9話目─宴1─
番外編に続いて連続投稿となります9話目です。
俺が山賊団に入って早2ヶ月が立った。
近くの村では魔族が出たとか話が出ていた。
俺が農作業やったりしたとか。
また、国中で俺が賞金首となっていた。
スー曰く山賊団なんて皆賞金首だから気にするなとのこと。
スー率いる山賊団は戦える人数が60人程、非戦闘員の子供や女性等が80人。
計140人程の大所帯だった。
スーの率いるだけで140人なんだ…
俺の初陣の時あの時は50人程と戦った…けどその後ろには…?
「なぁ、団長、賊って討伐隊にやられた後、非戦闘員の人達とかはどうなるんだ?」
初陣の時はただ自分の命を仲間を死なせたくないその気持ちだけで戦っていた。
けど…今は回りを見なければいけない環境に身をおいているんだ…
「なんだいいきなり、そうさね、非戦闘員は捕まって奴隷にされて売られたりするね」
奴隷…じゃあ俺達が戦った時、その裏では…だから、ギーレさんは先に帰ってたのか…
あの馬車が消えてたのも…移送用だったのか…
離れて気付くあの国の情報
シャルが死んだのはなんの為だったんだろう…
俺が殺した人達は…
「まぁ、シュンさ過ぎた事だ気にするなとは言わない。
けど気にしすぎるな、騙されたのが悪いとは言わないよ。
けどね、情報が無い時に与えられる情報は嫌でも信じちゃうもんだ。
いいかい?今は山賊団の一人だ、過去に囚われず私達が生きるために生な」
スーは俺が考えてる事がわかっているかのように、俺に向けて笑いかけてくれた。
「うん、そうだね、俺は死にたくないし、俺の仲間にも死んでほしくない。
そのためなら…なんでもしてやるさ」
夜…
「団長!ノワル国とヒッガーザ国のやつらが討伐隊を組んでこっちに向かってるらしい!」
「なんだって!シュンが狙いか!?」
「たぶん先日の魔族だと思う…けど、ノワル国で100、ヒッガーザから100の2個中隊だから、規模的に大きすぎる」
「とりあえず、同行を探ろう!斥侯を2国に飛ばして!10人体制で、早くおし!」
「わかった!」
そう言うとガクは一目散に部屋を出て行った。
国が攻めてくる…俺を狙いに…?
「おかしいね…2個中隊なんて結構な数だ…たかが山賊1個に当てる数じゃないだろう…」
「スー…団長…ごめん、たぶん俺の居場所がバレタんだと思う…」
「シュンの…?なんでまた、それにシュンだから2個中隊?どうゆうことだい」
「ああ、俺がこの団に入るとき言ったと思うんだ、能力の事を」
「いってたね、それでその能力と関係してるのかい?」
「ああ、俺の能力、自動防御…と言われる能力なんだけど」
「自動防御…察するに自分の身を守る力だね?」
「ああ、その通り…けどこの能力は物理だけじゃなく、魔法や毒にも反応するんだ」
「魔法や毒にも?まさか…魔法の攻撃を無効化して毒さえ未然に防ぐってのかい?」
「そうです、俺が国を出る前に毒による暗殺が起きましたが、グラスに毒を入れられた瞬間に無意識で投げ捨てましたから」
「なんだいそれは…ただでさえあんたはウチの山賊団で圧倒的な武力だ、それにそんな能力があれば…」
「ええ、ほぼ無敵でしょうね、たぶん内乱でも起こされると思ったのでしょう」
自分で自分の考えを伝えるが、自分で考えただけでも恐ろしいと思うこの能力が…
「まぁ、何故来るかという理由は推測ではあるけれどわかったよ。
じゃあどうするよ?逃げるのかい?何処へ?」
「魔族国は無理なんですか?」
「馬鹿言うんじゃないよ、魔族は人間の敵だ、そこに逃げるなら死んだ方がマシだよ」
「そう…ですか、魔族には人間の…勇者が居るのでもしやと思ったのですが…」
「そうなのかい?それは初耳だ、だけど私はね魔族を怨むよ。
たぶん、人間の大半は魔族を怨んでいるだから今までずっと戦争が続いているんだよ。
知ってるかい?魔族との戦争はね80年近く続いてるんだ、それだけ続いている。
