22話目─レグ国1日目─
お待たせしました22話目となります。
今回ちょっと厨ニ成分が強いかと思いますが…すいませんorz
デュラハン集落に到着してまず始めに浮かんだ言葉がある。
【異様】
死霊墓場でも霧はあったが、ここにも霧が立ち込め不気味さを醸し出してる…が!
何よりも異様なのは住民だ。
その集落に住む皆に頭がないのだ。
馬にもなく、農作業をしている人達にもない。
甲冑を着た人にも当然無い。
なんなのだろう、自分の目に写るものが信じられずにいる。
「始めてみる人は、皆シュン様と同じ顔をするんですよ」
その言葉に先に来て降りていた兵士達も彼らを見て固まっていた。
中には隣に居る仲間に逃げようと言ってる者さえ居る始末だ。
ちょっと人選間違えてないかリョウ…
『…き………え……?…』
頭の中でノイズと声のようなものが響く。
どうやら他の兵士達も聞こえているようで、周りを見渡したり、怯える者達も居た。
どうやら、ココス達のレグ国への来訪が始めてではない者達はどんなものかを知っているようであったが。
『ようこそアグニス国の使節団ご一行様でお間違いありませんか?』
どこからか声が聞こえる。
『まっすぐ進み突き当たりに屋敷がございます、本日はそちらでお休みください』
とりあえず、ココス達が何かしらの反応をしているわけではなかったので大丈夫だと判断し、進もうと指示を出して歩き始めると程なくして霧の中から大きな洋館が見えてきた。
使節団一向が屋敷の前に着くと扉が自動ドアのようにギ…ギギ……とゆっくりと開いてゆく。
雰囲気からしてかなり不気味だ…
扉開くのだけでもコボルト達はというと…
「ぎゃああ俺はもうだめだあああ」
「呪いだ!呪いだあああ!!」
「逃げていいよな?な?」
といった感じに錯乱しまくっている。
「とりあえず、皆落ち着いて、俺も正直怖いけど…ここは同盟国なんだ危険はないと思う…たぶん…」
死霊墓場での事を思い出す。
『どうぞ、中へお進みください、中で将軍閣下がお待ちです』
ココスの方を見る。
「行きましょう、ジーノとデルミンは兵士達を落ち着かせ休息を取らせよ!」
「あいよ」
「了解でつ!」
「では、王妹様行きましょう」
リディが馬車から降り落ち着いた風に進んでいく。
正直士官で驚いてたのが自分だけだったので気恥ずかしさが沸いてくる。
屋敷に入るとタキシード姿のバフォメットが右腕を左胸に当て待ち構えていた。
「ようこそアグニス使節団の皆様方お待ちしておりました、本日ご案内を務めさせていただきます、ラーリスと思います」
ラーリスとバフォメット族の執事っぽい人だ。
体質か年齢かわからないが眉毛らしき部分だけが白くなっている。
目はヒューリーのような人間の名残を持ってなく、動物の山羊の様な目をしていた。
観察してみると同じバフォメット族でも違ったりするんだなぁ…
不謹慎だがちょっと面白いと思ってしまった。
「シュン様、行きますよ?」
っと…考え事に夢中になってたようだ。
ラーリスの案内の元2階にある謁見室へと案内された。
「アグニス国よりの使者様方がご到着しました」
『お開けなさい』
扉が開き部屋の中へと進む。
「お久しぶりですお変わりのないようで安心しました」
『いえいえ、王妹様はよりお美しくなられました』
人が立っているのは見えた、けれど…
その人にも当然首から上がない。
正直目の前の光景を信じられずにいる。
首は何処か?と探してみるとすぐにみつかった。
それは透明なガラスに生首が…金髪で容姿はリディにもひけを取らない美女の生首が入っていたのだ。
『………では、その通りに。
…おや…?初めてお目にかかる方がいらっしゃいますね…
初めまして、レグ国の将軍とデュラハン集落村長をしております、アイルーンと申します。
それにしても…いや…初めて見ました……』
多分、俺の事だろう。
「お初にお目にかかります、第三大隊所属、王妹様の護衛隊を指揮していますシュンと申します…以後お見知りおきを」
「本当に…第三将軍様のご友人には驚かされます…人間で、しかも死属性ですか…」
その言葉に驚かされた。
普通魔力というのは見えないものだからだ。
魔法を使えばどの属性かはわかる、けどこの人は見ただけでその魔力がわかったから。
「あの…アイルーン様…大変失礼なお願いとなるのですが…
よろしければ、死属性について色々知りたいのです。
なんでもいいので教えてはもらえないでしょうか?」
『どうして、そこまで死属性について知りたいのですか?
