魔法の遺産~運命の紡ぎ手~ 第二話 バイトの姫君と記憶喪失の王子
時間稼ぎなので、忙しいです。朗読にDJやら野球、執筆する時間が減ってます。魚好きが高じて婚約破棄されました。を3話訂正が待っているので明日こそ。
明日は野球がありませんからね。ってホントかしら。
まずずいっとどうぞ。
「今日から1週間お世話になるステラです。よろしくお願いします」
「腰掛けは困るんだけどね」
「ミーア!」
年長の司書の言葉に責任者のマルコムが叱責する。ミーアはふん、とそっぽを向く。
「ステラ。すまない。君の事情はわかってるんだが、ここは経験が物を言うからね」
「いいんです。急に押しかけてきた私が悪いんです。仕事の段取りをどなたかに教えて頂けませんか?」
ステラはごく普通の少女の着る服を着てエプロンを掛けていた。めざとい者ならその服の生地が街で売っているようなものではないとすぐわかるが、皆、新参者の雇い入れに不満を隠せない。だが、ステラにとってもこれは一種の賭けだった。本が好きなだけでは通じない世界か見てみたかったのだ。本当の意味で本と触れ合いたかった。
雑用ばかりを言い渡されるが、ステラは満面の笑みで引き受けていた。
ステラが文句も言わず、雑用をしているのを見て幾人かの司書達はステラに話かけるようになっていた。
「ステラ。重たくて悪いんだけど、これを閉架図書室に入れてきてくれない?」
台車には山のように本が積み重なっていた。それでもステラは愛おしげに本達を見ると二つ返事で引き受ける。今はミーアだけがステラを邪魔者扱いしていた。
そんな国立図書館にライクスがやって来た。ライクスはあの老婆の世話で回復していた。軽度の火傷は負っていたものの、体は五体満足だった。体だけは。
そう。体だけは。
ライクスは記憶を失っていた。剣士だとはつけているものや剣を見て想像できたが、どこの国の人間かも忘れてしまった。老婆はそんなライクスにレイスと名付け世話をした。老婆がいた山岳地帯はシャドウバレーと呼ばれる地帯だった。体力が回復するとライクスは自分の記憶を求めて旅を始めた。いくつもの国を旅したが、失われた記憶に繋がるものはなかった。自分の剣にはノクトリア帝国の紋章が着いていたが、まさか王子とはつゆほどにも思っていなかった。そしてシルヴァリア王国にまでたどり着いた。ここの図書館はアカデミーと呼ばれるほど、大いなる知識を埋蔵していると言われていた。ライクスはこの図書館に記憶の欠片を求めてやって来た。
ステラの司書体験がもうあと一日といった日にライクスは図書館の使用手続きをしていた。本を調べてノクトリア帝国の資料を調べようとすると禁帯出本で閉架図書にあると言われた。本来なら手続きを取って司書が持ってくるのだが、あいにくどの司書も手が塞がっていてステラに仕事が回ってきた。ちょうど、閉架図書の部屋に本を戻しに行くところだったステラはめざとく、ライクスの剣の紋章に気づいて一緒に閉架図書の部屋に行くことにした。
あれは、ノクトリア帝国の王族にだけ許された紋章。こんな国に何の用なのかしら。
ステラは真意を誰にも気づかれない場所で確かめようとした。人目をかいくぐって、一緒に閉架図書に入る。
「いいんですか? この部屋は司書しか入れないのでは……」
「それより、あなた。ノクトリア帝国の王族しか持てない剣を持ってるわよ。誰なの?」
「王族?」
「って。あなた馬鹿なの? その剣はお飾りなの? まぁ。良いわ。明日で仕事は終わるし、ウチに来て。母から話してもらうわ。王子が一人死んだと話が入ってきてるから」
そう言って本を並べ始める。ライクスも見よう見まねで本を入れ出す。
一冊の本がぐっと押し込まれた。突然本棚が両開きになり部屋が現れた。
「なに。この石版。こんなもの、どこから。古代語ね。魔法の秘典……?」
「君はこの石版が読めるのか?」
ライクスにはミミズがのたうち待っているとしか思えない。
「一応はね……」
そこへマルコムの声がした。
「やっぱり見つけてしまったんだね。ステラが来ることになってもしや、と思ったんだ。この石版を見つけ残りの石版を探す旅が始まるんだ」
「マルコム!」
ステラがびっくりして声を上げる。その声が甲高く聞こえてライクスは耳を押さえる。
「声がうるさい!」
「失礼ね。家に帰してあげる人に向かって言う言葉?」
痴話げんかが勃発しかけてマルコムが止める。
「喧嘩している場合じゃないよ。君たち。この石版の半分を集める旅に出ないと行けないんだよ」
マルコムが念を押す。
「旅?」
我が身に降りかかった災難にまだ気づかない二人だった。
一瞬、老婆の記述があるか不安になったらちょいででいました。
1話はプロローグみたいなものです。あらすじを作品紹介にいれたらいいんですが、ころっと忘れてた話なので、あえて除外。どう転ぶかわかりません。困った。
魚好きが高じて婚約破棄されました。をいくつも書いておかないと。
ためてる状態なのでお待ちください。ここまで読んでくださってありがとうございました。