18話目─暗殺者─
3日続けて更新となります19話目です。
一応アグニスに入ってからこの辺までは話の流れは練ってるのでスラスラと書けた気はしますが、如何せん文章力が…
少しでも楽しんでもらえたら光栄です。
ちょっと今回はドロッドロしてるかと思われますが・・・
生活に必要な物を全て買い。
費用は国が持つという事らしい、リディさんが来たのはその証人としてもあった。
それなら書簡でも用意すればいいのにと思ったのは内緒だ。
自宅への案内の前にリョウに一度兵舎に来てくれと言われていたので第三兵舎へ向かう事になった。
「なぁココス、荷物はどうやって届けるんだ?」
「店の者が運んでくれますよ、それを生業にしている者達も居ますし」
なるほど、所謂引越し業者的なアレか。
なんだかんだで元の世界と仕事は似てたりするんだなぁ…
それにしても、首都だけあって街はかなりの広さだな…
街の区画は10程あるらしく、今回回った場所は第三区画と中央区画のみ街一つでどれだけの人が住んでいるんだ…
「では、後は私たちのみで大丈夫ですので王妹様は城へお戻りください」
「そうですか、では戻りますね。
シュン様お兄様を支えてあげてください」
「はい、力の限りそのつもりです」
「それでは…失礼します」
そう言って中央通りでリディさんと別れたんだけど、ココスとヒューリーの様子がおかしい。
「二人共何かあった?」
「はい、どうやら何者かにつけられているみたいです。
どうやら、狙いは私たちのようですね…
気付いてない振りをして兵舎へ向かいましょう」
だが、言われてから意識するなと言う方が無理だと思うんだ…
けど、なるべく何時も通りに努力しよう。
「…裏路地に入って誘き寄せましょうか?」
相手は何人いるかわからないけれど、ココスが居るし、ヒューリーもいる。
二人が戦ってる所は見た事ないけど、大隊の部隊長達だ。
頷いて裏路地に入る。
「走って!」
ココスの叫びと同時に3人同時に暗い路地を駆け抜ける。
道がわかるはずもなく適当に走ると行き止まりへ迷いこんでしまった。
「くそ…」
「いえ、この裏路地は迷路みたいになっていますので、余程運がよくないとこうなりますよ。
それに…ちょうど追っ手も到着したみたいですし…」
その言葉と同時にココスとヒューリーは武器を抜き臨戦態勢に入った。
俺も剣を抜いて振り向くと、追跡していた者達はおよそ10人程…そしてその一人の人物に驚愕した。
「よう…久しぶりだな裏切り者」
「コ…コウタ?、何でここに…」
「ふん、お前が裏切ったせいでな、俺達の信頼も無くされ。
諜報部だった俺は敵地の諜報部隊に回された。
カエデは最前線で休みなく戦わされてる。
わかるか…?今俺がここに居る理由はお前の裏切りのせいだよ糞野郎」
「……」
何も言い返せなかった…。
当然だ俺はノワルに居た時は二人とずっと居たんだから。
この二人が辛い状況に居るのは俺のせいなんだろう…
「…ど……よ…っ……ろ…」
「ア?言いたい事があんならハッキリ言え裏切り者」
「どうすれば…よかったんだ……」
俺はどうすれば、よかったんだ…あの時は一番よかったと思っていた。
「お前が魔族に裏切らなければよかっただろう」
本当にそうだったんだろうか。
「俺はノワル国に殺されかけた」
「お前が魔族と内通してたからだろう」
「違う…それ以前の話だよ…
憶えているか?シャルの処刑の事」
ノワル国が俺の暗殺を失敗した時シャルが冤罪で殺された。
「ああ、お前が誑かしてやったらしいな」
「違う!アレは…ノワル国が俺を殺そうとして…けど、それは失敗して責任を何の罪もない彼女に擦り付けたんだ」
「見苦しいよ、お前…じゃあ、何故お前は脱走してそれと同じタイミングに魔族がノワルに奇襲をしかけてきた?
何故、お前はその時逃げた?
