第9話:戻りつつある日常
獣人国での事件から2日後のことである。
レイナたちは獣人国を出発し、機械国に戻ってきた。
「こうみると、うちの国ってかなり小さいよね。」
「まだまだ少数しかいませんものね。」
「約二軒家があるくらいで、残りは工場地帯ですから工場の規模だけでいえば最大級なんですけどね。」
「人口の問題だよ、人口の。流石に少ないと思うんだよね。」
「最近、ご主人が新しい開発に着手し始めたらしいですけど、あの人の開発ってもはや国家プロジェクト並みの予算消えますからね。」
「新しい子が増えるってことかな?」
「それならば、レイナ様に新しいお友達ができますね。」
そんなことを話しながら家に着いた。
しかしそこに人影はなく、静けさが広がっていた。
「ただいま!」
「あれ?おかしいですね。いつもならご主人が気付いて玄関にいるはずなんですけど…。」
「それに人の気配がないですね。あら?」
ナズナは玄関収納の上に置かれた、置手紙が目に入った。
ナズナが広げてしばらく目を通すと、難しい顔をしながらレイナたちに事の次第を告げた。
「どうやら、御主人様たちは神国のアリウム家に里帰り出産に行ったみたいです。」
「里帰り出産?」
「奥方様のご実家に帰省されて、奥方様のご家族が出産から育児まで行うらしいですよ。御主人様は、その付き添いでしばらくアリウム家にお世話になるそうです。」
「つまり、しばらく帰ってこないってこと?」
「そういうことになりますね。」
「そんな~。」
ナズナは苦笑いを浮かべながら、残念そうな顔をするレイナをなぐさめた。
レイナは残念な気持ちをぬぐえないまま、溜まっていた書類業務と部屋の片づけを行っていた。
すると、開いている執務室の扉がノックされた。
そこにいたのはナズナであった。
「レイナ様、ご来客です。どうなさいますか?」
「来客?今日は予定なかったよね?私は大丈夫だよ。」
「ではお通ししますね。」
ナズナが連れてきた人物それは、まさかの白であった。
「やあ、元気かな?レイナ。」
「白さん!?」
「いやー。仕事を爆速で終わらせて、遊びに来たよ。」
「白様?今後アポなし訪問はやめてください。御主人様に言いつけますよ?」
「ごめんごめん。次回からはアポ取るよ。今回は、商談に来たんだ。」
「商談ですか?」
「ああ。武器商人から機械国のナノ合金はかなり価値のあるものだと前から聞かされていたものでね。」
「確かにうちのナノ合金は、特殊素材としてそれなりの価値はありますが、今までは電子部品系統でしか採用されたことはないですよ?」
「私もそう思ってね。ナノ合金をポケットマネーで買って、成分分析してみたんだ。」
「あれを個人で買ったんですか!?(あれ、うん十万するほど高価なんだけど…?)」
「まあ、研究費よりポケットマネーのほうが自由が利くからね。そしたら、私でも作れない素材だったからびっくりってわけよ!」
「な、なるほど。それで正式に商談をしに来たというわけですね?」
「そーゆーこと。」
「でしたら、応接室でお待ちください。書類等を整えて向かいますね。」
「りょーかい。」
そういうと、白はナズナに連れられて応接室に連れていかれた。
レイナは商談に必要なものが一式入っているジュラルミンケースを持ち、応接室へと向かった。
「では、白さん。今回、ナノ合金を所望とのことですが、どのくらいの量をご希望でしょうか。」
「とりあえず、研究用・実験用・個人用で合わせて300トンあればうれしいかな。」
「300トン、ですか!?」
「難しそう?」
レイナは、輸出量と生産量のデータを見比べながら計算をする。
「いえ。有限資源なので月々の生産を200トンまでとしているのですよ。他国との貿易関係で約100トン契約が進んでいるので、月に収められるのは100トンまでとなりそうです。」
「なるほど。ならば、研究用と実験用で合わせて100トン契約。余りの在庫があれば個人用として買い取るというのはどうかな?」
「それであれば、輸出自体は問題ないですが大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。研究者たちには、こちらから事情を説明しておくわ。そのくらいの変更なら理解してもらえると思うしね。」
「承知しました。では、少しお待ちください。」
レイナは少し計算をし、一枚の見積書を出した。
「こちらが今回の見積書と契約書です。よくお読みください。」
「お!早いね。見せてもらうよ。」
白は契約書を隅々まで読み、見積書の金額を確認した。
「うん。大丈夫だね。契約するわ。」
「ありがとうございます。では、来週から納品させていただきます。」
「思ったより、仕事早いわね。これも師匠からの請け負い?」
「お父さんから、丁寧かつ迅速な仕事の仕方は教わりましたからね。」
「やっぱりねぇ。種族王と経営両立できている者は少ないから自慢できるわよ。」
「いやー。照れますね。」
「話は変わるけど、この前話した付き人の候補は見つかったかい?」
「それが全然見つからなくて…。」
「だと思ったわ。そんなあなたに朗報でーす。」
「朗報?(白さんって、ちょっとエンターテイナー気質あるよね。)」
「天使族の種族王に相談をしてみたら、一人候補を出してくれたのよ。」
「じゃあ、ナターシャさんみたいな子が来るんですか?」
「ちょっと違うと思うわ。ナターシャさんは、天使族の中でも特別の存在だからね。」
その言葉に少し疑問を感じたが、レイナはその子の特徴を聞いた。
「その子って、どんな子なんですか?」
「努力家で全ての物事に全力を注ぐかなりいい子なんだけど、かなりのドジっ子でやることなすことすべて失敗しちゃうらしいのよ。」
「おおぅ……」
「根はかなりいい子だから、一回だけでも会ってみない?」
「わかりました。いいですよ。どんな子か気になりますし。」
「よかったわ。じゃあすぐに連絡を入れておくから、明日にはすぐ来ると思うわ。ということでよろしく~。」
そんなこんなで、レイナの付き人候補の一人が見つかった。
だが、レイナは知らなかった。その子はそれなりにトラブルメーカであることを…。




