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11話目─ラウルフ集落─

第11話目です。

前回は1ヶ月近く空いた次の日に2話連続更新です。

鬱展開は多分少しの間は打ち止めかと思われます。

たぶん・・・

薄暗い洞窟の中に金属の擦れる音が、肉が裂け血が噴出す音が木霊する。

また、獣の叫びが新たな獣を呼ぶ。

「はぁ…はぁ…リョウ、こんなキメラいるけどよく無事だったね…ゼェ…来る時…ゼェ…ハァ…」

「いやいや、流石にこんなに出会わなかったよ、なんでこんなに寄って来るんだい?」

「たぶん、ヒナの魅力ですねぇ…はふぅ疲れた、ってリョウちゃんも戦ってよー!」

「俺?いやいや、肉体労働はヒナ担当でしょ?俺はほら、頭脳担当だからさ」

「馬鹿リョウちゃん死んじゃえ!こんな乙女にばかり戦わせるなんて!」

「いやいや、こんな場所で死ねとか冗談にならんってヒナが居なきゃ俺死ぬから」

リョウは笑いながら歩き続ける。

今俺達はアグニス国に向かって洞窟を歩いて居るんだけど、リョウは確かにキメラが居ると言っていた。

うん…言っていた…けど、洞窟に入ってまだ数十分ぐらいだろうか、後ろを向けばまだ仄かにだけど入り口の光が見えている。

そう…いまだに光は見える距離しか移動していないけど…キメラとは10体以上遭遇していた…

「いやぁ、まさかこんなに居るとは予想外だねぇ、を知りて己を知れば百戦してあやうからずと言うけど、これはどう見ても相手を知ってないね、ちょっと危ないかも?」

「セイッ!……ふぅ、リョウそのを知りてって何?」

現れたキメラを切り伏せリョウに聞いた事の無い言葉の意味を聞いた。

「なぬっ!?貴様!孫子を知らんとな!?……嘆かわしい…最近の若い者はなっとらん!なっとらんよ!」

何故年寄りみたいな言動に…?

それにリョウとはそんなに離れてないと思うんだけど…

「えっとねー、孫子って言うのは昔の中国の人の事なんだよー戦争に勝つための本を書いた人なんだってさー」

ヒナコがリョウちゃんが説明すると1日じゃすまないからねぇと溜息混じりに言いながら説明をしてくれた。

「まぁ、もっと説明したいが、今説明しても頭に入らないだろう、国に着いたら説明会でも開こうか」

リョウはそう言いながら歩いていく。

「えー…ヒナもうやだー何回も聞いてるよー」

「ヒナ…お前はいつも寝てるだろう…今度は寝かせんからな!」

「やあだー、難しい話わからないし!」

「フフフ…わかるまで何度でも手取り足取り腰と璃説明してあげるから安心しなさい」

「そうゆう事じゃないよ!というか、気持ち悪い!殴るよ!」

「ハグァッ!…何!?もっと詳しく知りたいと…ヒナは真面目でいい子に育ったなぁ…フフフ…」

「あー…リョウちゃんがまた遠い所に行っちゃった…」

二人が漫才してるのを聞いている時ある事に気付いた。


洞窟なのに何故か視界に困らないんだ。

どうしてだろう?

確かに数メートル先は暗闇なんだけど、何かを中心に…

ヒナが光っている…?

「ごめん漫才中に悪いんだけど質問してもいいかな?」

「漫才なんてしてないよ!でどうしたの?」

「そーだそーだ漫才ではない!愛を育んでいるのダバアアアッ!」

見事なヒナのアッパーが入る。

リョウの事はスルーしてヒナに質問の内容を聞いてみる。

「ああ、洞窟の中なのに明るいなぁって思って、回りを見たらヒナコさんを中心に明るくなってる気がしたから」

「えーっとねなんでだっけ?」

「説明しよう!ヒナは属性魔力が火なんだ!そして今ヒナには魔力を発散してもらっている!火属性の魔力は当然の如く暖かくまたその魔力を通して鎧が燃えているのだよ!、だから明るいのだ!火というのは人間がもたらした英知!素晴しいね!」

「魔力ってそんな事も出来るんだ…すごいな…」

「すごいよねぇ、よくわかんないんだけどね?来る時は松明をリョウちゃんが持ってたんだけど、これで松明いらずだよねぇ」

ヒナの言葉を聴く限り無意識でやっているんだろう…他の属性でも魔力自体に別々の効果はあるんだろうか?