ノワル国全員がお前を魔族と内通してると思ったよ。
だから、俺がココに来た…裏切り者のお前を殺しにな!」
ダメだ…まったく話を聞いてくれない…
どうすれば…俺の話を信じてくれる?
「副隊長…もうよろしいか?」
「…ああ、相手は魔族とは言え3人だ生きては返さん…。
中央の人間を殺せそうにないなら捕獲でいい、捕まえて餓死でもさせてやるしか手はないだろうからな。
気をつけろよ、奴は強い」
俺はコウタと戦えるのか…?
だが、戦わなければ俺だけでなくこの二人も死んでしまう…
「シュン様!敵が来ます集中してください。
それと隙を見つけたら逃げてください!」
ココスの言葉にッハとする。
「俺も…戦うよ、二人を置いて逃げるわけには行かない…」
「ッハ、裏切り者も魔族では偉いもんだなぁ、やっぱり魔族と内通してたか…糞野郎。
少しでもお前を信じた俺が馬鹿だったよ…。
よくも、アイツを泣かせやがって、辛い思いをさせやがって。
許さねぇ…手前だけは絶対に殺す!俺の命と引き換えにでもなぁ!」
叫びと同時に正面から数人が襲いかかってくる。
「っく…ヒューリー!なんとしてもシュン様は護る!」
「……ああ…」
この二人を…殺させるわけには行かない!
「俺も戦う!逃げたくないんだ!」
叫びぬけてきた一人に切りかかる。
「お気持ちは辛いのですから無理はなさらないで!」
剣を受けてわかる、兵卒の腕じゃない…
一人一人がかなりの腕の持ち主だ。
たぶん、能力が無ければ一人も倒せないだろう…
「魔法は使うなよ!敵の増援が来ると面倒だ」
「「「ハッ!」」」
「このお方は殺させはしない!」
ココスの叫びと同時に一人を突き殺す。
「………」
ヒューリーは武器の鎌で相手のバランスを崩し、頭の角で相手の頭を突き刺した。
「くそ…なんだあの二人は…俺達は一人一人だって魔族と対等に戦えるはずだ。
何故!貴様の周りはそうなんだ!……認めない…俺は貴様を認めんぞ!!」
確かに一体一ならあの二人に分はあるけど…敵はまだあと八人も居る、それにコウタも居る。
それにコウタは副隊長と呼ばれていた、それならば…何処かに隊長も居るはずだ。
「糞…!俺だって…守りたい人達を失った!今度こそ…それを失えない!」
歯を噛み締め剣を弾きそこから胴を薙ぎ払う。
「うるさい!貴様が元から来なければ…アイツは悲しまなかった…
アイツはな!ずっとお前を信じたんだ!それを裏切ったのはお前だ!」
「俺は死にたくなかった!」
「お前が死ねばアイツは今以上に悲しまなくて済んだ!」
この二人には辛い思いをさせたと思う。
コウタは敵地に入り込み諜報や今みたいな暗殺を…
カエデは激戦地の最前線で戦うハメになったんだろう。
確かにそれは俺が魔族に裏切ったせいなのかもしれない…
けど、俺が生き残るには…リョウの言葉どおりにするしかなかったんだ…
「それにグリムから聞いたぞ、お前山賊もやってたらしいな、それでお前のせいで内乱がおきた。
…戦闘員はお前意外全員死亡…非戦闘員は奴隷になった。
お前は疫病神だよ、関る人間皆が不幸になる」
……否定はできない、事実あの国で俺と仲がよくなった人は死んでいる。
「シュン様!お気を確かに!あ奴の口車に乗ってはいけません!」
ココス、俺はどうすればいいんだろう。
さっきからシャルやスー達の死んだ時の顔が浮かんでは消えていく…
「今だ!控えてる奴らも全員行け!」
コウタの合図と同時に家屋の屋上から十数人ほどの人間が出てくる。
ああ…また俺と知り合った人が死ぬのだろうか…
「シュン様!」
バチンッと左頬に衝撃を受けた。
どうやら、ココスが俺に平手打ちをしたみたいだった。
「シュン様…貴方は言っていたではないですか!この国の人達を護りたいと。
貴方は……見捨てるのですか!この国の皆を!貴方を死なせまいと努力しているリョウ達を!」
そうだった、馬車で言ったじゃないか、俺はこの国の人達を護ると…今死んだらそれこそ逃げだ。
目が覚めた…うん、彼女達が死んだのは俺の力が足りなかったからだ。
