26話目─Hrunting①─
今回は前後編となりますので、前半部分が短いです。
俺がここに着てから一月以上が経った。
なので今は茶月から赤月となった。
国王が起きている間は色々と魔法を教えてもらう。
他に、死属性のわかっているだけの事や。
過去に起きた死属性に関連のある事件。
この国の歴史等も聞いた。
レグ国はアグニスが出来る前は戦争状態だったらしい。
けど、アグニスが出来て。
また、人間がノワル国から独立して北の国を作り、ドリムスを建国。
詳しい事はわかっていないが、亜人種達と共生しているらしい。
それとアイルーンは部屋に入る事が出来なくなってしまった。
会話をするのも一苦労だ。
病の進行が予想より遥かに強いみたいだ。
下手したら一月も無いかも知れない、そんな予感がした。
後、たまにココスにも会いに行けとアイルーンに注意されたので、暇を見て会いに行くことにした。
最初は怒られたが、最近となっては慣れたのか。
ココスは会うたび嬉しそうにしてくれる。
ココスはココスで兵士達と訓練を積んでいるようで、ルーカスやゴルハーゲンという名前をよく聞く。
いつか会ってみたいと思うのだが、時間もないから会う暇等あるはずもない。
ココス曰く、面白い人と騒がしい人という評価だった。
ルーカスの腕は対したものでココスとほぼ互角らしい。
いつか、俺も手合いをしてみたい。
そう思えるのはこの世界に慣れた証拠なのかな?
この世界に来て辛い事を沢山経験したと思う。
楽しい事も経験した。
そして、今の自分が居る。
国王は…自分の人生に満足しているのだろうか?
国王は魔法を3種程覚えていた。
どうゆう魔法なのかも分かりやすく教えてくれた。
それから、また数日が経ち、1日のほとんどを寝たままの国王と共に過ごしていた。
魔術書を読み、復習をしていると、国王の喋る声が聞こえてきた。
「シュン…居ますか?……あなたと過ごした一月はとても楽しいものでした…
私はそろそろ死ぬみたいです……ですので、最後にこの話をしましょう…」
最後…?
明らかに早すぎる…まだ2ヶ月も経っていないじゃないか。
早くても3ヶ月と言われていたはずなのに…
「この国にはフルンティングと呼ばれる名剣があります…アルゴスの日記にも書かれていたはずです」
国王の口からその言葉を聴いて戦慄した。
どの日記でも漆黒の剣は結局は存在しないと書かれていたのに。
国王がそれは在ると言った。
「その剣は、元々ここではない何処かにあったと言われる剣なのです。
そして、人間達の言う勇者…異世界人ですね…その一人が……持ってこの世界に…来ました。
フルンティングとは…恐らくですが、貴方の世界にあった剣なのでしょう」
彼の言う言葉がいまだに信じられずに居る。
「信じられないでしょうが、事実です…
これは私の遺言となりますので…どうか聞いて、そして信じてください」
では…もう命は…
「……それはビーオルフの墓と呼ばれる場所に埋められています。
場所は死霊墓場に…詳しい位置はアイルーンに聞くといいでしょう…」
まだ聞きたい事はある。
知らない事だってたくさんある。
けれど、彼にはもう聴力も視力も何も感じる事が出来ない…
たぶん、自分が喋る言葉さえ通じているかさえわからないのではないか?
「最後に………漆黒の剣はシュン様に国はアイルーンに。
……そう伝えてください、お願いします……平穏な………良き…人生でした……」
それから彼が喋る事は無かった。
人だろうが魔族だろうが…簡単に死んでしまうのだろう…
それもこの人は、死属性だからという理由で死んだようなものだ…
力の持ち主さえ滅ぼす力…出来すぎじゃないか…
こんな力のせいで死んでたまるか。
だが…彼はまだ幸せだったのだろうか?
程なくして、死の気配が消えた事に気付いたアイルーンが近づいてくる。
『国王様?………逝かれたの…ですね………』
「今さっき…息を引き取りました…アイルーンさんが王になれと残して…」
アイルーンが静かに片膝を落とし、騎士の礼をした。
『最後の…お言葉……確かに、お受け取り致しました…』
しばらくして、アイルーンはいつも通りの態度に戻るが…。
『シュン様、他に…国王様は何か言っていませんでしたか?』
そうか…あの場所に連れていってもらわないと。
「フルンティング…を俺に継げと…」
その言葉に彼女も驚く。
彼女の父親が無いと言ったものが国王があると言ったのだから当然だ。
たぶん、彼が使わなかったのは余命が短い事…それと、使い切れないと思ったからなのだろう。
『そ、それで場所は!?』
「ビーオルフの墓にあると言ってました…」
その場所はこの国でとても神聖な場所なのだ。
掘り起こすという事に抵抗はあるだろう。
『……わかりました、では翌週守備隊を率いて発掘作業に入りましょう。
それと…見つかり次第、シュン様はアグニス国へお帰りください』
そうか、俺は元々レグ国王の許で魔法を知るためにきたんだから…
『申し訳ありません…本日は…部屋に御戻り下さい…』
今、一番辛いのは使え続けてきたアイルーンなんだよな…
「じゃあ、そうしてもらいます…アイルーンさん、こうゆう時ぐらいは泣いても恥にはならないと思います……すいません、出過ぎた真似ですね…おやすみなさい」
城の中を歩いていく……そして、何処かの部屋から…悲しみが篭った叫びが聞こえてきた。
たぶん…アイルーンが泣いてるんだろう……
「ただいま」
「あ、シュン様!おかえりなさいませ…?お疲れの様ですね…ごゆっくりお休みになってください」
ココスはまだこの国の王が死んだ事を知らない。
だからとそれに当たる程俺も腐ってはいない…けど、今は寝たい。
あ、本…まだ読み終わってないな…
かなりフラフラしていたようで、ココスの肩を借りてなんとかベッドの前に行く。
「シュン様!?大丈夫ですか…?……キャッ…」
どうやら、ココスの悲鳴が聞こえた気がした。
けど、もう今はどうでもいい…とりあえず寝たいんだ。
意識を投げ出して眠りに付く事にした
後半がかなり長くなりそうなので、もう少々お待ちください。
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