と考えていたのだけど、ある単語が引っかかった、鎧が燃えている…?ヒナの鎧は獣の皮で出来た革のレザーアーマーだ。それが燃えている…?

「え!?ヒナコさんの鎧って革だよね!?危ないんじゃ!?」

フフフとリョウは笑いながら説明する。

「実はねぇ、シュンと合流する前にキメラで作られた防具を見つけてね!それも火属性を纏う防具だったのだよ!

 とてもレアでねぇ、それも無料で手に入れたんだよ!いやぁ、魔力を持ったキメラなんてとっても珍しいし高価だからとっても得したねぇ

 それに革だけど、その辺の鎖帷子チェインメイルなんかより遥かに強度が上で頑丈だしね」

火属性のキメラまさか、あの時の……?まさかね。

「なるほど、それと他の属性にも影響はあるの?」

「ふふん、あるぞーすごいあるぞー普通は魔力を調べた後に説明があるはずだけど、まぁ闇属性だしな無かったんだろう。

 火なら燃えるため周りは明るくなるちなみに、雷と光も明るくしてくれるが、雷は目に悪いと思う電気だしな。

 それと水はなんと水の中に居ても呼吸が出来たりするのだ!水にぬれなかったりな。

 風はもっと融通が利く常に風を纏っているから熱い所とか風で涼める、砂嵐とかも被害を受けなかったりな。

 氷は身体から冷気を纏っているから熱い所でも涼しい。

 地は接地している時一定範囲の状況がわかるんだ。

 毒は毒を自然に中和してくれるらしい、まぁ周りに人が居るとその人の気分が悪くなるんだけどな、毒って怖いね。

 闇は暗い所とかでも目が利く、それと放出すれば相手の視界を奪う事もできるらしい、魔王が言ってた。

 光はまぁ、身体が光る、マジで光る、あれはビビる通り越して笑える、自分自身で発光ってプクク…。

 最後に時だけどこれはわからない、もしかしたら老化を防いだりしてな。

 ちなみにだ、魔力が強い者でもやり方さえわかればそれを防ぐ事も出来る、毒なんて防がないと基本害しかないしな。

 ま、こんなもんかね、一通り説明したけど何か質問ある?」

「いやぁ…そんな長い説明よく噛まずに説明できるなぁってビックリしてて頭に入らなかった…」

「まぁ…リョウちゃんは知識ぐらいしか取り柄ないからしょうがないね」

「ヒナなんか最近冷たいぞ…」

「そんな事ないよ~さぁ、長い話はこの辺にしてさっさと抜けちゃおう!何かキメラが多いし、って噂をしたら来たよ!」

その合図に奥から三匹ものキメラが飛び出して来た。

キメラの姿形は全てバラバラだった。

当然か、この世界ではキメラは普段はありえない格好した姿をした化け物の事だ。

「な!?三匹…おかしいぞ!キメラは個体で姿は明らかに違うんだ!それで群れるというのも聞いた事がない!」

確かに、今まで出会ったキメラは皆一匹一匹だった、戦ってる間に別のキメラが着たが襲い掛かって来なかったし。

三匹のうちニ匹はリョウに向かって突進してくる。

「リョウちゃんは下がってて!私がやる!」

「おう、ヒナ戦闘は全て任せた!」

そう言う前から洞窟の影に隠れていたリョウ。

なんというか……うん…

「イイイイイイイヤアアアアアアア!!」

叫びながら、刃先が蛇の用に歪曲した矛<蛇矛じゃぼこ>を振り回し最初に突っ込んできたキメラの胴体を薙ぎ真っ二つにする。

その勢いのまま半回転した直後、刃がついた逆の部分を襲い掛かってきていたもう一匹を突いてふっとばす。

あの身体の何処にあの力があるのだろうと疑問に思ったが、こちらにも一匹着ていた。

コチらに来たキメラは他の2匹よりも一回り大きかった、そして、だが、何かするわけでもなくただ、俺に視線を向けているだけだった。

なんだ?このキメラは他のと何か雰囲気が違う…?