手は合ったかもしれない、けど…悲しいけど過ぎ去った事なんだ…
「コウタ…」
「なんだよ、遺言ぐらいは聞いてカエデに伝えておいてやるよ」
「ごめん…俺はまだ死ねないんだ、俺はお前を殺したくない、だからなるべく早く逃げてくれ」
「……それがお前の遺言か…最後まで胸糞悪い奴だよ!!」
敵の部隊が襲い掛かってくる。
「ヒューリー!上の敵なんとかできるか!?ココスは俺の後ろを頼む!先頭は俺がなんとかする!」
「御意」
「後ろは任せてください!」
一体一ならどうにでもなる、それに路地は狭く二人並んでは動き回る事は出来ない。
相手はどうしても、一人ずつ相手をする事になるんだ。
ヒューリーの動きはとてつもないとしか表現できない。
全身凶器なのだ、頭の角は鎖帷子を貫き。
手は肉を千切り、鎌は分断する、蹴れば鎧を身体にめり込ませる。
数分で上に居た者はヒューリーのみとなっていた。
また、ココスの実力もすごい突き技は相手の急所へ届く。
それに、筋力も人間より遥かにある。
「くそ…魔族は出鱈目すぎるぞ…」
「副隊長…こちらの戦力は残り10人を切っております。
「ここは一度撤退すべきかと!」
そうだ、そのまま逃げてくれ…
「ダメだ!あの裏切り者はここで殺さないと俺達が滅ぼされるぞ!」
「ですが!」
「文句有る奴は勝手に退け!俺一人でもあいつをぶっ殺す!」
そう言いコウタが前に出る。
「シュウ様…」
「二人共ありがとう、けどこの人だけは俺がやるよ」
二人を後ろに下げコウタと対面する。
「やはりお前と関ると不幸になるんだな…だが、汚れるのは俺一人でいい、アイツを護るのは俺だけでいい」
コウタの気持ちもわかる…けど、俺だって死ねない…
出来る事ならコウタとは戦いたくない。
殺さないようにして逃がそう。
「お前らは戻れ、俺もこいつを殺したら戻る」
コウタ以外の人間は素早い動きで屋根に飛び移り何処かへと行った。
「まったく…お前のせいで全て台無しだ…」
「コウタ…」
「もう、お前に名前など呼ばれる筋合いはない、死んで詫びろ!」
袖裏に隠していただろう隠しナイフ…暗器を数本投げてくる。
盾で防いでいる間にコウタは魔法を射出、初陣の時に使った魔法だ。
拳サイズの竜巻を3つ程襲い掛かってくる。
パチンッという音と共に目の前で消失。
「…ッチ!どこまでも…出鱈目なやつがあああ!」
「ッく…」
竜巻と暗鬼を同時に投げてくるそれを盾で防ぎ正面を向く…が、いない。
「こっちだ!」
左方より声が聞こえそちらを向くが居ないと思った瞬間右腕が上がる。
ガキィンッっと音と共に重い衝撃。
「くそっ!これも駄目かよ…」
コウタはかなり強くなっている、能力がなければ俺なんかより遥かに強い。
それだけの訓練を積み、厳しい敵地での潜入で経験も豊富なのだろう。
それでも今の俺は、彼を倒さないと行けない。
コウタは右へ左へまたは正面、後ろに回り込んでと動きを止めず俺に息も止まらぬ攻撃を仕掛けてくる。
俺が左を向けば右に居て、上かと想えば後ろ、正面かと思えば左からと的を狙わせない。
「なんというスピード…これが勇者?…シュン様!」
「…大丈夫だから…っく、早く戻ってリョウ達とご飯を…っ!……食べよう」
「……はい…はい…、見守らせていただきます…」
「余裕だな裏切り者!」
余裕なんてない、それでもココスに心配は掛けさせられない。
何十秒たっただろうか、もしかしたら数分、数十分かもしれない。
何十、何百とコウタの猛攻を受け続ける。
「なんなんだ!なんで手前は死なない!」
「死ねない理由がある…なんと言われようと…」
「ッハ!英雄気取りか!」
アレだけ打ち込んでも息一つ切らさないコウタ。
「だがな!攻撃さえできないお前なんかに俺が倒せるかよ!」
確かに未だに一度も攻撃を出来てない…けど…
若干だが、コウタの速さに慣れてきた所だ、それに…
コウタは常に裏を書こうとしている、そう気配を感じる所には絶対にいないんだ。
それとある癖も見つけた。
裏をかこうとしてワンパターンになるんだ。
「お前が死ぬまで…もう止めん!」
来る…!
