28話目─開戦準備─
28話目更新です。
今回から、ようやくといった感じですが。
ノワル国とその同盟国の連合軍とノワル国との開戦になります。
何処まで表現できるかわかりませんが
精一杯頑張りたいと思います
レグ国での用事も終わり、国葬から既に半月が経っていた。
変わった事と言えば、ノワル国とその同盟国による連合軍の攻撃が激しく、関を放棄する事が決まった。
関所は2つある、関所の街道の左右には山が切り立っている。
その出入り口に一つずつ関があるのだ。
第一の関アレティ。
そして、第二の関エラトマ。
今回は第一の関を放棄し、第二の関で待ち受けるという方法でいく。
第二の関が落ちれば魔族の国内となり、すぐ先にナーガ集落、その南にハームカルムがある。
ナーガ集落の東にはアグニスがあるため第二の関が事実上の最終防衛ラインとなるわけだ。
ノワル国はその物量と日々増えていく勇者の活躍により、少しずつではあるがアグニス国を押しているらしい。
俺が呪われてるとしても、アグニス国を守ってみせる。
俺が狂おうとも。
………
……
…
「で、シュンさぁ何書いてるんだ?日記?それともラブレターか!?誰にだ!?ココスへか!?それともリディか!?」
とりあえず、黙って俺の部屋に入ってきたリョウを魔力を作った手で部屋の外へ投げだす。
「ちょっ…おまぶっ!………」
加減間違えたかな…?日記を閉まってからリョウを起こすか…
「で、リョウどうしたんだ?出撃命令か?」
「…うーん………おいなりさん……」
とりあえず、魔力で作った手で引き摺っておこう…
「いて!いてええ!床石だから!石畳だから!痛いから!ストップストオオオオップ!」
「で、リョウ何のようだったんだ?」
やっと目が覚めたみたいかな…?
「おーいてぇ……なんか、最近やる事が過激になってないか?
まぁ、いいや……第三大隊に命令が下った。
第二の関にてノワル国連合軍を待ち受ける。
そして、俺たちは先鋒として第一、第二大隊と共に野戦を仕掛ける。関所の防衛は第四、第五、第九大隊が入る。
他の大隊には休息を取らせる事とになった。
第二大隊は第一の関撤退戦で殿を務めていたから。兵力が少し落ちてるからな無理はさせられない。
それと、最後に出発は月末だ」
とうとう…か…
シャルの仇が取れる…
たぶん楓とコウタは戦場に来るのかな、出来れば会いたくはないな…
何も言わずに出て行ったのだから怨んでるだろうし。
─────赤月 月末─────
現在俺達第三大隊は3万…第三大隊全兵力を伴ってエラトマへと向かっている。
ナーガ集落はそのまま素通りの予定だ。
第一、第二大隊は2万を切っているらしい、実働兵力はさらに減り、1万5千程といったところか?
計6万程の兵力だ。
対して現在エラトマに向かっている兵力は倍近い10万。
アルダーナ2万、ヒッガーザ2万、ノワルが6万の兵力を率いて進軍中と報告が入っている。
これだけの規模は初めてだがなんとかなるだろう…
短い間だが一応馬術も教えてもらっているし。
それに…この剣、漆黒の剣…これを抜くと心の中で何かが燻るんだ。
血が滾り、敵を殺せと言うかのように。
それから10日後俺達はようやくエラトマへとついた。
「長旅ご苦労さんっと…じゃあ、俺は将軍会議に行って来る、終わり次第会議開くから野営地作って自由にしとけ」
「「「了解!」」」
野営地を作れと言っても俺、作り方わからないな…いまさら気付いても遅いが…
「あー…ココス、悪いんだけど俺、天幕の設営の仕方わからないんだが…」
そう言うとココスはわかってますと言わんばかりに右手を上げた。
すると、ラウルフ族が数名走ってきた。
「お待たせしました」
「うむ…優先してシュン様の天幕設営を頼む」
そうココスが言うと命令されたラウルフ族数名が資材が纏めてある場所へと駆け寄り資材を受け取っていた。
程なくして天幕が出来上がり、挨拶をしてラウルフ達は自分達用の天幕設営をしにいった。
「すばやいな…」
「ええ、私自慢の部下たちですから」
そうだよな、ココスはちゃんと士官としての経験も豊富なのだ。
俺は…戦う事しかできないな。
「はぁ…ただでさえ自信ないのに余計に自信がなくなるよ…」
「シュン様、私が補佐しますから。シュン様は前だけを向いて戦ってくださればいいのですよ」
要は実際の指揮はココスが取ってくれるのか…
だがなぁ…
「それに…シュン様の戦いを見た者は、皆士気も高まりましょう」
昼も過ぎて日もそろそろ暮れようと言う頃には、関に留まる大隊以外の野営地は出来上がっていた。