それは…探究心ですか?
それとも、貴方方の敵を倒す事にですか?』
俺は…
「この力がなんであれ…俺の…いえ、自分の仲間たちを守れるのなら。
守るために、俺は知りたいのです」
少しの間…
『フフ…守るためにですか…
本当に面白い……王妹様、物資の件ですが。
ご希望の量に半年分程の物資を追加させてもらいましょう』
「アイルーン殿…寛大なお心に感謝致します」
任務は完了、後はあの沼地を抜けるかぐらいか。
『ですが…そこのシュン殿…その者を半年…いえ3ヶ月お借りしたいのです。
勿論客将として……拒否されるようでしたら物資の件は無かったという事に…』
「な…何故です!?」
『簡単な話です、私達はその人間を知りたい…それとその者が知りたい事に詳しい御方に会わせたい。
アグニス国側から見ても得に繋がる事と思いますが?』
会わせたい御方…その人に会えば俺は守る事が出来るだろうか?
3ヶ月…まぁ、俺としてはいいかな、もう帰れないってわけではないだろうし。
「…わかりまし…「ダメです!」
俺が了承の返事を出そうとした時リディは拒否の返事を出した。
『ほう…?理由を聞いてもよろしいですか?』
「この方は第三大隊の士官じゃ…おいそれと他国に置いておける者ではない、アグニスの宝なのです」
宝…か、過大評価している気がしてしまう。
そう、俺の事を評価してくれると、誰かが言っていた言葉…
『疫病神』頭の中でこだまする…
誰が…そんな記憶はないはずなのに。
「リディ様…」
レグ国の国王も死属性と聞いた。
それならば…少しでも情報をもらおう。
「俺残ります、リョウ達には悪いけど、今の俺がするべき事はレグ国にあると思うから」
「シュン様!あなたはこの護衛部隊の隊長なのです!それでは…」
うん、第三大隊入っての初仕事を完遂せず、ここに残る…
たぶん、帰ったらかなり怒られるんだろうなぁ…
「ココス、ごめん…帰りの指揮はジーノに任せる、他は補佐してあげてくれ」
「それでしたら!私もシュン様と残ります!」
何故ココスまで残るんだ?
『ココス殿ですか…?あなたがレグ国に残る理由など無いと思うのですが…』
アイルーン様の言うとおりだ、ココスは戻って第三大隊の指揮をとらなくちゃ。
「いえ、理由はあります…」
『理由とは?』
「私の最優先事項はシュン様の補佐です、理由はそれだけで十分かと思いますが?」
…だが…
「ココス、だが国はどうするんだ?お前が抜けたら…」
確かに穴としては小さいかもしれないが…万が一という事もある、戦力は少しでもほしいのだと思う。
それに、この人と話して全てを鵜呑みにしてはいけないと心の中で叫んでいるのだ…
最悪の事を考えた、その上でココスがここに残る事を反対しているんだけど…
『……いいでしょう…そちらがそれで良いのでしたらお二人には残っていただきます』
「…っく…わかりました、3ヵ月後…こちらで迎えを送りします…
ですが…万が一返還なされぬようでしたら…」
半分脅しをかけ念を入れるリディ。
だが…同盟国相手に言う言葉ではない気もする。
『わかっておりますわ、我らではアグニス国に助けられている間柄…
そうですね…それでしたら闇魔法部隊の死霊魔術部隊をお渡し致しましょう』
納得と言った風に頷き、俺とココスを残し退室してゆく。
『ああ、そうそう…宿の方は準備が出来ておりますので、本日は宿の方でおやすみください』
『おまたせしました……それにしても、生命力に溢れた死属性使い…なんとも奇異な…』
…アイルーンさんの言葉を聴く限り死属性を持っている人は生命力…元気がないのだろうか?
