは俺の気持ちを察しているんだろう。
「いや…アグニスを守るために情は捨てたよ」
「そうか…辛い思いばかりさせるな」
リョウらしくないな…そうさせてるのは俺か。
「任せてくれ、想像以上の活躍をしてみせる」
自覚はあったけど言えなかった、人を斬るのが楽しいと。
今の俺は異常だ…
─────同日 前線─────
「ココス、進軍するぞ」
「シュン様?…了解です!……進軍!!」
ココスが声を張り上げ休憩していた者達の士気を上げていく。
「ココス、中央の穴に勇者だけの編成部隊が入ったらしい、さっきまでの非じゃない…気をつけろ」
「はい!」
陣形を維持しながら出来る限りの速さで進む。
敵の兵の顔が見えてくる。
先頭に居る兵士を見る。
確かに、俺の世界の住民だろう…
毛先だけが金で根元が黒の髪、それに口と耳にピアスをつけた青年が向かってくる。
「化け物どもが死ねええええ!」
見た目が違うというだけで判断をするなんて……。
先頭を突き進む青年が大きく振りかぶった所で一気に速度を上げる。
振り下ろす頃には胴を薙ぎ真っ二つにする。
「……え…?」
斬られたのも気付かずに倒れ、苦しみながら絶命した。
「か、カっちゃん!?…じょ、冗談だろ…?」
その友人だろう、彼が死んだのをいまだに理解できないでいる。
「魔族にも守るべきものはあるのに……お前たちは………」
こいつらは………死ぬ覚悟もしないで……
国を守るために戦っている。アグニスの兵士達を殺してたのかと思うと怒りが込み上げてくる。
「遊びで…遊びでやってんじゃないんだぞ!」
頭の温度が一気に下がったような気がした。
元は同じ世界の住人だろうが、そんな事はどうでもいい。
国を思い、自分達の家族を守りたいという気持ちも持たず。
ただ…勇者だからと煽てられたから敵を殺して…
ふざけるな…何が正義だ、何が勇者だ。
お前らが正義だと言うなら俺は悪でも構わない。
許せない。
「うおおおおおおおっ!!」
同じ世界の住人だった者達を斬り刻んでいく。
一人一人を切るたびに大事な何かが失っていく気がするけど、構わない。
もうあの世界に未練等何もない。
「「シュン様!」さん!」
前方と後方から叫び声が聞こえ、動きを止める。
「な、何故…貴方がそちらに…貴方は魔族に殺されたのでは…」
「シュン様……ご無事で………それは返り血です…か…?」
前にはカエデがあの時より少しだけ髪が伸びて、一層大人っぽく成長した彼女がいた。
後ろには俺の戦いを見て、心配しているのだろう、心配そうに見るココスの姿があった。
「シュンさん!引いてください、その人達は私たちの世界の人達なのですよ!?」
「知っている」
殺す覚悟をしないで、戦場になど立ってはいない。
「シュン様!お一人では危険です!」
「大丈夫だ」
死ぬつもりもないし、死なせもしてくれないだろう。
二人の登場で少しだけ冷静になったのか、自分の格好を見て見る。
全身が赤く染まっている。
あの世界の人達の返り血を浴び、全身が赤く染まってしまっている。
「シュンさん…どうしてしまったのですか…あんなに人を殺すのが嫌だった貴方が!」
「カエデこそ…彼等は殺しを楽しんでいるんだ…魔族にだって家族は居るし、国を守りたいという気持ちもあるのにだ…彼等にはそれがない…おかしい話じゃないか…彼等はなんのために戦っているんだ?」
ノワルのえらい奴らに言い様に利用されてるだけだ…それに、元の世界に帰れる人間などいない。
「そ、それは帰る─」
「帰れないんだ…」
彼女の言葉を遮り事実を突きつける。
「帰れないんだよ…そして、あの世界での事を忘れていくんだ…」
「そんな…そんな事があるはず…!」