だから、勇者なんて異世界の力が必要なんだよ、人間は弱い…だから誰かの力を頼るんだ…」
そう言うとスーは黙ってしまった。
「わかった、逃げる場所がないなら戦いましょう…俺準備してきます」
「任せたよ、私は非戦闘員を安全な場所に連れて行くから」
そう言ってスーと別れて俺は自分の武器と俺が指揮する10人の部隊の元へ向かった。
「作業中に手を止めてしまってすいません」
「いいってよシュン、気にするな何か緊急ごとだろう?」
そう言う一人の部下が言うと同時に他の人達も頷きあっている。
「ええ、今さっきノワル国とヒッガーザ国が1中隊ずつ200人規模の部隊を率いてコチラに向かっているらしいです。
逃げ場がないので、辛いですが徹底抗戦となります…各自戦闘の準備と家族への言葉を忘れずにお願いします…」
そう言うと戸惑いながらも皆は納得してくれた。
「では、皆作業に戻ってください」
「「「「了解!」」」」
そう言って散っていった、俺は前から考えてた武器を作る事にした。
この国では弓はあるけれど、│弩つまりクロスボウみたいな形状の武器はない。
はっきり言って弓を扱うのはかなり難しく、弩に比べて連射はできるけれど、相応の訓練が必要だった。
現にココには弓を使える人は居ない、狩りは槍を使うし。
なので比較的楽に扱える弩を作ろうと思って、今作っている。
形等はなんとなくだけれど、事前に発射準備さえしていれば意表はつけると思う。
衝突する数十歩前で発射して混乱した所を狙う、今回の作戦みたいなものだ。
サイズは50cm程の小型の弩を60個ほど作っておき、矢も一人1本また、後衛にはもう数本持たせておくために矢を作っている。
弩の矢は弓の様に軽いと風で逸れてしまうため、大きく太めで尚且つ矢羽も通常より小さくしている。
「よし…とりあえず、人数分よりは作れたかな…?」
「シュンお疲れ、それが新しい武器かい?」
肩を解しているとスーが来ていたみたいだ。
「スーか?ああ、弩…まぁ、クロスボウと言っておこうか。
まぁ、簡単に言ってしまえば誰にでも使える矢だね。
木の板の窪みに矢を置いて弓の部分に引っ掛けて引っ張るあとはこの引鉄の部分を引けば矢が飛ぶ」
「へぇ…すごいねぇ、そんな物まで作れちゃうとは勇者ってのは恐ろしいもんだ」
「いや、この武器には致命的な欠点があるんだ」
「そうなのかい?かなり強力に見えるけどね」
「この武器、クロスボウは連射ができない、たぶん俺でも60秒で3発撃てればいい方じゃないかな」
「それは…役に立たないんじゃないかい?」
「いや、最初の一発撃てればいいんだ、兵士達も俺達がこんな武器もってるなんて知らないだろうしね」
「なるほどね、200人来たとして一回で60人ほどは倒せるって事かい?」
「ああ、それと後衛に居る人達にはもう数発もってもらうからうまくいけば弩だけで半数は減らせるかもしれない」
「ほう…それと道程にある罠で数を減らすと…いいね、その作戦」
「ありがとう、俺も皆を守りたいからね」
「うんうん、その粋さね、さて明日にはガク達斥侯部隊が戻るはずだよ、今日はゆっくり休みな」
そう言うと、スーも寝るため部屋に戻っていった。
「皆を守ってやる、俺がなんとしても…」
翌日ガクが青ざめた表情で帰ってきた。
「団長!逃げよう!あいつらに勝てっこない!」
「いきなりなんだいガク、男が情けないよ」
「無理なんだよ!、敵の指揮官が弓兵将軍のグリムだ!」
「それと歩兵部隊のギーレもいやがった!」
ギーレさんが…、グリムさんも…
グリムさんについてはよくはわからないけれど、あの人の弓の使いはすごかったな…
何より弓の形が異常だった。
形はY字の様になっていて、同時に2本の矢を撃ち、尚且つ100発100中の腕前。
クロスボウを作ったとはいえかなり分が悪いだろう。
