第8話:入院
レイナたちのピンチに現れたのは獣人族種族王の鈴奈 白であった。
そのたたずまいは、見た目に反して神々しく威圧感を感じるほどだった。
「あなたが、師匠の娘さんね。噂は師匠から聞いてるわ。」
「は、初めまして。」
「もう大丈夫よ。既に獣人国軍がこのアジトを包囲している。じきに、制圧も完了すると思うわ。」
その言葉に安心したのか、レイナは体から力が抜け意識を手放してしまった。
すぐさま白が倒れる直前のレイナを抱きかかえる。
「(この子、こうなるまで集中していたのね。流石は、師匠の娘さんね。)」
すると、獣人国の国兵たちが数名地下牢に入ってきた。
「白様、周辺の構成員の捕縛、完了しました。」
「ご苦労様。次に地下牢にいる子供たちの保護をしなさい。ついでに、そこで倒れているその男は捕縛しておきなさい。」
「承知しました。」
白は淡々と的確な指示を行い、子供たちを保護した。
レイナたちは王直属の病院まで運ばれ、その日のうちに治療された。
人身売買組織は、その日の夜に壊滅し、構成員は全員捕縛された。
「ナズナちゃーん、大丈夫―?」
「一応大丈夫です。」
ナターシャは頭部への損傷と筋弛緩剤入りの銃弾による怪我を負い、ナズナも多数の切り傷があったものの、2人とも命に別状はなく、一日入院するだけで済んだ。
レイナは怪我こそしなかったものの、念のための検査入院をすることとなった。
次の日の朝、白が3人のいる病室を訪れた。
病室では、レイナとナターシャが寝ており、ナズナのみが起きていた。
「やあ、元気かな?」
「白様、お久しぶりです。昨日は、ありがとうございました。」
「ナズナさんお久しぶりね。見た感じ大丈夫そうね。2人は爆睡してるけど。」
「昨夜は、相当暴れたようですし、疲れているんでしょうね。」
「ハハ。まさか、客人に先を越されるとは思ってもみなかったけどね。」
「ということは、獣人国もこの件を追っていたのですか?」
「そういうこと。師匠の関係者だから今回は不問にするけど、今後は私たちに相談してから動いてね。」
「申し訳ないです…。」
「私は師匠の娘さんとお話しがしたくて来たけど、また今度にするわ。ナズナさんもしっかりと休養なさい。」
そういうと、白はお見舞いの品のみを置いていき静かにその場を去った。
次の日。
レイナは、白の執務室にひとり呼び出され、かなり緊張していた。
そんなレイナの緊張を気にしないように、白は話を始めた。
「さてと、あなたが前年に機械族の種族王に正式に就任したレイナさんね。」
「は、はい。そうです。」
「緊張しなくてもいいわ。例外を除いて私たちしか入れないように創り出した世界だからね。」
「『創り出した世界』?」
「私の能力の1つ『創成創造』で空間を新しく作成したということよ。」
「それって、白さんの“固有能力”ですか?」
「そうよ。あなたにもあるはずだけど…。その様子を見るに知らないようね。」
そういうと、白は水晶型の謎の道具を取り出した。
「これは?」
「水晶型ステータス表示装置。これを使えば、あなたの種族と能力を表示してくれるわ。試しに私がやってみましょう。」
白が水晶に手をかざすと、水晶が徐々に光り出し、内部に文字が浮かんできた。
そこには、【種族:獣人族 / 神族 能力:創成創造 / 壊滅破壊】と映し出されていた。
「種族が獣人族と神族?」
「師匠はこの世界の仕組みについてはまだ教えてないようね。これは、私が混血ということを表しているのよ。」
「ということは、白さんには神族の血が流れているってことですね。」
「そういうことよ。特段、この世界において混血は珍しくないわ。最近は他種族での婚約が寛容になってきているからね。ちなみに、混血は体の一部にその種族の特徴が現れるわ。」
「白さんもあるんですか?」
「そうね。私の場合は九尾の尻尾がその特徴に当てはまるわね。」
レイナにとってこれらの情報は新鮮で興味深いものであった。
「さぁ、同じように手をかざしてみなさい。」
「こんな感じですか?」
レイナが水晶に手をかざすと、再度水晶が徐々に光り出し、内部に文字が浮かんできた。
そこには、【種族:機械族 能力:身体強化】と映し出されていた。
「(へぇ…。身体強化とは、これまた一般的な能力が出てきたわね。)」
「これが、私の”固有能力”…。これってどんな能力ですか?」
「簡単に言うと、自身の身体能力を向上させることができる能力ね。あなた、身体強化をイメージしながら戦ったことはある?」
「言われてみれば、ないかもです。ただ素の力で、戦っていただけですね。」
その言葉を聞いた白の目が点になっていた。
「(身体強化無しで、あれほどの破壊力?これは、もしかしたら化けるかもしれないわね。師匠ったら、あえてこの能力をこの子に隠していたわね。)」
「あの~。どうされました?」
「いやなんでもないわ。それにしても、身体強化無しでどうやってあの鉄の扉を破壊したのかしら?私が突入したときには、もはや鉄の扉とは思えない塊になっていたわよ。」
「あー。それはこれを使ったんです。」
そういうと、レイナはポケットから「黒錠」が収納されている黒色の鍵を取り出した。
それを見た白の目がまた点になった。
「そ、それどうしたの?」
「お父さんからもらったんです。」
レイナはものすごくニコニコしながら嬉しそうに答えた。
「そ、それは良かったわね。(師匠―!なんてもの娘さんに渡してるんですか!これだけで国家転覆が余裕で出来るほどの超兵器を簡単に手渡すなんて…。)」
「でも、まだ完璧に制御できないんですよね…。お父さんは、軽々と振っていたんですけど、私は振りかぶって振り下ろすだけで限界なんですよね…。」
「十分すごいと思うわよ?(だってそれ、重さ1000トンよ。当たり前よね?いや、師匠がおかしいだけか…。)」
「もしかして、お父さんも身体強化を使っていたってことかな?」
「それは違うわ。あの人は基本的に能力を使用しないから、素の腕力で振っていたと思うわ。」
「え?」
「そういう反応になるわよね…。」
大分話が弾んできた頃、白がレイナにとある質問を投げかけた。
「そういえば、あなたって付き人、つまり秘書官的な人物はいないの?」
「正式にはいないですね。」
「あら。それは早い段階で決めておいた方がいいわね。」
「どういうことですか?」
「種族王には必ず2名以上の付き人をつけることが義務づけられているのよ。」
「義務…。種族王同士で決められたことなんですか?」
「半分正解よ。とりあえず、早いうちに付き人は決めておいた方がいいわよ。ちなみにだけど、ナズナさんとナターシャさんは師匠の付き人だから、別の人材を探さないといけないから注意してね。」
こうして、白とレイナの会談は終了した。
ナズナとナターシャの待つ宿に戻る際中、レイナは考えながら歩いていた。
「付き人か~。誰がいいんだろう…。」