「カエデ、両親の名前…わかるか?」
俺にはもうあちらの世界で何をしていたのかさえ朧気なのだ…
「そ、それは…父は…早乙女………早乙女…あれ…?」
「消えていくんだよ、記憶が…元からあの世界へ帰る術なんてないんだ…」
頭をかき、視点が定まらないまま彼女を見る
「ひゃは!隙ありぃ!」
キィンと剣と剣が打ち合う音が響いた。
「へ?」
「不意打ちか…戦場では良くある事だが……そのせいでコウタはノワル国に殺された…」
不意打ちをしてきた小柄な男を下がろうとする寸前に頭を突き刺す。
頭蓋骨をバターに刺すかのように……と突き進んでいく。
「コウタさんは…アグニスの兵士に殺されたって…」
「ノワルの奴らにそう言われたんだろ?」
何処までも汚い…彼らこそ人間ではないじゃないか。
「…そうです、その部隊の隊長に言われました…コウタは最後まで勇敢に戦ったって…」
「あいつか…コウタを殺した本人が…よく言う…無能呼ばわりしておいて……」
あの時の記憶が全て入り込んでいく。
全てが頭の中ではまった感じがした。
「どうゆう事ですか?」
「言葉通りだよ、話せば長くなる…」
こんな戦場でゆっくりと話している時間もない…だから。
「ここは戦場だゆっくりと話す時間はない、引いてくれないか?」
「それはこちらも同じです!、シュンも…」
そんな事は出来ない。
お互いに…それはわかっている。
「俺は君を傷つけたくはない、だから引いてくれ」
「そうは行きません、私にも守る人が出来たのですから!」
どうして、わかってくれないんだ…不毛な戦いだと…
引かないのなら……
「わかった…無理矢理にも引かせる…」
「……押して通ります!」
彼女が無詠唱で火球を生み出し、飛ばす。
「無詠唱で…!?」
「気をつけろ!あいつらに詠唱はない!」
「シュン様!我らラウルフ族は木、地属性が主です相性が悪すぎます!」
彼女と放つ火球に数名に当たり爆発する。
「…っく…なんという威力…あれが勇者…」
「彼女の相手は俺がする、他は任せた…他も腕は彼女程ではないにしても勇者だ気をつけろ!」
「っは!一人で相手にしようとするな!今こそ人間達にラウルフ族の意地を見せる時です!」
もう、お互いの意思で引く引かないという事は出来ない。
彼女とは別の道を歩んで来てしまったから。
それなら…無理矢理にでも連れ去り。
俺が守ってみせる。
「いざ…参ります!」
薙刀を小さく突き、引いてすぐに突く。
大振りな攻撃では反撃を食らうと思っているからの攻撃方法だろう。
射程は彼女の方が遥かに長い…
「私一人では無理です、余裕のあるものは彼を目標に牽制を」
薙刀をなんども受けて流していく。
時折、後方に控えている者が魔法や矢等を放ってくる。
魔法は、自動で消し去るから、まだいいが。
このままでは決着がつかない……。
「それなら…」
こちらも剣を受けるのではなく。
軌道は全て能力に任せて、振り落として刃へと打ち込んでいく。
「何か聞こえないかい?
地底の底から
湧き上がる鼓動
ほら君の足元から
それは近づいてくる
亡者となりて
【襲いくる祟り】」
俺の周囲に地面から無数の手が出て脚を掴んでいく。
これも、無差別に相手を選ぶのだから性質が悪い。
運よく、後方には出現しなかったようだが。
悪ければ仲間にも被害が及ぶのだから使いどころに困るな……。
「な、なん…ぐあああああ!」
「あ、足が…足があああ」
何人かの足が潰れ、地面に埋められてゆく。
埋められた者は生きながらに踏まれ蹴られ、絶命していく。
「打ち合いをしながら魔法なんて…」
ああ、俺も馬鹿げてると思う。
無意識に剣を防いでくれるのだから、これぐらいの芸当はな?