そう、確かにキメラだ、猿の頭、虎の身体、尾には蛇が、何か…何処かで見たような既視感に…考えていると。

「テイヤアアアアア!」

ヒナの叫び声と共にもう一体のキメラが突かれ絶命した所だった。

「あとその一匹だけだね!」

ヒナがそう言い突っ込もうとした瞬間、最後の一匹は後ろに引き返して行った。

「え…?キメラが逃げた…?」

「あれれ~?あんなキメラ初めて見たよ!なんだろうね~?」

「ふむふむ、何故か複数体で移動していたキメラ、そして敵を目の前にして大人しく下がる…怪しい…あのキメラ調べたい!」

いつのまにか俺達の横に来ていたリョウが叫ぶ。

「追うぞ!あのキメラを!」

そう言い、誰よりも早く駆け出す。

「あ!リョウちゃん危ないよ!離れすぎると暗くなるよー!」

ヒナも叫びながら後を追う、俺も追いかけないとな。




だが、その後はあのキメラに会うことも他のキメラに遭遇する事もなく洞窟を抜けた。

洞窟を抜けた時右手には川がそこ以外には森だけが広がっていた。

そう…獣道さえ存在しない森が。

「あれー?あの逃げたキメラの後は何も会わなかったねぇ、何でだろう?」

「そうだな…まさかキメラのリーダーだったりしてな、なんてなそんなわけないよな」

リョウが笑いながら言うが俺は何か引っかかっていた。

「うーん…なんかあのキメラって俺達の世界で見た事ある気がするんだけど…どこでだろう…」

「へぇ、シュンあれを見た事あるのか」

独り言を呟いてたみたいでリョウ達にも聞こえていたみたいだ。

「シュンちゃん元の世界であんなの見た事あるの!?すごいねぇ」

「いや…ヒナ、すごいというかその反応はおかしい」

「誰が変人かああああ!殴るよ!」

「フグッ!……だから殴ってるって…そうじゃなくてだな、シュンが元の世界で見た事があるなら俺達も見た事があるのかもしれない、そんな気がするんだ」

そう言ってリョウは考えに耽りながら歩いていく。

「猿の頭…虎の身体…尾は蛇…キメラじゃなく別の何か…?」

「まぁ、そんな気がするだけだからさ気のせいかもしれないし。…所でここはもう魔族国なのか?それと道がないんだけど…」

「…妖怪…?…ん?ああ、ここはアグニス国の最南端ラウルフ族、コボルト族の集落が近くにあるからそこで今日は休もう、道はあれだ…まぁなんとかなる川がそこにあるからそこの脇を歩けば着くからな」

ラウルフ族?コボルトとかはよくファンタジーで聞く単語だけどラウルフってなんだろうか?

「リョウ、ラウルフ族ってどうゆう種族なんだ?コボルトは人間みたいな格好した犬の半人半妖みたいなものだろう?」

「んーまぁ、ラウルフ族の仲間が居るんだがそいつ曰く。『ラウルフというのは気高く強く賢い誇りある種族でゴザル、だがコボルトはそれがない、臆病で力も弱く知能が低い。差別になってしまうが似て非なる種族と言われているでゴザル…が!それがしはコボルトを同じ血を引いた同種だと思っているのでゴザル』だそうだ」

ラウルフはコボルトより強く進化した種族と考えればいいのかな?

というかなんでリョウはゴザル口調に…。

「ありがとう、早く会ってみたいな」

「そうか、シュンお前ってやっぱり珍しいな、俺なんて最初腰抜かしたもんなのに」

「ヒナはラウルフ族もコボルト族も可愛いと思うよ!モフモフしてるし!女の子のラウルフは花の香りがしていい香りなんだよ!コボルト族だって家族のタメに戦う勇敢な戦士なんだよ!」

ヒナがそう言うんだ嘘じゃないんだろう。

ただ、姿形は似ていると言ってもやはり魔族と言われる存在だ意思疎通が出来て、リョウ達の仲間…失礼の無いように振舞うようにしないとな…

「まぁ、近いと言ってもここから後一刻程だそれなりに歩くけどシュンは体力大丈夫か?」

そういえば洞窟内ではキメラと戦ったし、洞窟の入り口に入ったのがリョウ達と合流した翌日、朝から入って今はもう太陽が傾き掛けてる時間だ、だけど不思議と疲れていない。

これも能力のおかげなんだろうか?