左側より一気に距離を詰めてくる。
「ウォラアアアア!」
左から声、気にせず剣を振り上げながら右に向く…瞬間。
コウタの驚いた顔と手が止まったのを見逃さない。
「ラアアアアアアッ!」
剣を峰打ちで振り抜く。
「ガッッ!」
勢いもあったため吹っ飛び路地の壁にぶつかる。
肋骨等折れる程の衝撃だったと想う。
コウタは血を吐き、ゆっくりとした動作で立ち上がる。
「ッグ…て、手前…」
「勝負は着いたろう、早く逃げてくれ…」
すでにコウタに速さはない。
あまりの衝撃で足に来てるんだ。
「まだだ!俺が死んでもお前だけは……」
「いえ、もう終わりだ」
舞う鮮血。
跳ぶ四肢。
見開いた目。
驚愕の表情。
倒れ行く身体。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
「っが…なんだ…?」
「全く…副隊長がこの様では…
有能な部下を無駄に消耗し、また任務も失敗。
全く…万死に値しますね無能が…」
コウタが倒れた後ろに黒装束を来た人が小刀を持って立っていた。
小刀からはコウタの血と思わしき液体も滴り落ちていく。
「っぐう…て、手前…」
「隊長に向かって手前とは…いやはや偉くなったもんだな無能の癖に」
「やっぱりか…こうなる事はわかっていた…、やっぱりシュン…お前は疫病神だよ……くっ呪われてるよ…」
「コ、コウタ…」
「いいか、カエデは…お前が護れ、死なせるな…戦場で会ったら無理矢理でいい…お前の元から離すな…」
「あ、ああ…必ず…」
「ふん…まぁ…」
フォンと風切り音と共にコウタの首が飛ぶ。
「ふぅ…全く魔族なんかと話すからこうなるんだ無能」
溜息をついてから斬ったコウタの首を蹴りつけた…
「お前…」
「さて…任務は失敗…戦力も8割が消費…遣る瀬無いな、今度は有能な奴がほしい」
まるで、俺達3人等居ないかのような態度。
こいつは…
「待て!、貴様を捕まえて情報を聞き出させてもらう!、行くぞヒューリー!」
「………」
ココスは正面から、ヒューリーは跳び攻撃を仕掛ける…が。
ココスの突きもヒューリーの縦斬りも当たらない所か、二人共擦り抜けてしまった。
「なっ…!?」
「……っ!?…」
「ふぅ…ま、首でもあればいいか…じゃあ、各自撤収!場所は乙!」
その言葉と同時に何処に隠れてたか数人が飛び去る音がし、気付けばコウタを殺した本人さえ消えていた。
なんなんだ…
残されたモノはコウタと数人の死体。
そして、言い表せない不安感だけだった。
「」
ココスが何かを言っているが全く耳に入らない。
休みたい…
そう思ったら何かに引っ張られるように意識が消えていった。
19話目了です。
最初の方から居たコウタさん死亡です。
コウタは初期から死ぬ予定でしたので、ようやく…といった感じではありますが。
本当はもう少し早い予定でしたけど、ちょっと遅らせちゃいました。
コウタはカエデに一途でしたという事ですね。
一緒に横を歩けないなら影から護ってやるといった考えだったのをもうちょっと出したかった…かな?
誤字、脱字、感想等ありましたらご一報ください。
では、また次回。