数合程打ち合うと、打ち合う音とは違う、ピキッとひびの入る音が聞こえた。
「ハァッ!」
「…っく…」
これで最後と思い、地面に刺さる勢いで振りぬく。
薙刀の刃は砕け、柄の部分さえぼろぼろと崩れた。
「な…」
「手荒な真似するけど、ごめん」
出来た隙を見逃さずに真横につき、首筋に手刀を浴びせようとする。
「ですが!」
彼女が俺の左腕をつかんだ瞬間、右手で持った漆黒の剣が彼女の掴んだ右腕を両断する。
「…ぁぁあああああああああ!!」
「カエデ!?」
「カエデさっ……カハッ…」
周りに居た異世界人の数名が彼女の悲鳴を聞き、こちらに向く。
その隙をココス達が見逃さない。
幾ら身体能力が高いと言っても。
これが遊び半分で戦う者と生き残る為に戦う者その差がこれだ。
彼女はいまだに絶叫をしている、失った腕からは血が勢いよく噴出している。
何かをしようと俺を掴んだのだろう、だが、俺の能力がそれを良しとせず切りかかった。
防御のために振り上げたとしても、相手は生身切れるに決まっている。
下手したら俺が彼女を殺していた。
いや、今はそんな事を考えている状態じゃない…
「ココス!腕を」
「っは!」
ココスに腕を回収してもらい、彼女を捕まえる。
「敵将、カエデは捕縛した、彼女の命を救いたかったら一度引け!」
その言葉に、異世界人《勇者》達は悩んだすえ、後退しはじめた。
「本陣に伝令、敵先鋒後退!俺達も引くぞ」
「っは!」
衣服を破り、彼女の失った腕に巻きつける、正しいかわからないが、少しは血が治まると思う。
「シュン様…お任せを」
「恵みに感謝を
枯れるにはまだ早いから
少しだけ待ってください
今はまだ少しだけ
【止まる樹木】」
ココスが詠唱すると、地面から木が急速に生え彼女に巻きついていく。
血は次第に止まっていく。
「とりあえず、応急処置をしたので、命に別状はないのですが……このままでは腕を失ってしまいます」
「わかった…、ありがとう…引くぞ!」
異世界人《勇者》の部隊は後退したためだろう、他のノワル連合軍の部隊も引き始めた。
時間も日が沈むには早いが、今日の戦いはこれで終わり。
ココスはそう告げてくれた。
29話目了です。
絶賛主人公壊れ中です。
ちょっと主人公ぽくないか・・・な?
今回、魔法をルビにしてみたんですが、どうでしょうか?
カタカナ表記だけでいいなら次回からそうしますが。
ぶっちゃけ、厨二過ぎたかなぁと…
魚鱗の陣がわからない人も居るかもしれないので
補足説明を。
簡単な形としては「△」←こんな感じです。
一つの隊による密集陣ではなく、数百や数千の兵士達が密集陣を作り、鱗を思わせるような陣形となる事から魚鱗の陣と呼ばれるようになったと。
密集陣の中に密集陣を作る、それが鱗に見えるから魚鱗と。
わかりやすいかな…?わからなかったらわかりにくいよこの馬鹿!とでも石を…投げないでほしいかなぁ?
ノワル国連合軍には陣形って概念はないです、お互いが邪魔にならない程度に戦えと言った感じです。
なので、仲間に当たるのが怖いから、弓兵等は戦闘中は遊軍と貸すし。
騎兵も歩兵に合わせようとしない。
歩兵も目の前の敵ばかり見てるので、他が窮地に追いやられても、我関せずといったところです。
中世のヨーロッパでは戦場によってはこんな感じだったりしたみたいですね。
貴族と平民達との仲が悪くて、ですが。
ただ、陣形も全てに対していいというわけではないので。
その辺も場合によっては表現できるといいなぁとか思ってたりします。
誤字・脱字・感想等ありましたらお願いします。
では、また次回に。