「ああ、不思議と疲れてないヒナコさんは大丈夫かい?」

「んーヒナは少し疲れたけど大丈夫だよ!ラウルフの村にはササちゃんとココスちゃんが待ってるんだよ!」

「まぁ…予定より遥かに遅れてるから怒ってるだろうなぁ…特にココスが…噛まれそうだ…」

「そんな事はないと思うけどなぁ~ココスちゃんは可愛いしモフモフしてるし良い臭いがするし!」

「ヒナはいつもそればっかりだな…はぁ…」

そして、またリョウとヒナの漫才が始まる…

見てて面白いんだけど、俺だけ蚊帳の外なのが少し寂しい気もするけれど入りたいとは思わない。

なんと言ったってヒナの肉体言語がすごく痛そうだ…




それから2時間程歩いていると辺りは夜となっていた。

「リョウ…まだ着かないの?」

「もう少し…もう少しだから…」

「リョウちゃん…迷ってないよね…?」

ギクっと言う音が聞こえた気がした。

「リョウちゃん…?今ギクって聞こえた気がしたんだけど、気のせいだよね?ね?」

「ああああ!その通り気のせいさ!大丈夫だ任せろ!兵は詭道きどうなりと言うだろう!」

「リョウちゃんそれ意味違う…」

次はウグって聞こえた気がした。

「リョウちゃん?殴らないし怒らないから正直に言ってみようね?」

「……迷いました…」

「バカアアアアアアアアアア!!」

ヒナの見事なミドルキックが決まった瞬間だった…それは見事にリョウの脇腹へ吸い込まれてリョウは放物線を描いて川へ落ちた。

「ハグッフッ」




まぁ…道はわからない、現在位置もわからない…どうしたもんかなぁ…と悩んでいると。

「ああ!リョウちゃんが流されてる!追いかけないと!」

流される原因を作った本人が駆け出した。

「あ、ヒナコさん!」

俺も追いかける事にした、孤立なんてしたら飢え死んだりしそうだ…

流れはそんな速いわけじゃないみたいで緩やかにリョウだった物体は流されていっていたんだけど。

突然何かに引っかかった様にリョウの身体が止まった。


「む?なんでゴザルかこれは…」

対岸側を見てみると、そこには…胡座をかいた体毛が真っ白な犬が居た。って今ゴザルって言った?

「って!我が主!何故こんな川に流されて!…ッハ…も、もしや何かを悟ったのでゴザルか!?これは新しい策か何かが…」

なんか、呟いてるがうまく聞こえない様な…というかゴザルって…

「あーーー!ササちゃんだ!おーい!おーい!サーサーちゃーん!」

「む、この声は…ヒナコ殿でゴザルか!…その御仁は…?」

どうやらあの白い犬みたいな人間?みたいな犬?がササと言う人?らしい。

「ヒナコさん、あの人…?がササさん?」

「そうだよ!あの子がササちゃんだよ!ラウルフ族のササちゃんだよ!そしてこの人は私達の新しい仲間のシュンちゃんだよ!」

ササの顔をよく見てみる、鋭い目付きや滑らかな顔立ち、犬というより狼といった印象が立つ。

そして、何よりも目を奪われたのがその綺麗な体毛だ。

たてがみは真っ白で月の明りを反射して輝いていて、全体に白と黒の模様がとても綺麗でつい見惚れてしまうほどだった。

「な、なんでゴザルかシュン?殿…私の顔に何かついているでゴザルか?」

どうやら長い間見ていたせいで不審に思ったようだった。

「あっと…すいません、つい綺麗で見惚れてしまいました」

「ハハハそうでゴザったか、某はササと言う者でゴザル、これからよろしくでゴザルよシュン殿」

そう言うと礼儀正しく深いお辞儀をするササ。

「あ、はいよろしくお願いします、ササさん」

こちらもなるべく失礼の無いように挨拶をした。

いままでここまで礼儀正しい人はいなかったからなんか以外だった。

「それにしても…まったく心配したでゴザルよ二人とも『新しい勇者を見てくる、7日ほどで戻る』って言っておきながら既に70日は経っているでゴザルよ」

「ごめんねぇ、色々と問題が発生したんだよー、許してねササちゃん?」

「そ、某は怒ってないからいいでゴザル、無事でよかったでゴザル」

なんかこの二人だと話が進まなそうだったので俺から説明する事にした。

「あー…そのですね、実はリョウの案内でラウルフの集落に行こうという話しだったのですが…お恥ずかしながら道に迷ってしまって…案内してもらえませんか?」

そう言うとササは。

「あいや!かしこまった!さぁ着いて来るでゴザル」

そう言ってササの後を着いていく事にした。

…ついでにリョウはササが持っていた釣竿に引っかかったまま担がれていた。

11話目了です。

12話目も同時に更新するので12話目のあとがきで一緒に書こうと思います。

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