「団長、どうする…今ならまだ逃げられるかもしれない」
「逃げるたって逃げる場所なんてないさ、徹底抗戦それしかないさね」
「くそ!なんで、ここがバレたんだ…何年もこの場所はばれてなかったのに…」
ガクが苛立ちながらそう言うと。
「ガク、それは違うよ、元々わかってたんだよ。
けどね、今はシュンがいる、それだけシュンは危険視されてるって事さ」
スーがそう言い視線が俺に集まる。
「それなら…俺が出てけば…」
「馬鹿!短いとはいえ、アンタはもうアタイの家族だ!そんな売る事なんてできるわけないさね!」
「スー…」
「ったく…団長が決めた事じゃしょうがねぇな。なるべく互角に戦えるように作戦を考えるよ」
「いいかい!敵は強い!けど、アタイらにも意地はある、危なかったら逃げてもいい!死ぬんじゃないよ!」
「「「「おお!!」」」」
3日後…
「団長!来やした!ヒッガーザ国100人ノワル国100人の2中隊規模です!」
「ご苦労さん!さぁ、山賊魂見せてやるよ!」
数は60対200はっきり言って絶望的な数だ、だがここに居る皆は勝つ気でいる、俺一人だけ弱気じゃダメだな。
「さぁ!守るよ!」
「「「「おお!!!!」」」」
言った瞬間…二人が倒れた頭に矢が刺さった状態で。
「え?」
「う、うわぁ!」
グリム将軍か?森の入り口から狙撃したって言うのか…?出鱈目じゃないか…
「慌てるじゃないよ!、敵はあの弓兵将軍グリムだ!これぐらい当たり前だ!
臆するんじゃない!森の中ならアタイらに有利だ!行くよ!」
「よし、敵軍も動き出したようだ、団長、シュンお願いします」
「ガク、任せてアンタはここの守りを頼んだよ!」
「家族の皆を頼む」
「ああ、任せてくれ」
そして、俺とスー率いる20人は山を降り森の中へ入っていった。
「じゃあ、ここは2手に分かれるよ、そっちの指揮はシュンに任せる」
「ああ、わかった…スー死ぬなよ…」
「ッフ、アタイが簡単に死ぬわけないだろう?安心おし」
お互いに頷きあい、二手に分かれた。
少し歩くと前方には見た事の無い紋章、たぶんヒッガーザ国のものだろう。
約10人ほどだ。
「よし!各自草陰に隠れて…合図したらクロスボウ斉射だ」
「「「了解」」」
はたしてこの世界では│弩は使えるのだろうか?
「いまだ!」
ドスッドスドスッ!
「グッ」
「ギャア」
思ったよりも弩の威力は凄まじかった。
│鎖帷子をいとも簡単に貫きヒッガーザ国の兵士達を貫く。
さすがに、全滅は行かないが…!
「よし!いまだ殲滅!」
「「「おおお!!」」」
弩を置いて各自の獲物を持って突撃する。
「家族は俺達が守る!」
「お前らなんかにやられてたまるかぁ!」
「オラアァァァァァ!」
元々、弩で半数…5人以上が死んでいたタメその後の殲滅はすぐだった。
よし、次に行こう…
弩の矢は予備として一人3本ほど持たせている、数が余りそろえる事ができなかったので死体からも何個か頂戴している。
「シュン、居たぜ」
一人が指差すと、20人ほどのヒッガーザ国の兵士が居る。
弩の斉射後に突撃ではたぶん危ない数だろう。
たぶん倒せると思うけどコッチにも被害は出ると思う…
「弩の斉射後、俺が突っ込むからその間に準備して、できたらもう一度撃ってくれ」
「な…それはシュンが危ない…いくら強いからと言って…」
抗議するが、俺には能力があるからな。
「大丈夫、俺を信じてくれ、俺もお前らを信じるから」
そう言うと、納得できていないようだが頷いてくれた。
「じゃあ、行くぞ3、2、1、いまだ!」
放たれる10本の矢。
倒れるのはコチラから見て最前衛に居た10人弱ほどか。
「各自準備を!」
そう言い残し弩を投げ捨てサーベルと盾を手に取る。
慌てふためく敵兵に突っ込み横薙ぎに斬りかかる。
首元を斬られ3人ほどが倒れる。
「敵だ!各自構えろ!」
指揮官らしき者が叫ぶが、無駄に目立ちすぎだ!
