番外2─使節団その後─
いくら同盟国とは言え、失礼にすぎるだろ!
だが…はるかに予定よりも物資は多く受け取れたのは良い事か…
リョウ殿はなんと言うだろう…
シュン殿とココス殿が3ヶ月戻らない…
許してくれるだろうか…?
私の力が足りぬからこうなったのだろう。
馬車が止まる。
今は死霊墓場か…?
……もしや!?
馬車の扉を開け外に出る。
「ぬお!?王妹さん!あぶねーぞ、屍食鬼達が襲いかかってきやがったんだ!」
「私も魔王の妹です!戦力が低下してる今、私が戦わなくて何が王妹ですか!」
屍食鬼達がこちらに気付き襲いかかってくる。
「影から忍び寄る
闇からの爪は
この手を血に染め
私の手を汚すのですか
【アッテンアート】!」
足元の影から幾つもの刃が飛び出し、屍食鬼達へと食い込む。
「寒いあの日に
埋めたはずなのに
目の前にいる
出てくる度に埋めよう
あの木の下に
【ベグラーベン】」
食い込んだ刃の刃先が広がり抜けないようにする。
そして影が地へと吸い込まれ。
私の前に居た屍食鬼達は消えてなくなった。
いくら低級魔法と言えど、連発は辛いかな…
「オラッ!王妹さんが頑張ってるんだぞ!コボルト共根性みせんか!」
ジーノ殿が激励を飛ばし、コボルト達も戦う気になったようですね。
「お、俺だって!」
「生きて帰れたら話があるんだ…聞いてくれるか?」
「私も…言いたいことがあるから」
各々に声を出しながら屍食鬼等に襲い掛かる。
死霊は何処か?
居た!家屋の上か!
「ヒューリー殿!」
私が声を掛けるとすでに死霊へと飛び掛っていた。
なんと、すばやい…あれ程の腕なら将軍にもなれるだろうに…
死霊はヒューリーの猛攻に耐えるのがやっとといった感じに見える。
あれならばすぐに討ち倒す事が出来る事でしょう。
「王妹様…我がレグ国も指示を下されば…」
どうやら死霊魔術部隊達も戦いたかったように見える。
「ええ、お願いします」
「承知!各自陣形を取れ!下級闇魔法の使用を許可する!」
「「「はっ!」」」
「「足りない…まだ足りない
私達が求めるわけではない
求めるは我等が…
【ブルタール・アーベント】!」」
「「影から忍び寄る
闇からの爪は
この手を血に染め
私の手を汚すのですか
【アッテンアート】」」
「どんな夢を見たのかな
どうか話してほしい
夢の内容を
もっともっと
夜が明けるまで…
何も怖がる事はない
ここは夢なのだから
【アルプ・トラウム】」
見事と言いたい程に統率のとれた部隊だと思えた。
死霊魔術部隊は10名程とかなり数の少ない部隊なのだが、一人一人が優秀な闇属性の魔術師達なのだ。
一列に並び、端にいる4人が基本下級闇魔法で足止めをし。
その内側にいる5人が吸収型闇魔法を使う。
最後に隊長が範囲型中級闇魔法で殺しきる。
あの、隊長の魔力は私を遥かに超えている事だろう…
「王妹さま!あぶない!」
その声と共に後ろを向くと死魔女が腕を振り下ろすところだった。
「でっつ!!」
横から小さな少女…確かデルミンと言ったかな?
「ありがとう…デルミンさん…?」
「名前覚えてくれているのでつか!?こ、光栄でしゅ!」
なんとも、戦場の中にいるとは思えない笑顔をしている…
「助かりました、さぁ…この場を切り抜けましょう」
「はいでつ!」
程なくしてヒューリーが死霊を倒してくれたようで、屍食鬼や、彷徨う骨達は何処へと逃げていった。
「終わりましたか」
「王妹様…申し訳なかった、本来ワシ等護衛隊がやらなきゃいけなかったのにの」
ジーノ殿は真面目な方だ。
「いえ、手伝える事は手伝います、それに命がかかっているのですから」
申し訳ないとジーノ殿が頭を下げ、他の部下へ指示を出す。
どうやら何人かの戦死者が出たようだった。
何人かのコボルトは友人を無くし涙を流している。
同盟国内で戦死…無念でしょう…
「死霊魔術部隊の方々もありがとうございました」
「いえ、こちらの力も見せる事が出来ましたので光栄です」
隊長らしき人が笑顔と共に返事をしてくれた。
なんと、心強い事か。
確かに数は少ないレグ国…しかし。
個々の能力が恐ろしい程に高いのだ。
過去に八万の人間の部隊をわずか一千で退けたと聞いたこともある。
彼らの強さを垣間見た瞬間だった。
「さて、王妹さん早い所バフォメット集落に行こうや、ここは危険のままだからな」
ジーノさんの言葉に頷いて馬車に座りなおす。
シュン様、ココスさん、どうかご無事で。
私は貴方達が無事に戻るの願っています。