「アイルーン様…どういう事ですか?」
『そうですね…現在我が国で死属性を持っているのは僅か国王様ただお一人です。
ですが…50年前は12人程居ました…
10年前は2人…そして、5年前には国王様一人となってしましました』
死属性というのは、魔力の為か、はたまた呪われた属性なのか、その属性を持つ者達は総じて皆短命なのだと言う。
大半は発狂死、それ以外は自殺と事故死だと言う。
それから死属性は呪われた属性と言われている。
『といった感じでしょうか…ですが、国王様だけは齢40を越え、未だに生きております。
ですが…もう長くはないのです長く持って半年…』
ちなみに、死属性もちの平均年齢は20にも満たないとの事。
国王やアイルーンのデュラハン族は250歳、ヒューリーのバフォメット族は平均年齢は300歳を越える。
だが、国王は病気を患い長くはないとの事だ。
『ですので…少しでもシュン様には死属性の知識をついでいただきたく。
それとあの方の近くに大勢いますとどんな不幸が降りるかわかりませんので…』
知識をもらえるのならば、魔法も使えるようになるだろう。
だが…不幸…その言葉が耳に残る。
ガクだったかな…不幸になると言われたな…
『お気持ちが変わりましたら、どうぞ申し出てください、今更物資を渡さないとは言いませんし』
「いえ、そんな事はないです。此方からもお願いしたいぐらいでした」
そう言うとアイルーンは安堵の溜息をつく。
『ご理解いただき感謝致します、申し訳ないですが…本日中に首都レグへとご案内致します』
案内で地下にある儀式をしているような部屋に入る。
『ここは一部の国にしかない転移陣です。
闇魔法の使い手にしか使えませんが…』
3人中央に乗りアイルーンが詠唱を始める。
『霧の呪縛はやがて晴れる
皆の無事を私は祈り続ける
何も怖がる事はないよ
さぁ安心して
そこは果てのない距離を刹那に変える
一緒に行こう
【闇の渡り鳥】』
アイルーンの詠唱とともに同時に部屋に霧が立ち込める。
視界が利かなくなったと思った瞬間にはすでに霧はなく。
そして自分が居る場所さえも変わっていた。
「詠唱する魔法って始めて見た」
「そういえば…シュン様の前では誰も見せたこと無かったですね。
普通は必要なのですが、簡単な魔法なら無詠唱でも可能ですね、死霊墓場で皆が使ったのは無詠唱でも可能な物だけです」
簡単な魔法に殺傷能力は無いので目くらましや脅し程度で使うぐらいらしい。
部屋を出ると外は暗く、後ろを振り向くと塔になっていた。
「あれ?地下室に居たはずじゃ、それに夜…?」
『私が唱えたのは決められた場所から場所へ移動できる転移魔法です。
それと、レグ国に太陽は射しませんから、年中夜といっても過言ではありあませんね』
レグ国の首都は太陽の光が届かない場所にあるというのだ。
デュラハン族や魔人族等は光が無くてもくらしてはいける。
だが人間やエルフ等は別だ、人間は普通の生活さえ送れないだろう。
だが…俺はこの国は凄く過ごし易い…そう感じた。
それに気付いた事なのだが暗闇でも目が見えるのだ。
なんだろう…とても居心地がいい…
『こちらがお二人の寝室となります』
何時の間にか客室に到着していた。
「す、少し待ってください!」
『ココス様?如何なさいました?』
俺と一緒の部屋に居るのは嫌なようで
部屋を別にしてくれとアイルーンへお願いしているようだ。
『ですが、レグ国への来訪は歴史上今回が初めてのため…客室もここしかないのですよ。
申し訳ないですが、それが嫌でしたらココス様だけでもお帰りになりますか?』
アイルーンが言うとココスは何もいえなくなってしまった。
「まぁ、嫌ならしょうがないし、ココスだけでも戻ったらいいんじゃないかな?」
「いえ!嫌とかではないです!…決して…それに最優先事項はシュン様の補佐です!」
そう言うと鼻息荒くココスが捲し立てる。
「それにシュン様はアグニス国の将です!それに魔王様のご友人となりました。
もっと御自分を大事にしてください!」
仕舞には涙目となっている。
『あらあら、これは申し訳ありません、からかいすぎましたね。
帰る帰らないどちらにせよ、私の今の魔力では送る事は出来ねも帰る事は出来ませんから。
結局は一晩はお二人は一緒の部屋で寝てもらいませんといけないのですよ』
どうやら、ココスは遊ばれてたみたいだな。
「な…ななな…」