そのまま突っ込み後衛に居る叫ぶ者を頭から叩き斬る。
「た、隊長!?」
「死にたくねぇよ…」
背後から悲痛な叫びを聞こえ罪悪感に苛まれるが…手を止めるわけには行かない。
その時準備が出きたのか弩の射出する音が聞こえた。
「ぐわぁ!」
「ゴフッ…」
「な、なんだ、ゲホッ…」
1本が俺にも飛んできてたみたいだけど能力のおかげで叩き落した。
そしてその場に立っていたのは俺一人となっていた。
「よし、これでヒッガーザ兵士は30人程は倒しただろう、一度戻ろう」
「あいよ」
「了解」
各々が返事をして本拠地に戻る、本拠地は森を一望出来る為敵の情報等を知るためにも戻る必要があった。
戻ってみると既にスー達も戻っていた。
「お、シュン戻ったねどうだいそっちの状況は?アタイらはヒッガーザの奴らを20人ほど倒したよ」
「スーお疲れ、こっちは3小隊30人程倒せた」
そう言うとガクが。
「ふむ…ではこれで残るはヒッガーザの本陣に居る50人とどこかに消えたノワル国100人ですか…」
消えた?
「ガク、ノワル国の100人が消えたってどういう事だ!?」
「わからないんだ、森を入ったのは見たんだけどそれから一度も見える場所に出てこない、30人で森を見てるから発見できないなんておかしいのだけど…」
「魔法…?だけど俺は魔法に詳しくはない…なんだ…?」
「弓の次は魔法か…ノワル国は山賊相手に本気を出しすぎじゃないのか…?」
俺を狙ってなのか…?
俺とガクが悩んでいるとスーが情けないと言った表情で言った。
「悩んだってアタイらに出来る事なんて限られてんだよ!それなら、出来る事をやればいいさね。
アタイとシュンで行くよ、悪いけど今回は30人連れて行く、残りは警戒してておくれ」
「「「了解」」」
そしてスー率いる30人が山を降りる。
森の入り口程まで行くとヒッガーザ国の本陣が見えた。
「あれがヒッガーザの本陣のようだね、どう攻める?」
「誘きだして、出てきた所を弩で狙い撃とう」
「なるほど、で誰が囮になるんだい?」
「俺が行くよ、こうゆうのは俺が一番適役だ」
「シュン!?ちょっと…」
スーの言葉を無視して森から本陣へ駆け出す。
近くに居た兵士を一人斬り
「敵襲!敵襲だあああ!」
「敵は一人だ逃がすなぁ!」
100人も入れないぐらいの陣だすぐに人が集まる。
「貴様、山賊か…一人で何が出来る!」
指揮官らしき男が剣を抜いて部下達に指揮する。
「行けぇ!たかが一人だ殺せえええ!」
その言葉を合図に向かってくる兵士達、だけど俺もその言葉を合図にスー達の居る森の入り口へ駆け出す。
「逃がすな!追え追えええ!!」
見事に連れた敵兵士を尻目に全速力で走る、元々勇者の能力のおかげで足の速さ等もかなり早くなっているから逃げるのは楽だった。
そして、スー達の居るところまで逃げ後ろを向く。
「ハァ…ハァ…諦め…たか…」
豪く疲れてるようだ、罠だとも気付かずに指揮官は言う。
「ふん、逃げ切れると思っていただろうが残念だったな、この作戦が終れば私も晴れて百人長だ!私の出世の為死ねぇ!」
「ふぅ…じゃあ俺からも一言、俺達が生き残る為に死んでくれ」
そう言って俺は手を上げる。
「何?ま、まさか!」
「悪いが罠だ撃て!」
手を下ろすと同時に森の木々から矢が飛んでいく。
脳天を貫かれる者
目を貫かれる者
弩の斉射が終ると同時に上からスー達が飛び降り生き残っている兵士達にとどめを刺していく。
俺が合図をしてから数秒後には50人近い敵の死体が転がっていた。
「そ、そんな馬鹿な事があるか!?…貴様が貴様がああああ!」
混乱した状態の指揮官が斬りかかって来るが、切り払い、空いた胸にサーベルを突き刺す。
呆気ない幕切れだった。
「さて、シュン、皆お疲れ、とりあえずノワルの奴らが何処に居るかわからない、戻るよ!」
「「「「了解」」」」
9話目了です。
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