あとはリョウが戻ってくるのを待つだけか。
そういえば、士官用の天幕は一つで二人用らしい。
そして、俺の天幕にはココスが割り当てられている、勿論リョウの差し金で。
「あー…ココス、嫌なら俺他の奴と変わるか…?」
さっきから黙っているのだ、やはり男と一緒なのは抵抗があるだろう。
俺には押し倒したって前科もあるしなぁ…
「……嫌とかじゃないです………」
かなり弱々しい声で言うのだから、説得力なんてまったく感じない。
昼間の頼りがいのあったココスとは思えない程に弱々しい。
まぁ…ココスがいいなら俺はいいんだが。
晩御飯を食べ終わり、いつでも出撃できるように準備も済ませた。
ココスにいたっては寝床を何度も確認している、ココスも緊張とかしてるんだろう。
聞くには大規模な戦闘は久しぶりらしいし。
手持ち沙汰になったので日記を書く事にする、未来に死の属性をもった者が読む事を考えながら。
書き始めて少しすると外から近寄ってくる足音が聞こえてきた。
「ココス様、シュン様…将軍がお待ちです…」
どうやら会議も終わり、リョウが戻ってきたみたいだな。
「ご苦労、今行きます…」
「じゃあ、行こうか」
「はい…!」
天幕の中は中央に10人ぐらいが囲める巨大な机とその上に関の地図と数個の駒が並べられていた。
皆が揃うのを待ち、集まったのを確認して、リョウが説明を始めた。
「大変待たせたな、中々俺の作戦に納得できないとか言っててな。
皆国のために戦いたいのはわかるんだけどな…
とりあえず…だ、関と関を繋ぐ街道での戦いになる。
ノワル連合軍が到着するのは明日の日中だろう。
街道自体は広いとは言えないが狭くもない、それでもって左右に山以外何もない平坦な道だ。
正直、正面から当たった力押しの戦いになるだろう。
敵の兵力は10万、報告では勇者のみで編成された部隊もあるらしい。
だが、兵力が兵力だまともに動かせないだろう。
作戦としては、基本は【魚鱗の陣】で行く。
力押しだからな、そして敵の予想陣形…陣形って呼ばれるもんじゃないだろうが。
中央に勇者達のみ編成の部隊、その後ろに歩兵隊。
そして…左右には騎馬隊が並ぶと思われる。
後は、指揮官の配置だ。
右翼にジーノ、デルミン、爺さんは歳だからな若いのに足元すくわれるなよ」
「大きなお世話じゃ!!」
「爺ちゃんの補佐は任せるでつ!」
「左翼にヒューリーとアーナン……無理だけはするなよ」
「………」
「は、はい!」
「中軍にヒナとササだ、臨機応変に各部隊を支えてやれ」
「は~い」
「御意!」
「本軍に俺とウラントとキリア…ウラント、キリア補佐頼む」
「お任せを…」
「はい」
「遊軍にミィコゥとミランダ、気付いた事ならなんでもいい報告をどんどんまわしてくれ」
「にゃ!」
「はぁい」
「最後に先鋒…シュンとココス、お前らに任せるぞ」
「…ああ…」
「この命に代えても!」
いきなり先鋒か…ココスはわかっていたんだろうかな、だから前だけを向いてろって言ったのかもしれない。
「他何かあるか?」
俺としては無いが…
「はい…」
「ココスどうした?」
何か不明な点でもあったかな?」
「敵指揮官等まったく聞いてないのですが…それと第一、第二大隊とはどんな連携を?」
「総指揮官はアリエスだ、補佐にグリムと勇者が一人だな…確か名前はサオトメ…だったか?」
サオトメ…?
まさか…楓か……?
彼女が指揮官補佐……戦場で会いたくない彼女と会う確立はかなり高そうだ…
「シュン様…?顔色が優れないようですが?」
いけない、大事なときに…忘れよう…とりあえず今だけは。
「いや、大丈夫だよ心配しないでくれ」
「そう…ですか?」
ああ、ココスに心配ばかりかけられないしな。
明日…人が沢山死ぬだろう…明日だけで決まらないなら翌日も…
何百、何千…いや何万の人達が死ぬかもしれない…
そして、少なくない数を俺が殺すんだ…
「……シュン様…眠れないのですか?」
「ん…まぁ…ね」
見透かされたかな…?
「シュン様はお優しい…ですが、危険でもあります…貴方が死ぬ事はこの国皆が悲しむ事…。
いえ、アグニス国だけではありません、レグ国の者達も悲しむのです。
きつい言い方かもしれませんが、貴方の命は貴方だけのものではないのですよ」
何度俺は同じ事で悩んでるんだろうか、ココスの言うとおりだな。
「ココスありがとう、ちゃんと眠れそうだ」
「……そうですか」
ああ、ゆっくり眠れそうだ。
28話目了です。
次回が開戦1日目です。
誤字・脱字・感想等ありましたらお願いします。
追記:
第五大隊が抜けてたので追加orz