ココスは頭に血が上ってまともに喋る事もできなそうだ。
「わかりました、それで私達は今後どうなる予定ですか?」
今の状況のココスでは話しが進まないだろうから俺が聞く事にした。
『国王様との謁見はシュン様お一人となります。
その際ココス様には練兵場にて視察をお願いしたいと思います。
同盟国アグニス国の士官様ですから、我が軍の士気も高まる事でしょう』
「わかりました、ではその通りにお願いします」
仕事があるとアイルーンと別れる。
別れ際に食事等は数時間毎に来る者に伝えてくれと言われた。
部屋に入ると小奇麗な客室があった。
部屋は暗めにされて居て、明かりは壁に立てかけられている蝋燭が2本だけだ。
だが、その暗さが自分には調度良くさえ感じた。
「暗いですね…足元にお気をつけてください」
「いや、大丈夫ちゃんと見えてるから」
そう言って近くにあったソファーへと腰掛ける
10日程馬車の旅だったからソファーの柔らかさに気が緩む。
「フフ…さすがに長旅ですから疲れたでしょう…」
「そういえば、ココスのワーウルフは大丈夫なのか?」
「ええ、たぶんヒューリー達と戻る事でしょう」
ラウルフ族の少数が扱う事の出来る仲間、ワーウルフ。
体調3メートル程の大きさの狼だ。
普段は大人しいがラウルフ達と戦う時はその牙と爪で相手を薙ぎ倒す
また、馬のように乗る事も可能で食事も用意する事もあるが、基本は生えている草や動物を食べるらしい。
大事な家族なのだとココスは語っていた。
ココスとの話しも一段落と言ってもココスは聞かれた事に答えるだけだったが。
コンコンッとドアと叩く音が聞こえ返事をすると、メイドさんが入ってきた。デュラハン族のようで首はないのだが。
「お食事の方は如何なさいますか?ご希望でしたら此方へお持ちしますが」
案内してもらおうと思ったが、メイドさんの様子を見るとどうやら脅えているようだ。
たぶん、人間が怖いのだろう、よく見ると身体を震わせている。
「いや、今日はここで食べようと思います」
かしこまりましたと返事をしてメイドさんが出て行った。
数分後配膳台で運び食事をテーブルに並べてゆく
「食べ終わりましたら廊下に置いていってもらえれば運びますので」
どうやら俺達はあまり歓迎はされてないようだな…
そういえば、この国は湿気が強いな…
暑くはないが気持ちがいいわけじゃない。
服も濡れてるし。
そういえば部屋にトイレと一緒にシャワーがあったな。
「ちょっとシャワー浴びてくる」
とココスに言うと尻尾をピンッと逆立てながら勢いよく返事を返してきた。
一体どうしたのだろう?
この部屋に入る辺りから少し変だ。
まぁ、そこまで気にする事でもないかな?
ココスの事だ何か考え毎でもしているんだろう。
軽くシャワーを浴びスッキリした所で部屋に備え付けられていたバスローブがあったのでそれに着替えさせてもらった。
「ココス先に浴びさせてもらったよ」
「い、いえ!だだだ大丈夫です!」
緊張でもしているのか?
確かにここはアグニスじゃないから緊張すると思うけど。
今この部屋に居るのは俺とココスだけなんだし…
「ココス、あまり緊張しなくてもいいと思うぞ?俺しか居ないんだし楽にすればいい」
「は、はい!ででわ、私も湯浴みしてきますね!」
言い終わる頃には既にシャワーを浴びに行っていた。
なんか今日のココスは変だな?
少し今日は疲れた…
瞼も重いし寝るかなぁ…
明日からちょっとだけ楽しみだ
寝るにしてもベッドが一つか…
ベッドにはココスに寝てもらうとして。
まぁ、ソファーにでも寝ればいいよな。
寝苦しいといっても馬車の上で寝るより遥かにいいし。
「ココス、悪いけど先寝るな。おやすみ」
翌朝、ココスは不機嫌になっていた訳なんだが
何かしたかな?心当たりはいくらでもあるけど…
22話目了です。
詠唱だせぇwwwって思った方笑ってやってくださいw
いいんじゃね?って思った方もそう思っていただけるとうれしいです。
シュンが鈍感過ぎるかなぁというか無神経すぎるかなぁって思ったり思わなかったり。
ちなみに、詠唱魔法ですが現時点の設定で1つの属性に4~6個程あります。
なので戦争パートとか入ると詠唱が所々に入ると思われます。
やめた方がいいんじゃ?って思う人が結構いるようなら魔法の名前だけにしようかなぁとか考えてますが。
次回は国王の登場と次も説明文多いです。
誤字脱字、感想等ありましたらご一報ください。
では、また次回。